テンセントがUBI関連企業に対して約430億円の増資。中国ゲーム市場への“IP輸入”を狙う戦略か

ユービーアイソフトは9月6日、中国のIT大手テンセントがGuillemot Brothers Limitedへの出資を約3億ユーロ(約430億円)増額したことを発表した。Guillemot BrothersはユービーアイソフトCEO兼共同創業者であるYves Guillemot氏による企業だ。

ユービーアイソフトは9月6日、中国のIT大手テンセントがGuillemot Brothers Limited(以下、Guillemot Brothers)への出資を約3億ユーロ(約430億円)増額したことを発表した。Guillemot BrothersはユービーアイソフトCEO兼共同創業者であるYves Guillemot氏による企業だ。


発表によると、テンセントはGuillemot Brothersの49.9%の株式および5%の議決権を取得。出資額としては約3億ユーロになると伝えられている。なおテンセントが、Guillemot Brothersの事業に関する同意権や拒否権を取得することはないとされている。

さらにテンセントはGuillemot Brothersに対し、長期の無担保ローンを提供。これにより、デリバティブ取引によるものを除く債務の借り換えをおこなうほか、Guillemot Brothersがユービーアイソフトの株式を取得するために使用できる追加の財源を提供するという。

また発表では、ユービーアイソフトの創業投資家グループ(Ubisoft founders’ concert)にテンセントが参入した旨が伝えられている。ユービーアイソフト取締役会は、テンセントの同社への直接の株式保有率および議決権について、現在の4.5%から9.99%への引き上げる権利を承認。また創業投資家グループ全体でのユービーアイソフト株式保有率および議決権については、最大29.9%まで引き上げてもよいと定めた。

なお今回の取引後には、同投資家グループ全体でのユービーアイソフト出資比率は19.8%。議決権は24.9%となる。一方でテンセントは、ユービーアイソフトの株を5年間売却できず、8年間は株式保有率および議決権が9.99%を超える出資をおこなうことはできないと伝えられている。

今回の取引に際してYves Guillemot氏は、テンセントの参入によるユービーアイソフト創業投資家グループの拡大は、同社の創業者を中心とした株式保有をさらに強化するという点を強調。同社の長期的な発展に不可欠な安定性を会社に提供するものであると述べた。さらに同氏は、今回の取引によって同社は今後数年間にわたって強力な価値を生み出す能力を高められたとの見解を示している。

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今回の取引については、テンセントが中国ゲーム市場において、ゲームライセンス申請・承認の滞りなどに苦心しており、ユービーアイソフトのIPを中国内に持ち込むことでそうした滞りを相殺する狙いがあるとの見方もあるようだ(Reuters)。なお両社がかねてより結んでいる戦略的パートナーシップの内容には、ユービーアイソフトの主要フランチャイズを用いたモバイル向けタイトルの開発や、同社PCタイトルの中国でのローンチも含まれている。

先日にはフロム・ソフトウェアが、テンセントの子会社であるSixjoy Hong Kong Limitedおよびソニー・インタラクティブエンタテインメントから約364億円の資金を調達したばかり(関連記事)。自国の市場展開に苦しむテンセントには、国外メーカーと協力のもと自国に新たなIPを“輸入”していく戦略があるのかもしれない。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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