Xboxのボスが『Call of Duty』シリーズの独占化を改めて明確に否定。「PlayStationが存在する限りリリースを続ける」
マイクロソフトは今年1月にActivision Blizzardを買収する方針を発表して以降、『Call of Duty』シリーズの行方について繰り返し言及してきた。それは、「買収完了後には同シリーズがXbox独占になるのではないか」という憶測や懸念への回答だ。同社ゲーム部門CEOのPhil Spencer氏は10月31日、YouTubeチャンネルSame Brainのインタビューに臨み、このトピックについてコメント。独占化を改めて明確に否定した。海外メディアThe Vergeなどが報じている。
今回のインタビューのなかでSame Brain側は、「買収完了後にはActivision BlizzardタイトルがPlayStationプラットフォーム向けにはリリースされないようになり、巨大なコミュニティが分断されるのでは」と懸念する人がいると指摘。これに対してPhil Spencer氏は、「『Call of Duty』をPlayStationから取り上げるつもりはない」と述べ、自ら同シリーズについて言及した。
Spencer氏は続けて、「ゲーム販売するプラットフォームとしてPlayStationが存在する限り、『Call of Duty』のPlayStation向けリリースを続けることが、我々の意図するところだ(As long as there’s a PlayStation out there to ship to, our intent is that we continue to ship Call of Duty on PlayStation)」とし、『マインクラフト』におけるマイクロソフトの取り組みと似たようなものであるとコメントした。
同社は2014年に『マインクラフト』の開発元Mojangを買収。その後も、マルチプラットフォーム展開をコンソール世代を超えて継続している。Spencer氏は、『マインクラフト』においては買収後も対応プラットフォームを減らすことはしておらず、それが同作のコミュニティにとっても良いことであると感じているとのこと。そして『Call of Duty』においても、同じ対応を取りたいとする考えを述べた。
Activision Blizzardは、『Call of Duty』以外にも『オーバーウォッチ』や『ディアブロ』『World of Warcraft』『Candy Crush』など、数多くの人気IPを抱えている。そのなかで『Call of Duty』は、特に大きなコミュニティをもち、PlayStationプラットフォームでの人気も高いシリーズのひとつだ。今回のマイクロソフトによる買収計画において同社は、当初より『Call of Duty』シリーズとPlayStationについて言及してきた。
買収計画を発表した3日後にPhil Spencer氏は、買収が完了してもActivisionとSIEによる既存の契約を尊重し、『Call of Duty』シリーズをPlayStation向けに提供するつもりであるとコメント(関連記事)。また今年2月には、マイクロソフトも同様の声明を発表し、Activision Blizzardのほかの人気タイトルを含め、既存の契約を超えてPlayStationに提供していく方針を明らかにしていた。さらに、同シリーズの任天堂プラットフォームへの展開にも関心を示している。
一方で、SIE社長兼CEOのJim Ryan氏は、マイクロソフトの対応には満足していない様子を示していた。というのも、Ryan氏はSpencer氏と事前に協議をしており、その場でマイクロソフト側は既存の契約が終了したあとの、『Call of Duty』シリーズのPlayStation向けリリースを約束する期間として、3年間を提案したと明らかにしていた(関連記事)。
両者の協議についてSpencer氏は、『Call of Duty』シリーズの既存契約を超えてのPlayStation向け展開に関しては、ゲーム内要素やコンテンツの同一性をもたせたかたちとして、少なくとも数年間継続することを約束したと語っていた(The Verge)。上述のRyan氏のコメントにより、その具体的な年数が明らかになった格好だったわけだ。Spencer氏の言葉からは、あくまで同一コンテンツの提供について約束した期間であるとも受け取れる。しかしSIE側からすると、3年経った後の『Call of Duty』の自社プラットフォームでの展開が、不透明な状態となっているようだ。
そうしたなかで今回Spencer氏は、『Call of Duty』シリーズのPlayStation向け展開を継続する考えを、より踏み込んだ表現にて表明した。PlayStationプラットフォームが存在する限り、そこにリリースしていくつもりである旨を述べており、契約終了後3年経てば撤退するという話ではなさそうだ。ただ同氏は、マイクロソフトの意図(intent)はそうであると述べるにとどめており、SIE側に確約したわけではない模様。今回の発言をRyan氏はどのように受け止めているのか興味深い。なおSIEは、マイクロソフトのActivision Blizzard買収に反対の立場であることを各国の規制当局に示している。
マイクロソフトによるActivision Blizzardの買収計画については、反トラスト法(独占禁止法)違反の恐れがないかなどについて、現在各国の規制当局による承認審査が進められている。これまでには、サウジアラビアやブラジルにて承認が下りている。イギリスにおいては、買収に懸念を示す中間報告が出されて注目を集めているが、今回のインタビューのなかでPhil Spencer氏は、各規制当局の求めに応じて対応を続けているとし、今年度中には買収手続きを完了できるだろうとの見通しを語っている。
なお、そのイギリスの規制当局に提出されたマイクロソフトの意見書においても、『Call of Duty』シリーズについて言及されている。同社は、同シリーズのPlayStation向けの提供を続けることは、Xboxのビジネスと経済的な取引において、商業的に必要不可欠であるとコメント。もし同プラットフォームから撤退すれば、自社の収益にリスクをもたらすことになるとし、マイクロソフトとしてはPlayStationプラットフォームからの収益を当てにしていることを明確にすると説明した(The Verge)。
『Call of Duty』シリーズがXbox独占になるか否かは、各規制当局が関心を示している要素のひとつ。マイクロソフトはマルチプラットフォーム展開継続による利益を強調し、独占化を否定したかたちとなる。