『天穂のサクナヒメ』に影響され“本格稲作”始める人現る。現実からゲーム、ゲームから現実へ。いもち病は境界を超える

『天穂のサクナヒメ』への憧れから米作りを始めたユーザーが、田んぼの様子をTwitter上に投稿。開発者も反応を示し、注目を集めているようだ。弊誌は『天穂のサクナヒメ』に触発された米作りの詳細について、投稿者に話を聞いた。

『天穂のサクナヒメ』への憧れから米作りを始めたユーザーが、田んぼの様子をTwitter上に投稿。開発者も反応を示し、注目を集めているようだ。弊誌は『天穂のサクナヒメ』に触発された米作りの詳細について、投稿者に話を聞いた。

『天穂のサクナヒメ』は、2020年11月12日に発売された稲作アクションRPGだ。対応プラットフォームはPC/PS4/Nintendo Switch。えーでるわいすが開発を手がけている。本作には探索/戦闘パートと稲作パートが存在しており、稲作パートでは種籾選別から始め、土を耕し田植えをし、水や肥料をやりながら米を育て続ける。十分に育ったら稲穂刈り。稲架掛けし、脱穀した後籾摺りし、無事に米が完成する。それぞれの作業が没入感の高い操作および演出になっているほか、稲に関する幅広い病気が登場。高い完成度の米を作るにはそれぞれの工程において、水温や気温をしっかりと管理する必要がある。

そして、このたび本作への憧れから米作りを始めたという人物が現れた。それがプルーw氏だ。プルーw氏は9月18日に田んぼの様子を投稿。ゲームの影響で始めた農業とは思えないほど、田んぼの規模や稲の成長具合が本格的だ。もうすぐ収穫を迎えるという稲は青々と茂っており、実った穂がふくよかに育っていることを予感させる。ユーザーたちもこの投稿に注目しており、応援するコメントが寄せられている。えーでるわいすのなる氏もそのツイートを引用。米作りを始めたファンが現れたことへの、驚きと嬉しさを伝えている。

プルーw氏はユーザーからの質問に答えるかたちで、自身がまったくの素人から米作りを始めたことを伝えている。一方で同氏は、田植え直後の写真も投稿。写真を見れば稲が当時に比べて大きな成長を遂げていることがわかる。『天穂のサクナヒメ』に触発されて始まった同氏の米作りは、収穫に向けて順調な道筋を歩んでいるようだ。そんな同氏にとって『天穂のサクナヒメ』は人生のバイブルでもあるという。弊誌はプルーw氏に詳しい話を聞いた。

『天穂のサクナヒメ』では、米作りに関する描写が数多く存在する。その中で、プルーw氏が米作りを思い立つ決め手になったのはどこなのだろうか。同氏によると、稲の一本の株が分けつによって数本に増えていく様子の美しさが決め手のひとつだったという。さらに出穂時の感動を、自分の手がけた稲でも味わってみたいという想いも、米作りを始めようという気持ちを後押ししてくれたようだ。


プルーw氏によると、この田んぼは休耕田になっていた友人の土地を耕して利用しているとのこと。トラクターや田植え機についても、友人のものを使っているそうだ。休耕田や農業機械を利用した、本格的な米作りがおこなわれているようである。なお同氏は米作りを始める前に、本業の休日を利用して廃屋のリフォームや畑、田んぼの整地などを手がけてきたそうだ。全員が素人の状態から始まった事業とのことで、苦労も多々あったという。そうして得た耕地に関するノウハウも、今回の米作りには活かされているのだろう。
【UPDATE 2022/9/20 20:00】
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一方で、『天穂のサクナヒメ』で得た知識にも実際の米作りに役立つ情報があったそうだ。それは、稲が稲熱(いもち)病になってしまう条件と中干しの大切さだという。いもち病とは、カビが原因で引き起こされる、稲の葉に茶褐色または灰白色の病斑が生じる稲の病気。ほとんどの葉を枯らしてしまう、稲穂に感染して米が実らなくなる、といった重大な病害を引き起こす可能性もある。本作をプレイしたユーザーならば、おそらくこのいもち病に遭遇したことがあるだろう。

いもち病の主な原因として稲の成長期となる夏の気温の低さ、および雨や曇りの日の多さによる日照不足が関係するとされている。プルーw氏はそうしたいもち病の原因を『天穂のサクナヒメ』から学び取ったそうだ。本作でのいもち病も、夏の日照不足・低温・多雨などが原因となる病気であった。現実に則した現象が緻密にゲーム内に再現されていたわけだ。

中干しについてもゲームの知見が生かされている。中干しとは、夏のもっとも暑い時期に田んぼの水を抜き、土にヒビが入るまで乾かす作業だ。稲の根を強くする、土中の有害ガスを抜くなど、稲の成長を調節するさまざまな効果が期待できるという。ただし、やりすぎは禁物。土に大きなヒビが入るまで乾かすと、稲の根が切れたり土の保水性が悪くなったりといった逆効果を招く可能性もあるそうだ。『天穂のサクナヒメ』においての中干しはというと、三次分けつ期におこなうと稲の品質が上がる工程だ。こちらも現実と同じく、やりすぎると米の品質を損なうという仕様。お米ができあがる寸前の作業で、天候を見ながらいつまで干すべきか悩むことだろう。本作の稲作においては重要な部分。ここにも現実の米作りのコツが反映されており、そしてその知識が現実の稲作に使われているのだから面白い。


とはいえ、ゲームの知識だけではもちろん現実の米作りを乗り切ることはできないだろう。プルーw氏の初の米作りにおいて、もっとも苦労したエピソードについて訊いた。同氏によれば、田んぼの雑草防除はもっとも大変な作業になったという。というのも、一般的に田植えのすぐ後に使われる除草剤である初期一発除草剤を使わなかったため、雑草が生い茂ってしまったそうだ。結果として中期除草剤の使用だけでなく、手作業での雑草取りが必要になったとのこと。出穂前にもイボクサが生い茂っていたそうで、上の写真のような順調な育ち具合は良い意味で同氏の予想を裏切る結果となったようだ。

また米作りを始めた際には、プルーw氏は大腿骨を骨折して入院中だったようだ。その間、種籾から苗に育ててくれたのは友人なのだという。同氏は今回の米作りは自身一人ではなしえなかったと語っており、友人への感謝を述べていた。なお、昨日から本日9月20日にかけては台風14号が日本列島を通過。上記のツイートにおいてプルーw氏は、田んぼへの台風の影響を憂慮していた。本日のツイートによれば、田んぼの稲は少し傾いたものの無事な様子とのことなので、安心されたい。

天穂のサクナヒメ』への憧れから、現実で本格的な米作りを始めたプルーw氏。困難を伴いながらも、順調に美味しいお米が育ちつつあるようだ。米作りの際にゲームでの知見が活きる場面もあったというのは、本作の米作り描写の細やかさを改めて思い知るところ。現実の現象がゲーム内に再現され、そのゲームによって現実の稲作がなされている。なんとも不思議な流れであるが、不思議な循環ができているのも、『天穂のサクナヒメ』の稲作要素の完成度の高さがあってこそである。

なお、お米の品種はあきたこまちで収穫は今月末に見込まれているとのこと。同氏によると『天穂のサクナヒメ』のもっとも好きな部分は「脱穀、籾摺りが終わって新米が完成した瞬間」だという。米の出来がサクナのステータスに反映され、強くなったと感じられるからだそうだ。台風の脅威を乗り越え、新米の完成まであと少し。同氏が丹精込めて作ったお米は、特別な夕餉を飾ることだろう。



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Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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