新作ホラーゲーム、Steamにて「圧倒的好評」も“逆レビュー爆撃”の疑い。人気配信者ファンが集うレビュー欄

Steamにて9月15日、新作ホラーゲーム『The Death | Thần Trùng』が発売された。本作はさっそくSteamユーザーレビューにて「非常に好評」ステータスを獲得。しかしその評価には、作品の質ではなく制作者の人気が反映されているとの疑惑がかけられているようだ。

Steamにて9月15日、新作ホラーゲーム『The Death | Thần Trùng』が発売された。開発したのは、ベトナムを拠点とする小規模スタジオDUT Studioだ。同作はインディー作品としてはかなり好調な滑り出しとなり、Steamユーザーレビューでは一時「圧倒的に好評」ステータスを獲得。記事執筆時点では「非常に好評」ステータスとなっている。しかしその好評には、作品の質ではなく制作者の人気が反映されているとの懸念、いわば“逆レビュー爆撃”疑惑がかけられているようだ。


『The Death | Thần Trùng』は、一人称視点ホラーゲームだ。2021年のベトナム・ハノイ市を舞台に、普通の若者が恐ろしい出来事に巻き込まれていく。ジャンルとしてはサイコホラーとされているほか、アイテムを収集しての謎解きなどの要素も。現地の風土が反映されたマップデザインや、ベトナム語で収録された音声セリフなど、ベトナムの文化が色濃く表現されいるのが特徴だ。

本作はSteamにて9月15日にリリースされ、好調な滑り出しを見せた。リリース直後にはピーク時の同時接続プレイヤー数が約2900人を記録。評価としても、記事執筆現在で2000件以上のユーザーレビューが寄せられ、そのうち94%が好評を投じる「非常に好評」ステータスとなっている。ただし、本作に触れたユーザーのなかには「この評価が正当かどうか」について疑問を抱く者もいるようだ。というのも、本作開発元DUT Studioを構成する開発者それぞれが、相当な人気を誇る動画配信者なのである。

まず、DUT Studioは「3人のベトナム人による小さなインディースタジオ」と説明されている。開発者としてはDung CT氏 、Vũ Hay Ho氏、 Đạt OC氏の3人が在籍しているようだ(GenK.vn)。まずDat Oc氏については、Facebookにて11万人以上にフォローされるゲーム動画クリエイターである。続いてVũ Hay Ho氏については、YouTubeにて13万人のチャンネル登録者を誇っている人物だ。そしてDung CT氏に至っては、同じくYouTubeにて31万人が登録するチャンネルを運営する人気者だ。


そうした背景もあってか、本作のSteamレビューはとにかくベトナム語の比率が高い。その数たるや、総レビュー数の半数に迫る966件となっている。また、その内訳としても、筆者計測時点で好評が937件、不評が29件、すなわち97%が好評を投じており、ベトナム語の結果だけでいえば「圧倒的に好評」相当となる。つまり、3名の開発者が人気を誇っているベトナムのユーザーたちから、評価的な追い風が吹いているのは間違いないといえるだろう。

ほか言語においては、こうした状況に疑問を投じるレビューも投稿されている。たとえば、ゲームの有志翻訳やレビューなどの活動をしている朝比奈氏は、本作Steamユーザーレビューにて上述のような開発者そのものの人気に言及。ファンによる評価が、ゲームのレビュー評価を押し上げるバイアスに繋がっている可能性などを指摘している。また、日本語翻訳が機械翻訳と思われる点なども、日本語ユーザーには気になる点だ。筆者も実際に本作をプレイしてみたものの、モーション演出の粗さや、操作の不親切さなどが目につく印象。高評価に見合う作品かどうかは疑問といえる内容だった。


一方で、それでも本作が94%好評との評価を守っている背景には、本作がゲームとしてある程度完成されている点があるだろう。また、街並みや3Dモデルなどには、ベトナムの雰囲気を表現するためのこだわりも感じられる。「人気配信者が作った」「ファンが好評を後押ししている」という事情自体は事実であるものの、ゲーム自体も一定のクオリティに仕上げられているわけである。そのため、「本作は過大評価されている」としつつも、作品の出来自体は認めて好評を投じるユーザーレビューも散見される状況だ。

『The Death | Thần Trùng』はPC(Steam)向けに現在配信中。価格は620円。本作の好調な滑り出しの背景に、開発者自身の人気による後押しがあった可能性は濃厚だ。しかし、本作の「非常に好評」ステータスが過大かどうかは、プレイヤー各々が触れて確かめるしかないだろう。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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