Ubisoft新作シューター公式が“スキルベースマッチメイキングを採用しない”とアピール。賛否分かれるシステムを避ける試みか

『Tom Clancy’s XDefiant(エックスディファイアント)』海外向け公式サイトにて、本作のカジュアルプレイではSBMM(スキルベースマッチメイキング)が導入されないことが発表された。その後も公式からは、SBMMにまつわるやや珍しいアピールがおこなわれている。

Tom Clancy’s XDefiant(エックスディファイアント)』海外向け公式サイトにて、本作のカジュアルプレイ(Casual play)ではSBMM(スキルベースマッチメイキング)が導入されないことが発表された。また海外向け公式Twitterアカウントでは、SBMMを使わない点をさらに強調。やや珍しいアピールがおこなわれている。

SBMMとは、プレイヤーの腕前に応じてマッチメイキングをおこなうシステム。スキルがレーティングとして表示されるのが一般的なランクマッチとは別に、カジュアルなゲームモードにおいて導入されているシステムを指す場合が多い。

『エックスディファイアント』は、『Tom Clancy’s』シリーズ人気作品の世界観を繋ぐ基本プレイ無料のオンライン対戦FPS。ゲームでは6対6でのアリーナ型、およびリニア型の競争性の高いゲームモードと多彩なマップが用意されるという。本作はクロスオーバー作品となっており『Tom Clancy’s』シリーズから勢力やキャラが登場。各勢力にはそれぞれの特色に合わせた役割が与えられる。


SBMM不採用の公式アピール

今回『エックスディファイアント』開発元は、SNS上でユーザーコミュニティに対してAMA(Ask Me Anything)を実施。その際の質問と回答を公式サイト上に投稿した。その中では、カジュアルプレイのマッチメイキングにSBMMを採用しない旨が伝えられている。そして本作の公式Twitterアカウントは、SBMMを採用しない点をさらに強調。「カジュアルプレイからSBMMを撤廃しろって?私たちはゲームというものを分かっています」とのコメントを添えて、本作のマッチメイキングシステムを紹介している。

なお一方で、初心者向けの仕組みは導入されるとのこと。ゲームを始めたてのプレイヤーたちは通常のプレイリストに加えて、一定のレベル以下の場合にのみ参加できるプレイリストを利用できるという。一定のレベルを超えると、初心者用プレイリストには参加できなくなるとされている。

さらに将来的には、スキルの低いプレイヤー向けに専用のマッチメイキングプールを作成する可能性もあるとのこと。こちらの対象は少人数となる見込みで、総プレイヤー数の半分未満の割合を対象として想定されているそうだ。


SBMMに代わる公平性確保

そのほか本作では、MMR(マッチメイキングレーティング)が採用予定。プレイヤーたちのスキルに応じてチームのバランスが調整される、“隠れた(Hidden)”システムになるという。試合においていずれのチームにも勝利のチャンスがあるような、公平性を保つための仕組みとなるそうだ。

現状発表されている内容からは、プレイヤースキルに基づくマッチメイキングシステムという点でSBMMに似ているようにも見える。一方でMMRに基づくチームのバランス調整は、マッチング後におこなわれるという点が違うのかもしれない。先にランダムに選ばれた12人をマッチングさせ、その後MMRに基づいて6人ずつのチームに分ける機能であるとの考えを見せるユーザーもいる。

実際に『エックスディファイアント』のカジュアルプレイのマッチメイキングがどのようなシステムに基づくことになるかはやや不明瞭だ。ただ同モードにSBMMを採用しないと公式が明言していることから、SBMMと一定の差別化が図られるのだろう。


SBMMの問題点

ではなぜ『エックスデファイアント』公式が、ここまでしてSBMMを採用しないと打ち出しているのか。そこには昨今のSBMM採用作品において、ユーザーからさまざまな問題点の指摘や不満がでていることが関係しているのだろう。

たとえばSBMMが採用された一部ゲームでは、スキルの高いプレイヤーに分類された場合にマッチメイクの時間が延びる問題が報告されている。SBMMが設定する基準を満たす上級者が少ない場合、マッチに必要な人数の確保に時間がかかるためだと考えられる。

さらなる問題としては、SBMMではプレイヤーが意図的に負けを重ねて、内部的な「スキル評価」をあえて低下。スキルの低いユーザーたちと強引にマッチングできうることが挙げられる。またSBMM採用タイトルには、直近の試合からプレイヤーのスキルを測っていると見られるゲームもある。そうしたタイトルではスキルの指標を下げるのに、それほど手間がかからないわけだ。「同じスキル評価のプレイヤーをマッチングする」という原理上、対策の行き届いていない作品では、ランクマッチにおけるスマーフ(Smurf)のようなモラルのない行為が、容易にできてしまうわけだ。


そしてSBMMが導入されたゲームでは、カジュアルマッチを“カジュアル”に楽しめなくなるという問題も指摘されている。SBMMの導入によりプレイヤー間でスキルの差が生じにくくなり、プレイヤーたちは実力差の少ない、均質な戦いを続ける傾向となる。またゲームによっては、上述のスマーフのような行為にも遭遇することもある。SBMMの導入によって、カジュアルマッチであっても上級者/初心者入り乱れた気軽なマッチを楽しめない状況を招いている場合はあるだろう。同様の意見はSNS上で散見される。

そうした問題点やユーザーの不満から、実態はどうあれSBMMの“悪評”が広まっている側面はあるだろう。マッチメイキングにおけるSBMM導入の有無については、あえて明言を避けているメーカーもいるかもしれない。『エックスディファイアント』公式がSBMMの不採用を強調したことには、そうした背景もありそうだ。


SBMMの功能

一方でSBMMの導入は、ゲーム開発・運営元にとって有用な側面もあるだろう。たとえば『フォートナイト』では、スキルレベルに応じたプレイヤー同士のマッチングシステムの導入が公表されている。さらに初心者がボットの多いマッチに参加するような仕組みも採用。いきなりスキルの高いプレイヤー同士の戦闘に放り込まれることもなく、ゲームに徐々に慣れていくことができるわけだ。

また『FallGuys』の開発元も、SBMMの導入意図を公式Discordにて明かしたことがある(The Loadout)。開発者はSBMM導入の意図として、初心者にとってゲームを続けやすくするためであると説明。新規プレイヤーにゲーム内での楽しい体験をもたらすことが、ゲームの長期的な成功につながるとの見解を述べていた。

さらにSBMMに対しては、ユーザーからも好意的な意見はある。あるユーザーは、SBMMによって初心者やカジュアルなプレイヤーがゲームに流入しやすい点を評価。もしSBMMがなければプロや上級者と戦って死に続け、心が折れてしまうだろうとの見方を示している。また「上級者がSBMMを批判するのは、スキルの低いプレイヤーを蹂躙して気分を良くしたいからである」との見解を示すユーザーも。初心者やカジュアルなプレイヤーが快適にゲームを楽しむために、SBMMは必要だとする意見は一定数存在するわけだ。

*人気ストリーマーDr Disrespect氏は、SBMMはカジュアルなゲームモードに導入されるべきではないとの意見を語っている。こちらには同氏のキャラクターも相まってか、ユーザーからの反対意見も数多く寄せられている。

長期間のサービスを見込むタイトルでは、新規プレイヤーが流入しやすい仕組みが特に重要といえる。中でも対戦ゲームでは、初心者がゲームを続けられるようなスキルに応じたマッチメイキングシステムも重視されている。そうした施策の一つとして採用されているSBMMは一定の効果は認められているものの、問題点も抱えているのが現状だ。SBMMを導入するにしろ、別の仕組みを採用するにしろ、マッチメイキングシステムをどのように構築するかは今後も各メーカーの課題となりそうだ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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