ハードコアFPS『Prodeus』Nintendo Switch版の国内配信が頓挫との報告。レーティングの問題により


パブリッシャーのHumble Gamesは10月28日、Bounding Box Softwareが手がけたFPS『Prodeus』のNintendo Switch版を、海外向けに配信した。本作は日本語表示に対応し、PCやXbox One向けにはすでに日本でもリリース済み。ただ、Nintendo Switch版は国内配信されておらず、その背景にはレーティングの問題があったようだ。

『Prodeus』は、1990年代のクラシック作品から影響を受けるFPSだ。キャンペーンモードでは、主人公と本作の世界を創造したプロデウスと呼ばれる存在を倒すことを目指す。薄暗い未来的な施設内を進み、多種多様に用意された銃で、次々に現れるモンスターを葬っていくのだ。また、オンライン対戦・協力プレイに対応するほか、オリジナルのステージを作成・共有できるレベルエディターも収録されている。

本作を手がけたのは、Raven SoftwareやOverkill Software、id Softwareなどを渡り歩いてきた、Michael Voeller氏とJason Mojica氏というベテラン開発者チームだ。Kickstarterにて資金獲得に成功したのち、2020年11月にSteamで早期アクセス配信を開始。そして今年9月に正式リリースを迎えた。本作は、現代のレンダリング技術を使用しながら、クラシックFPSを彷彿とさせるビジュアルとゲームプレイを導入していることが特徴。Steamのユーザーレビューでは、現時点で94%が好評とする「非常に好評」ステータスを獲得している。

本作はPC版の正式リリースに合わせて、PS4/PS5/Xbox One向けにも移植。そして今回Nintendo Switch版もリリースされたが、今のところ日本では配信されていない。その理由として、メーカーはレーティングの都合であると説明しているという。

『Inscryption』や『Neon White』など、多数のゲーム作品の英日翻訳を手がけているToyoch氏は10月31日、SNS上で本作の動向について投稿。メーカーから『Prodeus』のキー提供についての連絡を受けた際に、Nintendo Switch版は日本では当面リリースされないと伝えられたことを明かした。同氏の引用したメール文面によれば、その背景には日本国内における「18歳以上対象レーティング」にまつわる事情があったようだ。

本作では、敵を撃てば派手に血飛沫が飛び、あたりは血の海に。また、敵の身体の断裂要素もあり、レトロ風味のあるビジュアルを採用しているとはいえ、ゴア表現のインパクトが大きな作品だ。おそらくそうした表現が影響して、18歳以上対象にレーティングされたのだろう。北米でも、ESRB: M(17歳以上対象)という家庭用向けではもっとも高いレーティングとなっており、流血・暴力・ゴア表現について注記されている。

ただ国内Nintendo Switchでは、18歳以上対象の作品も多数リリースされている。たとえば、本作の開発者も携わった『DOOM(2016)』もそのひとつだ。ではなぜ『Prodeus』は発売できないのかというと、CEROではなく、IARCのレーティングを利用しているためだと考えられる。


IARCは、海外に拠点を置くレーティング団体で、北米のESRBや欧州のPEGIなど各国・地域のレーティング団体が加盟して成り立っている。ダウンロード専用ゲーム・アプリのみを審査対象とし、審査料金が無料であることが特徴だ。国内ニンテンドーeショップでは2020年9月より、CEROに加えてIARCも導入された。ただし、IARCにて18歳以上対象にレーティングされたタイトルは配信不可。その場合は、CEROレーティングを取得するように任天堂は求めている(関連記事)。

本作のXbox One版のストアページを見てみると、「IARC 18+」との記載が確認できる。ということは、上述したようにそのままでは国内ニンテンドーeショップでは配信できない。現時点でIARCにCEROは加盟していないため、日本の基準に照らした審査結果とはなっていない。そのため任天堂は、もっとも高い対象年齢にレーティングされた作品については、慎重を期して取り扱いを避けているのだろう。実は、SIEもPS Storeにおいて同様の対応を取っており、本作のPS4/PS5版も国内リリースされていない。(関連記事)。


本作の販売元Humble Gamesは、Nintendo Switch向けには以前はCEROレーティングを取得して日本でリリースしていたが、IARC導入後はそちらに移行している。審査料金が無料であることや、海外メーカーにとってはCEROと比べて手続きがしやすいことなどが背景にあるのだろう。ただ、IARCにて18歳以上対象にレーティングされると、(Xbox以外では)途端に国内コンソール配信できない状況になってしまう。今回の件においては、そうした事例がまさに明るみになったようだ。

『Prodeus』は、PC(Steam)およびXbox One向けに国内配信中。Xbox Game Pass向けにも提供されている。なおToyoch氏の報告によると、Humble GamesはNintendo Switch版について、“当面は(for the time being)”日本でリリースできないと伝えていたとのこと。PS4/PS5版を含め、同社の国内配信に向けた引き続きの取り組みにも期待したい。