開発元の告発で揺れた新作アドベンチャーゲーム、関係4社が合意を発表し事態解決へ。告発された販売元PQubeは撤退


パブリッシャーのPQube・Toge Productions・コーラス・ワールドワイドおよびデベロッパーのMojiken Studioは10月14日、Mojiken Studioが開発中のアドベンチャーゲーム『A Space for the Unbound』に関する合意について連名で発表した。本作をめぐっては、Toge ProductionsとMojiken Studioが、提携するPQubeの行為について告発していた。今回、その問題が解決したと報告されている。


まずは本件についての、これまでの経緯を振り返っておこう。インドネシアに拠点を置くToge ProductionsとMojiken Studioは今年8月24日、協力して制作中の『A Space for the Unbound』の発売を無期延期にすると発表。その理由として、本作のコンソール版の欧米向けリリースを担当するPQubeによる行為を挙げた。

両スタジオによるとPQubeは、開発者支援のために提供された資金や助成金を販売元として受け取りながら、その事実を隠してお金を受け渡さなかったという。そればかりかPQubeは、その助成金を使って開発元に支払うミニマムギャランティー(発売前にパブリッシャーから開発者に支払われる前金/支払われた前金はあくまで売上分から相殺される)をあえて高く設定。その代わりとして、PQubeが受け取る本作の収益配分を高く設定していたとのこと。つまりPQubeは、開発者が受け取るべき助成金を使って、不当に多くの利益を得ようと画策したと指摘されている。

こうした行為が判明したことを受けてToge ProductionsとMojiken Studioは、PQubeとは契約解消したとのこと。しかし、PQubeがコンソールプラットフォームにおける販売管理権の返還を拒否したため、本作の発売の目処が立たない状況になってしまったそうだ。

この告発に対しPQubeは弊誌の取材に対して、同社はToge Productionsとのパブリッシング契約における義務をすべて果たし、スタジオが発売延期や困難に直面している期間を含めてサポートしてきたと主張。提供したサポートには、開発・移植・マーケティングを支援するための多額の追加資金の提供も含まれているとし、その金額は(今回問題となっている)助成金を上回るとコメントした。

またPQubeは、Toge Productionsが不条理な契約内容の変更を強いようとしてきたとも主張。PQube側は歩み寄ったものの、契約変更は達成できなかったとし、これが今回の告発の背景にあると示唆した。一方で、提供された助成金の使い込みについては否定しなかった(関連記事)。

告発から約2か月が経って出された今回の声明では、『A Space for the Unbound』のリリースについて、関係するパブリッシャー・デベロッパーの4社すべてが満足できるかたちでの合意をみたと報告。PC版についてはToge Productionsが引き続き販売を担当し、一方コンソール版については、日本版を担当する予定だったコーラス・ワールドワイドが、全世界での販売を一手に引き受けることになったという。すなわち、PQubeは本作から手を引くことになる。

また、PQubeがこれまでに受け取った助成金について、すべてToge Productions側に受け渡されたことも明らかにされた。さらに、本作の販売に関する権利についても、PQubeはToge Productions側に返還するよう努めるとのこと。このほか、今回の合意にあたってはコーラス・ワールドワイドの尽力があった模様で、同社への感謝の言葉も綴られている。

『A Space for the Unbound』は、1990年代後半のインドネシアの田舎町を舞台にするアドベンチャーゲーム。主人公の高校生アトマとラヤは、高校生活が終わろうとするなかで、超自然的な力を手にする。そしてふたりは、町を調べて隠された秘密を解き明かし、やがて世界の終わりと対峙することになるという。

本作は、今年9月に開催された日本ゲーム大賞にてフューチャー部門を受賞しており、ファンからの期待も大きい作品である。今回、関係各社間での合意に至ったことで、ようやくリリースに向けて動き出すことになりそうだ。具体的な配信時期などについては、近日中に発表されるとのこと。また本作は、岐阜県各務原市民公園にて10月22〜23日に開催予定のイベント「全国エンタメまつり(ぜんため)」に、試遊出展される予定である。