“閉店後IKEA”サバイバルゲーム『The Store is Closed』、IKEAから怒られる。「IKEA風やめて」と告げられたと報告

協力サバイバルゲーム『The Store is Closed』が、家具販売チェーンIKEAから作品の変更を要求されたようだ。同作の舞台はIKEAをモデルとしており、その点が問題視されたようだ。

協力サバイバルゲーム『The Store is Closed』が、家具販売チェーンIKEAから作品の変更を要求されたようだ。同作の舞台はIKEAをモデルとしており、看板などの意匠が類似。その点がIKEAにより問題視されたようだ。海外メディアKotakuが伝えている。

『The Store is Closed』は、サバイバルゲームだ。舞台となるのは「STYR」と呼ばれる大型の家具モール。とはいえ、普通の家具モールではない。常軌を逸した広大さかつ、夜になるとミュータント化した店員が襲い来る異常空間となっているのだ。プレイヤーはこのモールにて、道具のクラフトや拠点の建築などが可能。プレイヤーは一人プレイやオンライン協力プレイで、家具モールのあらゆる設備やアイテムを利用して生き残りを目指す。本作は現在Kickstarterにてクラウドファンディングキャンペーンを実施しており、目標額を大幅に上回る約4万4000英ポンド(約750万円)を獲得済み。リリース前から、大きな期待を寄せられている作品だ。

しかし、海外メディアKotakuによれば、そんな本作は現在大型家具販売チェーンIKEAから「IKEA風の要素を変更するように」との勧告を受けているようだ。本作を開発するZiggyことJacob Shaw氏が、IKEA側代理人弁護士から、本作に関する停止通告書(cease and desist letter)を受け取ったという。


『The Store is Closed』は、はっきりとIKEAをモチーフにしている。名前こそ「STYR」とぼかされているものの、青と黄色を基調とした看板や店員の制服は明らかにIKEAを再現している。また、本作のベースとなっているのは、共同創作コミュニティSCPにおける創作物のひとつ、SCP-3008だ。こちらは、「IKEAを基礎とした異常空間である」と明記されている。『The Store is Closed』はこのSCPの設定をベースに、Shaw氏によって開発されているわけだ。何より、本作開発元のTikTok動画でも、ハッシュタグに「#ikea」と挿入されている。本作が実質“IKEAを舞台としたサバイバル”である点は、このようにかなり露骨に示されている。

IKEA側弁護士からShaw氏に届いた通告書でも、本作が「IKEA側の許諾なく、IKEAに関連する意匠などを利用している」と指摘。具体的には、「青と黄色で描かれたスカンジナビア風の店舗名称」「青い箱のような店舗」「黄色い従業員制服」といった目立つポイントから、「床に灰色で示された導線」「IKEA風家具」などのこまかい点まで類似点があるとしている。また、同通告書では、複数メディアが本作とIKEAを関連付けて報じたとし、さらには読者たちも本作をIKEAと結びつけていると主張している。そうした点を根拠としてIKEA側弁護士は、Shaw氏が米国商標法などに違反していると主張して、本作における類似部分の全面差し替えを求めているようだ。


しかし、Shaw氏側には反論もあるようだ。まず、特徴的な青と黄色の看板や店舗については、現在の本作のアルファ段階のビルドでは、タイトル画面や冒頭に出てくるのみ。本編にはそうしたブランディング要素は登場しないとしている。また、「スカンジナビア風の店舗名称」と弁護士が主張する「STYR」なる店舗名は「STORE」のもじりであり、スウェーデン語に偶然同じ単語が存在するだけのようだ。また、そもそも「IKEA」という名称がスウェーデン語ではなく、創業者と土地のイニシャルを合わせたものである点も指摘。弁護士側の主張にもやや疑問点があることを伝えている。

そして、「IKEA風の家具」をどこまで変更するか、線引きをするのも難しいだろう。というのも、Shaw氏はKotakuに向けて「IKEAは特に意識せず、家具のアセットパックを買って利用している」としている。つまり同アセットはありふれたものであり、少なくともShaw氏自身は、IKEA風の家具を意識してデザインしていないとのことだ。また、「床に灰色で示された導線」なども、特にIKEA特有の店舗デザインというわけではないだろう。


Kotakuによれば、通告書のなかでIKEA側弁護士は「IKEAであると示唆しないように、ゲーム内の家具店を変更するのは簡単でしょう」とコメントしたという。また、本作が2024年に発売されるのであれば、変更は容易なはずであるとの旨も語っていたそうだ。しかし、その直後には「この通告書が届いてから10営業日以内に変更するように」との要求もなされたといい、一貫性のない指示となっている印象だ。

『The Store is Closed』がIKEAをモデルとしている以上、IKEA側から変更を求められ応じるのは法的・倫理的に然るべきだろう。一方で、Shaw氏の語った内容が事実だとすれば、今回のIKEA側弁護士の要求内容が適切かどうかには疑問が残る。なお、当のShaw氏は「訴訟を避けるために、死にものぐるいでゲームのいろんな部分を変えなきゃいけない」とKotakuに語っている。今後本作はどのように変更されていくのか、そしてIKEA側との折り合いはつくだろうか。

『The Store is Closed』は、2024年後半にPC(Steam)にて早期アクセス配信予定。PS5/Xbox Series X|S向けのリリースも予定している。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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