Steam極貧生活シム『大多数』配信開始直後に販売取り下げ。同時接続者数8万人の好調スタートに急ブレーキ

Thermite Gamesは11月17日、『大多数(英:Nobody – The Turnaround)』のSteam早期アクセス配信を開始した。ピーク時のSteam同時接続者数8万人を記録。しかし急遽Steamでの販売を取り下げした。

デベロッパーのU.Ground Game StudioとパブリッシャーのThermite Gamesは11月17日、『大多数(英:Nobody – The Turnaround)』のSteam早期アクセス配信を開始した。配信開始直後、ピーク時のSteam同時接続者数は最高で8万人を記録。Steam全体のグローバルセールスランキングでも6位に躍り出るなど、華々しいスタートを切った本作。しかし配信開始から半日後、急遽Steamでの販売を取り下げした。技術的な問題によるものと説明しており、販売再開の目処は立っていない。

※現在Steamでは販売が取り下げられている


『大多数』は、借金から抜け出す方法を探す労働者のライフシミュレーションゲームだ。“現実世界のパラレルワールド”との前置きがあるアジア風の地域にて、人間らしさの残る街並みとスラム街がこのゲームの舞台だ。この世界で主人公は、出身や学歴といった恵まれたものを持たない「多数派」と呼ばれる存在のひとりに過ぎない。借金の罠に陥った主人公は債権者に迫られながらも日銭を稼ぎ、労働者として努力する生活を送る。借金地獄からの解放がこのゲームの目的だ。


本作では労働者の「リアルな」仕事や生活を再現するために、主人公には健康や感情といったステータスが設定されている。これらのステータスは「労働中にケガをする」「他人の給料を見て気持ちが萎える」といったランダムイベントで上下するのだ。予期せぬ事態を乗り越えて苦しい生活を生き延びる、ハードコアなライフシミュレーションゲームになっている。


無料デモ版が多数配信されるイベントSteam Next フェスでは、本作のデモ版のピーク時の同時接続者数は3万人超えを記録した。デモ版のダウンロード数は110万本、ウィッシュリスト登録者数40万人を達成したと発表されている(関連記事)。踏んだり蹴ったりの底辺生活っぷりが好評を博したものと見られ、無料デモ版の時点で注目を集めていた作品だ。

早期アクセス配信版では、3種類のモードをサポート。30日間のストーリーモードと、それぞれ異なる条件や目的を持つキャラクターでプレイするチャレンジモード、キャラクターを自由にカスタマイズできるサンドボックスモードがそれぞれプレイ可能だ。また英語・中国語でのプレイに対応している。早期アクセス版は日本語でのプレイには対応していないものの、正式なリリースに向けてより多くの言語でのプレイに対応する予定とのことだ。


本作のSteam同時接続者数は、先述の通り11月17日の早期アクセス配信開始後に最高で82511人を記録(SteamDB)。かなり好調な数字を叩き出した直後、翌18日にはSteamでの販売が突如取り下げられた。実際に購入可能だった時間は24時間にも満たない。販売を取り下げた理由について開発元は「古いWindows OSバージョンでゲームが起動しないというフィードバックを受け、プレイヤーの権利を守るために一時的に購入不可に設定している」と説明した。あわせて問題を解決するために全力を尽くしていることと、ゲームを起動できないプレイヤーはSteamから返金を申請できる旨を述べている。Steamでは、プレイ時間が2時間に満たないゲームは理由を問わず返金が可能だ。そのため本作を起動できないプレイヤーに対しては個別の対応はとらず、Steamの規約内で返金を申請するように案内しているものとみられる。

また、本作には多くのSteamユーザーレビューが寄せられており、購入したプレイヤーの大半は購入したゲームをプレイできているようだ。また、一部の環境でゲームを起動できないことを理由にゲームの販売そのものを取り下げるケースは珍しい。そのため、販売取り下げには技術的な原因とは別の理由があるのではと疑う声もあるものの、詳細は不明だ。


本作のSteamレビューについては、レビュー件数1886件中65%が好意的なレビューという「賛否両論」の評価に留まっている。肯定的なレビューが過半数を占めるものの、ゲームバランスについては意見が分かれているようだ。否定的なレビューの中には、不安定なパラメータの上下におびえるプレイングに苦痛を感じるとの意見が見受けられる。このあたりはプレイヤーの好みが分かれる作風とも言えるだろう。また、本来予定されていなかったという早期アクセスでの配信および販売取り下げについて、開発側の姿勢を疑問視する声もあるようだ。

ゲーム内に登場するミニゲームであるChinese Chessについても、特に英語圏のプレイヤーの間で評価が分かれている。Chinese Chessは象棋(シャンチー)とも呼ばれ、中国本土ではポピュラーなボードゲームだ。日本の将棋に似ており、漢字の書かれた駒を使う。本作は英語でのプレイにも対応しており、漢字が読めない英語圏のプレイヤーにとってはいささかハードルが高いようだ。


あくまで現在の本作のSteamにおける評価は、配信開始からわずか1日たらずの間に購入したプレイヤーによるものである。早期アクセス版であることもふまえ、今後大きく評価が変動する可能性がある点は留意されたい。また、本作のSteamユーザーレビューは、中国語簡体字によるものが2000件。すなわち9割以上が中国語簡体字ユーザーによる評価となっている。より多彩な地域のユーザーが増えれば、評価にも変化が起きるかもしれない。

なお、本作はSteamストアページにて、正式なリリースは2023年秋になると伝えている。正式リリースに向けて、ストーリーやイベントなどのコンテンツの追加や多言語対応を予定している。一方で、記事執筆時点の今もなお、『大多数』のSteamストアページは購入ボタンが表示されず、購入できない状態のままだ。すでに極貧生活を始めた8万人のプレイヤーたちに想いを馳せつつ、販売再開を待とう。

Aya Furukawa
Aya Furukawa

主にニュースを担当。ビジュアルや世界観にこだわりのあるゲームが好きです。

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