Electronic Arts(以下、EA)は、Slightly Mad Studiosが手がける『Project CARS』シリーズの開発停止を決定したそうだ。GamesIndustry.bizが伝えている。
『Project CARS』はレース・シミュレーションゲームシリーズだ。ナンバリング最新作としては『Project CARS 3』がPCおよびコンソール向けに配信中。モバイル向け作品である『Project CARS GO』も配信されていた。シリーズの特徴としては、レースコンディションや車のカスタマイズ要素が盛り込まれており、実在の車種やサーキットが数多く登場する。なおSlightly Mad Studiosは2019年にCodemastersにより買収。そしてCodemastersは2021年に、EAに買収されている。
GamesIndustry.bizによると、EAは『Project CARS』シリーズの開発停止を決定したという。EAの広報担当者によれば、本シリーズに取り組んでいたスタッフはEAのほかの部署に「可能な限り適切に」異動。『EA Sports』および同社のレースゲームシリーズの開発チームに配置できるよう取り組まれているとのこと。スタッフたちにできるだけ多くのサポートを提供することが優先事項であるとしている。
またEA広報担当者は、同社のレースゲームシリーズにて、ライセンスの必要な実在車などが登場するオープンワールドのライブサービス型ゲームの開発に注力していると言及。今回の決定により、そうしたゲームの開発にさらに重点的に取り組むことが可能になったとのことだ。
初代『Project CARS』は200万本以上を売り上げている。人気シリーズといっても差し支えないだろう。ただし最新作である『Project CARS 3』は、メタスコアやSteamレビューが過去作と比較すると低調気味。やや行き詰まっていたわけだ。またEAは『Need for Speed』、およびCodemastersが手がける『F1』『DiRT』『GRID』シリーズといった複数のIPを有している。そうしたシリーズとの競合を避けるために、EAが『Project CARS』シリーズの開発停止を決断した可能性はあるだろう。もっとも、「ライブサービス型ゲーム開発集中のためリソース調整」という公式表明が、ある程度その背景を物語っているところではある。
Slightly Mad Studiosはかつて、EAの『Need for Speed: Shift』およびその続編にあたる『Shift 2: Unleashed』といったレースゲームを手がけたこともある。それぞれのレースゲーム、その開発元がライバルであり、仲間でもあった。大きな会社のファミリーになったことで、そのうちの1タイトルの新作開発の芽がなくなるというのは、どことなく悲しい結末である。
なおSlightly Mad Studiosの創設者であるIan Bell氏は昨年10月、同スタジオのCEOを辞任していた。同氏は過去に「Shift 3」の開発における取り決めをEAに一方的にキャンセルされたと主張。その後主要なスタッフを引き抜かれたとも述べており、EAに対して批判的な姿勢を示していた。しかし結果として、同スタジオは親会社Codemastersと共にEA傘下入りする形となったわけだ。
Bell氏はCEO辞任の際、スタジオの将来が保証された、とのコメントを残していた。同氏にとって不本意な形でのEA傘下入りとなった反面、スタジオは資金面での後ろ盾を得たという考えからだろう。今回の『Project CARS』シリーズ開発停止、およびスタジオスタッフ異動の報道を受けてか、同氏はEAを皮肉交じりに批判。スタッフの意向や生活を度外視して、数字だけで判断しているとの意見を述べている。
ちなみに『Project CARS』および『Project CARS 2』については、それぞれ今年10月および9月に配信が終了していた。配信終了の理由については、「車種およびサーキットのライセンス終了のため」であると伝えられていた。
【UPDATE 2022/11/09 11:45】
Ian Bell氏について追記