個人開発者Sohun Lee氏は11月8日、『In The Rural Village of Nagoro(名頃の農村で)』をSteamにて無料配信開始した。ゲーム内は日本語表示に対応している。日本の農村というユニークな舞台のゲームであるが、どうやら理由があるようだ。
『名頃の農村で』は、アドベンチャーゲームだ。1プレイは15分程度の短編となっている。舞台となるのは、徳島県三好市・名頃だ。主人公である少女は、名頃に住んでいる。子供も多く活気あふれた名頃で人々と暮らしていたが、家庭の事情で大阪へと移住。老人になり名頃へ戻ってくる、というのが話の流れとなる。ゲームとしては至ってシンプル。名頃を歩き人々に挨拶をしていく。Fキーを押すことで挨拶ができる。進行方向を進んでいくことで、物語が展開される形式だ。
本作の魅力は、手描きイラストによって展開されていく物語。-Asami-氏のボーカルで流れるBGMと共に、淡く儚い名頃が描かれる。前述したようにかなり短い作品になっているので、まずはプレイしてみるといいだろう。なお開発を手がけるSohun Lee氏は、居住地は語らなかったが、外国人だという。気になるのは、なぜ「徳島県の名頃なのか」という点だ。開発者に話を訊いた。
本作は実在する人物・綾野月美氏を題材にしているとのこと。名頃は集落となっており、たくさんのかかしが存在するという。そうしたかかし達の“母”と呼ばれているのが綾野氏のようだ(徳島県 三好市HP )。この綾野氏が主人公のモチーフなのだろう。
Lee氏は日本のドキュメンタリーを見た際に綾野氏を知ったという。また名頃のような集落がゆるやかに衰退していく状況を見てとても悲しかったそうだ。そんな名頃のPR、および農村が“住んでいた人が育ったときに、記憶していた場所じゃなくなっていく”寂しさを表現するべく『名頃の農村で』を作ったという。ゲームとしては、感情をギミックで表現するアドベンチャーゲーム『Florence』から影響を受けているそうだ。
現代日本では、東京の一極集中や地方衰退が議論されることも多い。リモートワークの浸透により、そうした議論の中にも変化が生まれているが、子供が都会へと巣立っていく地方としては、高齢化や人口減少は深刻。そんな現代日本の問題を憂う外国人が、ゲームでそうした懸念を表現したというのは興味深い。さまざまな思いが込められていると感じられるので、ひとまずゲームを遊んでみるといいだろう。
『In The Rural Village of Nagoro(名頃の農村で)』は、Steamにて無料配信中だ。また10月よりAndroid向けにも配信されている。
【UPDATE 2022/11/9 18:15】
Android版について追記
※ The English version of this article is available here