Steamにて“穴を見るだけ”のゲーム『Come See My Hole』が謎の好評を獲得。その背景には計画が潜む
デベロッパーのTrip Time Gamesは10月28日、穴を見るだけのゲーム『Come See My Hole』をPC(Steam)向けに配信開始した。本作はシンプルすぎる内容と裏腹に、Steamユーザーレビューにて一定の評価を獲得。その背景には、本作の仕掛け人による思惑があった。
『Come See My Hole』は、地面にあいた穴を見るゲームだ。プレイヤーは3Dで描画された空間にて、穴を見ることができる。本作の特徴としては、Discordを通じたマルチプレイにも対応。最大3人の友達を誘って、みんなで喋りながら穴を見ることが可能だ。ひとりでも、複数人でも穴を見られるわけだ。本作はストアページにて「メタバースでも、VRでも、ARでも、Web3でも、NFTでもない」とアピール。「あなたは、穴のそばに立つ」として、本作の提供する体験を簡潔に伝えている。
あまりにもシンプルすぎる内容の本作には、リリース初日こそピーク時で25人のプレイヤーが集ったものの、それ以降は1桁で推移(SteamDB)。そうした閑散にもかかわらず、本作はSteamユーザーレビューにて記事執筆時点で71件のユーザーレビューを獲得。うち98%が好評とする「非常に好評」ステータスを獲得している。シンプルすぎる小規模作品としては、かなり高評価。本作の提供する「オンライン穴見体験」がプレイヤーの心に響いた結果かと思いきや、そうとも限らないようだ。
まず気にかかるのは、本作に寄せられたSteamユーザーレビューにて、多数のユーザーが「Fun with friends(友達と遊ぶと楽しい)」という言葉を示し合わせたかのように投稿している点だ。また、本作のトレイラーでは、本作の発案者とおぼしき男性が本作の内容と展開について語っている。その男性は「ゲームのレビューには“Fun with friends”とだけ書いてもらうんだ」とコメントしているのだ。トレイラーの内容に操られるがごとく、ユーザーたちが好評レビューを投稿している状況は、やや不気味でさえある。
しかし背景がわかれば、そうした不気味さは薄らいでいく。というのも、本作公式サイトなどではディレクターとして「Pepp」なる人物が携わっているとの表記がある。このPepp氏は、アイルランドを拠点とするストリーマーなのだ。上述のトレイラーのなかで本作について語る男性も、同氏と見られる。
Pepp氏とおぼしき声はトレイラーのなかで、本作の背景に存在する「ある計画」についても語っている。同氏は、ゲーム作品が「友達と遊ぶと楽しい」という評価を下されることがあると言及。そして「友達と穴のそばに立てる」以外の機能が一切ないゲームを作り、知り合い全員にそのゲームを買ってもらった上で、「友達と遊ぶと楽しい」とレビューを書かせるとの計画を明かしている。つまり、『Come See My Hole』の作品コンセプトおよび謎の好評は、Pepp氏による計画の結果だったのだろう。
Pepp氏の行為は、ある種のレビュー操作といえるかもしれない。ただ、ゲームに対する「友達と遊ぶと楽しい」との評価については、「気の合う友達とやれば、ゲームの品質はどうあれ楽しいのでは」との疑問もつきまとう。ひいては、ゲーム内容にそぐわない高評価にも繋がる可能性がある。Pepp氏の思惑は計りかねるものの、そうしたレビュー評価とゲーム内容の乖離に、本作で一石を投じる意図もあったのかもしれない。
一方で同氏は本作リリース後、穴のまわりで語らう実況プレイの様子を中継している。そのなかでは、本作に実装された数少ない要素であるエフェクト機能などを使ったり、雑談に花を咲かせたりして楽しんでいる様子が見られる。本作の「3D空間にオンラインで集う」という機能については、プレイヤーに一定の価値を提供しているのだろう。
『Come See My Hole』はPC(Steam)向けに、100円で販売中。友達と遊ぶと楽しいと思われる。筆者は付き合ってくれる友達がいなかったため未確認だ。