PS Storeにて動物を“撫でる”だけの作品が出現、海外向けに増殖中。犬が点滅し、トロフィーの影ちらつく
パブリッシャーのGame Achievements Ltdは今年9月中旬から、『Stroke The Dog』『Stroke The Cat』『Stroke The Hamster』『Stroke The Hedgehog』という4タイトルを、海外PS4/PS5向けに立て続けにリリースした。実は同社は、以前あるタイトルの配信を予告しながら突如取りやめ。今回のリリースを受けて、そのタイトルが“姿を変えて帰ってきた”と、一部で注目されているようだ。海外メディアPlayStation LifeStyleなどが報じている。
『Stroke The Dog』『Stroke The Cat』『Stroke The Hamster』『Stroke The Hedgehog』は、同じテーマをもつシリーズ作品である。ゲーム内の説明によると、何も考えずゆったりくつろぎながらリラックス体験を得られる作品であり、また作中に登場する犬や猫などの動物が好きな人に向けた作品でもあるとのこと。
では具体的にどのようなゲーム内容なのかというと、たとえば『Stroke The Dog』では、紺色の背景の中心に犬が座っている。そしてコントローラーのXボタンを押すと、その犬を撫でることができ、撫でた回数が左上にカウントされていくというもの。“撫でる”とはいっても、主人公の手が出てくるわけではなく、また犬のふさふさの毛並みが揺れるわけでも、犬が何らかの反応を返すわけでもない。ただ、犬の画像がうっすらと点滅するだけである。そしてほかの作品では、犬が猫やハムスター、ハリネズミに差し替えられる。
これらの作品の肝は、トロフィーの獲得に対応していることにある。犬などを撫でた回数によって、計70個のブロンズトロフィーを段階的に獲得でき、そして計2000回撫でるとプラチナトロフィーを獲得できる。獲得条件はどの作品も同じ。つまり、極めて容易かつ短時間でプラチナトロフィーを獲得可能であることが、唯一といっても良い売りとなっているわけだ。ちなみに、価格は各3.99ドル(約580円)である。
本稿冒頭で、開発元は以前あるタイトルの配信を取りやめたと述べた。そのタイトル名は『Press X For Trophies』。リリース前の段階でPS Storeに概要が掲載され注目を集めた。結局配信中止となったため、どのようなゲーム内容であったのかは分からないが、そのタイトル名から「Xボタンを押すだけでトロフィーを獲得できる」という、上に挙げた作品と同じであったことが予想される。
なぜ『Press X For Trophies』が配信中止となったのかは不明。ただ、SIEが懸念を示した可能性はありそうだ。というのも、同作の存在に注目が集まった直後、PS Storeでは同種の作品が明らかに下位に表示されるようになったことが報告されている。先述したようなゲームともいえないような内容の作品が多数リリースされるなか、ユーザーが目的のゲームを探しやすいように、SIEがアルゴリズムを変更したものと考えられている。
もしSIEがそのような姿勢であるならば、シンプルすぎる内容であるうえに、トロフィー獲得目的を露骨にタイトル名でも表現された同作は、さすがに受け入れられなかったのかもしれない。結果的に開発元は、同じコンセプトながらトロフィーには直接言及せず、“動物を撫でる”という内容として複数のタイトルをリリース。SIEは、そうした作品を完全に締め出そうとまでは考えていないということだろうか。
*日本でも配信されている『The Dog K』。犬にクッキーを与えるゲーム、という体で内容は同じ。
実はPS Storeには『Stroke The Dog』などのように、ボタンを一定回数押すだけでプラチナトロフィーを獲得できる作品が多数配信されており、特に海外ではさらに多い。弊誌でも以前、料理の画像がジャンプするだけの作品群を紹介した(関連記事)。
ゲーマーのなかには、トロフィーや実績の収集を主目的にプレイしている層が存在する。そうしたプレイヤーからの需要が一定数あるために、同様の作品がさまざま制作されているのだろう。同じメーカーが、一部のアセットとタイトルを変更し別タイトルとしてリリースし続けている例が多く、コストをかけず乱発している様子もうかがえる。
そのような粗製濫造に対しては、一部では批判的な意見も聞かれる。明らかに低品質な作品で溢れるストアは健全とはいえない側面があり、また先述したようにストアの閲覧性の質にも影響を及ぼすためだ。ただ現状では、各社からのリリースは続いている。PS Storeにてこうした作品が目に見えて増加してきたのは、今年に入ってからの模様。SIEとしては、先に紹介したストア内での表示順の調整にて様子を見ているところなのかもしれない。