脱力トロンボーンゲーム『Trombone Champ』が愛と注目を集める。音程が外れた方が楽しい、問題児系リズムゲーム

デベロッパーのHoly Wowは9月16日、トロンボーンリズム音楽ゲーム『Trombone Champ』を発売した。対応プラットフォームはPC(Steam)。発売から間もない本作は、海外のメディアやSNSで妙な注目と愛を集めているようだ。

デベロッパーのHoly Wowは9月16日、トロンボーンリズム音楽ゲーム『Trombone Champ』を発売した。対応プラットフォームはPC(Steam)。発売から間もない本作は、海外のメディアやSNSで妙な注目と愛を集めているようだ。

『Trombone Champ』は、リズム音楽ゲームだ。プレイヤーはトロンボーン奏者として、さまざまな楽曲を演奏する。操作としては、左クリックまたはキーボードの任意の文字キー/スペースキーを入力すれば、トロンボーンを吹ける。マウスでポインターを上下させれば音程がスライド、画面右から流れてくる譜面に音程を合わせてトロンボーンを演奏するのだ。吹き続けると息切れするシステムも存在するため、吹きっぱなしで音程合わせのみに集中する、といった攻略法はとれない。

先週リリースされたばかりの本作は、さっそく海外メディアやTwitterユーザーから注目を集めているようだ。PC Gamerは「世界初のトロンボーンリズムゲームは、発売後すぐさまGOTY候補になった」という見出しで記事を投稿。執筆者であるChristopher Livingston氏がプレイ動画と共に、本作の魅力を熱弁している。

Livingston氏は記事内のゲームプレイ映像にてベートーヴェンの交響曲第5番を演奏。プレイ動画を見ていただければわかるように、同氏のプレイ映像は失礼ながら調子外れなメロディーを奏でている。同氏は自身の演奏を、ベートーヴェンが墓から飛び出して叫びながらゲロを吐くような酷さだと形容。そこまで酷いかどうかは読者の判断にお任せするが、たしかに立派な演奏とは言い難い。


一方Livingston氏によれば、本作のゲームプレイは下手な演奏でも上手な演奏と同じくらい楽しいのだそうだ。筆者も実際に本作をプレイしてみたところ、同氏に負けず劣らず素っ頓狂なメロディーを奏でることになった。しかしながら、たしかに楽しい。調子外れなメロディーを、やたらとノリノリで踊りながら演奏するキャラを見ていると自然と笑みがこぼれてしまう。

リズム音楽ゲームにおいて、ミスをすると綺麗な音が鳴らない、あるいは失敗音が再生されるのは一般的なシステムだ。しかし、失敗時にここまで外れた音が鳴るゲームは珍しい。しかも調子外れな音は前後の演奏とシームレスにつながり、滑らかにおバカなメロディーを形成していく。Livingston氏の説明するように、失敗を重ねても楽しさが担保されているわけだ。

そもそも本作のコンセプトとして、一定の譜面や評価はあるものの、プレイヤーは好きな時に好きな音を出していいとされている。ただ譜面にそって高得点を目指すのではなく、「プレイヤーが実際に音楽を奏でる」ゲームを標榜しているわけだ。つまり、音程はプレイヤーの操作に対してあくまでも正確。脱力モノの音はすべてプレイヤー自身の操作・演奏によって奏でられるのである。


くわえて本作では、多彩なおバカ要素がメロディーと共に畳みかけてくる。演奏の途中から、曲目に合わせた癖の強い背景が展開し、慣れないうちは否が応でも目を奪われる。そうすると譜面のミスがかさんで、さらに摩訶不思議な演奏が展開してしまうのだ。そもそも収録曲や譜面からして何かがおかしい。トロンボーン向けではないと思われるほどハイテンポな曲や、なぜか打楽器の音をそのまま吹く譜面など、おバカ演奏になってしまうのは仕方ない要素もある。一方で経験を積んで、かつ操作を笑いで乱さなければハイスコアを伸ばすことも可能。まともに演奏不能な譜面が用意されているわけでもない。そしてもしかすると、音程の操作を極めれば、かっこいいアドリブ演奏も可能なのかもしれない。

なお本作はSteamユーザーレビューにおいて本稿執筆時点で、295件中96%が好評とする「非常に好評」のステータスを獲得。レビューでは笑いすぎてお腹が痛いといった感想や、自称ベテラントロンボーン奏者による賛辞が寄せられている。日本語レビューでは本作を「オタマトーン」に例える投稿も。オタマトーンとは、国内芸術ユニットである明和電機が生み出した、調子外れな旋律が特徴の可愛らしい電子楽器のこと。たしかに本作で失敗を続けた際の特徴的なメロディーは、オタマトーンの演奏に似ているかもしれない。また、本作との共通点としては無段階で音程が操作できる。そこがふわふわした脱力メロディの源になっている可能性はあるだろう。

なお本作の収録楽曲は20曲。映画などでお馴染みの「ツァラトゥストラはかく語りき」など、聞き覚えのある楽曲がラインナップされている。今後のロードマップも公開中。さらなる楽曲が追加されていくほか、アクセシビリティなど遊びやすい改善が実施されていくそうだ。

ちなみに本作のストアページ説明では本作の売りとひとつとして、「だいたいどの画面でもヒヒ(Baboons)が登場する」点を挙げている。ヒヒとは動物でいうところのヒヒである。たしかにさまざまなゲーム内要素にヒヒが見られ、設定にはヒヒの量や種類を調節可能な項目も存在。また、謎めいたヒヒのメニュー項目も用意されている。なぜヒヒなのか。開発元によれば、真のTrombone Champだけがヒヒの“真の意味”を暴くことができるという。頑張ろう。


『Trombone Champ』はPC(Steam)向けに配信中だ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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