UE5で作られ話題となった「スーパーマンゲーム」、Steamで盗用販売されているとの報告。開発者は怒り


ゲームスタジオToybox GamesのTyson Butler-Boschma氏は11月14日、あるゲームおよびゲームスタジオを告発した。同氏は自身のTwitterアカウントにて「私が作ったゲームが盗まれた。犯人はそれをSteamで販売し、さらには私のYouTubeチャンネルに投稿している動画も(虚偽の)著作権侵害申告で取り下げた」と発言した。該当の動画は、視聴不可となっていた。


問題となっているゲームは『Heroes City Superman Edition』で、現在Steamで配信されている。スーパーマンを操作し、街の上空を縦横無尽に飛び回る、至ってシンプルな飛行シミュレーターだ。

Butler-Boschma氏によると、この作品は同氏が制作し、itch.ioで無料デモを公開している『A Superman Style Flight Experience (UE5)』(以下、ASFE)のアセットを流用した盗作だそうだ。『ASFE』は、「The Matrix Awakens: An Unreal Engine 5 Experience」にも使われた、Unreal EngineのCityデモを用いた作品。同アセットにスーパーマン要素を加えたデモとして、今年4月にも話題となった(関連記事)。そんな『ASFE』は、盗用被害にあっているようだ。Butler-Boschma氏によるSteamレビューで、事の経緯と同氏の主張が確認できる。


Butler-Boschma氏は11月2日に、『Heroes City Superman Edition』がSteamで配信されていることを知ったそうだ。『ASFE』では市販のUnreal Engineアセットを数多く使用しているので、違う開発者が酷似したゲームを開発したという可能性もあると考えた。しかし、キャラクターのカラーリング、体型、靴の種類、さらにはケープの物理演算までもが瓜二つだったという。念のため、ゲームを購入し、プレイしてみたところ、『Heroes City Superman Edition』は自分の作品の盗用だと確信したそうだ。Butler-Boschma氏は「私が一から作り上げた最初のステージと、私が書いたメッセージもちゃんと入っていた。このゲームは私が公開した無料デモを盗用して、そのまま販売したものだと確信した」と語っている。

同氏はSteamレビューにて「これは詐欺だ。この“開発元”は、私のYouTubeチャンネルに対して嘘の通報をしている。Steamでは、盗作だと注意喚起しているユーザーのコメントや、コミュニティで投稿されたスレッドを削除している」と告発。なお本件については、Butler-Boschma氏はすでにSteamにてデジタルミレニアム著作権法(DMCA)侵害として申告を出したが、Valveに対応してもらえなかったそうだ。


一方でこの件に関して、『Heroes City Superman Edition』開発元のHero Game StudiosもSteamレビューを通じて反論している。Butler-Boschma氏はかつて開発チームの一員だったが、チームから離れたという。同氏は金欲しさに作品を自分のものだと言い張っているだけであるとコメント。Butler-Boschma氏の言っていることは信用しないように、と呼びかけた。

一方でButler-Boschma氏も黙っていない。同氏は「そもそも無料で公開しているのだから、金欲しさにやっているという理屈は成り立たない」と反論している。ほかにも、SteamやRedditのユーザーコメントでは、「公式の文章にしては文法が怪しい」「音楽の出典を明記していない」「不都合なコメントを削除している、ゲームファイルのSHA-1ハッシュが『ASFE』と一致している」などとして、『Heroes City Superman Edition』の不審な点が指摘されている。

さらにButler-Boschma氏は、『Heroes City Superman Edition』のストアページには「今後アップデート予定」と書かれているが、不可能であると指摘している。なぜならば、盗用した者は、単に無料公開されたビルドをダウンロードしそれをSteamにアップロードしただけであり、ソースコードを所持していないからだ、と言い切った。


Butler-Boschma氏は、この件は倫理の問題であるとコメント。もし問題のゲームが無料で公開されていたら、特に何も思わなかっただろうと語った。しかし同氏は、Hero Game Studiosは、元は無料で公開されている作品を有料で販売し、嘘をふりまき、そして自分の名声にも傷をつけた、と主張し憤っている。同氏は『Heroes City Superman Edition』への反論レビュー投稿時点にて、Steamを通じて同作に対するDMCA申告を送ったと伝えていた。一方で、Butler-Boschma氏のYouTube動画に対するDMCA申告について、同氏は異議申し立てを躊躇しているようだ。異議申し立ての際には、個人情報が申告側に知られるという大きなリスクが伴うためだろう。

そして11月15日になり、『Heroes City Superman Edition』のSteamストアページが削除された。また同氏のYouTube動画についても、復活したとのこと。ValveとYouTubeが対応したようである。双方による一連の主張の真偽のほどはまだ不透明であるが、ひとまずButler-Boschma氏の主張が両プラットフォームで通ったことになるだろう。


『A Superman Style Flight Experience (UE5)』は現在、itch.ioにて無料公開中だ。