消費社会観測ゲーム『Black Cycle』Steamにて配信開始。立ち込める黒煙、大量消費社会に一石を投じる

個人開発者のKatsuya Abe氏は12月6日、『Black Cycle』を配信開始した。大量消費社会をテーマとする、三人称視点の3Dアドベンチャーゲームだ。

個人開発者のKatsuya Abe氏は12月6日、『Black Cycle』を配信開始した。対応プラットフォームはPC(Steam)で、日本語表示にも対応している。


『Black Cycle』は大量消費社会をテーマとする、三人称視点の3Dアドベンチャーゲームだ。プレイヤーはゲーム内の人々と会話しながら、上司の指示に従って消費者の需要に応えるモノを作っていく。そうして作り手の立場で、自分の作ったモノが社会に与える影響を見届けることになる。プレイ時間は10分程度を想定しているとのこと。

ゲームプレイとしては、広い部屋を舞台とする3D“ウォーキングシミュレーター”となっているそうだ。主人公は白い箱のようなモノを作り、部屋の中に再現された“社会”に流通させる。“社会”にはモノの流通サイクルが生まれ、変化がもたらされることに。そのうち需要に応えるために大量生産が開始され、“社会”には徐々にひずみが生じていくわけだ。



本作を手がけるのは個人開発者のKatsuya Abe氏。同氏のブログによると、現在ドイツの美術大学にて、修士課程でデザイン史を学んでいるという。本作を制作するきっかけは、講義のプレゼンの準備にて発見したとある写真であったそうだ。それはガーナの少年が、濛々と立ち込める黒煙を背後に、電子廃棄物を持ち上げる写真であった。

先進国で使われなくなった電子機器は、「リサイクル」という名目で発展途上国に運び込まれるという(WIRED)。ガーナの首都アクラには、世界最大のゴミ集積場とされる「アブボグブロシー」がある。先述の写真も、その集積場でドイツの写真家Kai Löffelbein氏が撮影したものだ。WIREDの記事によれば、写真の背景に炎が立ち込めているのは、銅線ケーブルのラバーコーティングを焼き落としているためだという。集積場には、そうした有害な煙の中で電子ゴミをあさって生計を立てている人が約700人もいたそうだ。中には12歳の子どもも含まれていたという。

Abe氏はそうした問題を改めて目にして、現状では「解決できそうにない」と考えたという。リサイクルよりも販売が重視されがちな社会構造や、製造過程での環境負荷の大きさなど、問題解決にはいくつもの壁がある。そこで、モノを作っている上流の過程に何か影響を与えられないかと考えた結果、『Black Cycle』は生まれたそうだ。


重いテーマを含むものの、ゲーム自体は3D空間を歩くだけのシンプルなタイトルとのこと。おとぎ話を読むような感覚で気軽にプレイしてみてほしいそうだ。また本作は、こうしたテーマとゲームという媒体の相性を調べるための、実験的な試みでもあるとのことだ。ちなみにゲーム内の炎の表現は同氏が特に気に入っている部分だという。試行錯誤を重ね、納得のいく表現にたどり着いたそうだ。

『Black Cycle』はPC(Steam)向けに、税込500円で販売中だ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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