パブリッシャーPQubeが、またも提携開発元から告発される。契約上の支払いを履行せず、トラブルについて口止めしようとしたとも【UPDATE】
タイ・バンコクに拠点を置くデベロッパーCorecell Technologyは9月1日、Twitter上にて声明を発表。パブリッシャーのPQubeを告発する内容となっている。
Corecell Technology(以下、Corecell)は、アクションゲーム『AeternoBlade』シリーズなどで知られるデベロッパーだ。2019年にリリースされた『AeternoBlade II』のコンソール版ではPQubeと提携し、同社が販売を担当している。
Corecellは『AeternoBlade II』における契約について、PQubeはミニマムギャランティー(発売前にパブリッシャーから開発者に支払われる前金/支払われた前金はあくまで売上分から相殺される)をCorecellに支払うことで合意したとコメント。そのお金は、開発マイルストーンを達成するたびに分割して支払われる契約だったようだ。ただCorecellは、PQubeはそのごく一部についてのみ支払い、残りのマイルストーン分については現在も支払っていないと主張している。
Corecellは、問題を解決するためPQubeと交渉したものの、合意には至らなかったという。そのため、2020年9月に販売契約を打ち切る決断をおこなったとのこと。ただ、PQubeは各コンソールでの販売を管理する権利を引き渡さず、その後も『AeternoBlade II』からの利益を得ていたとしている。結果的に、PQubeは販売管理権の引き渡しに応じるとしつつ、その条件として、本件について口外しないよう求めてきたという。
今回の告発に先立っては、インドネシアに拠点を置くMojiken StudioとToge Productionsが、8月24日に同じくPQubeについて告発していた。両スタジオはアドベンチャーゲーム『A Space for the Unbound』のコンソール版の、欧米での販売についてPQubeと契約。その提携関係のなかでPQubeは、開発支援のために支出されたある助成金を受け取り、その事実を両スタジオに隠しながらミニマムギャランティーをあえて高く設定し、自らの収益配分を高めていたとして糾弾された(関連記事)。
今回の声明にてCorecellは真実を語る時が来たと述べており、上述の告発が、(口止めされていたものの)自らの経験を語るきっかけになったようだ。同スタジオは、PQubeとはもう仕事をするつもりはないが、小規模なデベロッパーであるため、他国で裁判を起こすような金銭的余裕はないとコメント。そこで、各コンソールプラットフォームホルダーに、販売管理権をCorecell側に移すよう求めたそうだ。
現時点では、任天堂とSIEがCorecellの求めに応じて、欧州での『AeternoBlade II』の販売を停止させている段階とのこと。そのため同スタジオは、まだ欧州からの売り上げは一切懐に入っていないと述べている。
Corecellは、この3年間は辛い時期であったと振り返る。そして、ほかのインディー開発者が同じようなトラブルに巻き込まれないように、また同スタジオが置かれた現状をファンに知ってもらうために、今回告発をおこなったそうだ。そして、告発の目的はそれだけであり、PQubeに対してネガティブであったり害を与えるような行動はしないでほしいとファンに呼びかけた。
なおPQubeは、前回のMojiken StudioとToge Productionsによる告発に際しては、PQube側は契約義務をすべて果たしたと反論。むしろToge Productions側がPQubeに不条理な契約内容変更を強いようとしてきたとの声明を、メディアを通じて発表している。
【UPDATE 2022/9/3 11:49】
PQubeは9月2日、今回のCorecellによる告発に関して、海外メディアEurogamerなどを通じて声明を発表した。両者が販売契約を結んだ『Aeternoblade II』の欧米向けコンソール版についてPQubeは、複数の延期と品質上の問題があったものの、Corecellの求めに応じるかたちで2019年10月にリリースしたとコメント。その後Corecellは同作の品質問題について認識し、商業的に採算がとれるように問題の修正に取り組むことで合意したが、修正はおこなわれず、連絡が取れなくなったと主張した。
PQubeは、同作は評価も売り上げも非常に低かったものの、フルギャランティーを支払う用意をしつつ、両者の合意に基づくオプションとしてPC版の販売を視野に入れていたという。ただCorecellは、PQubeと協議することなく、自らPC版をリリースしたとのこと。
Corecellが告発文にて言及した、コンソールプラットフォームでの販売管理権の移管については、PQubeは両者の契約が終了するずっと前に実行されていたと主張。PQubeは2年間にわたり、Corecellの要望に沿って権利を変換するための提案を続けてきたものの反応はなく、Corecellのコミュニケーションの欠如を指摘した。そのうえで、今後もCorecellをサポートしていく考えを示している。
今回、アジア圏のデベロッパーからの告発が相次ぐかたちとなったが、前回のMojiken StudioとToge Productionsとの一件と同じく、両者の主張に食い違いが多い内容となっている。またPQubeは、Corecellが告発したミニマムギャランティーの未払いや、トラブルについて口止めをしたことが事実か否かについては明言を避けた。それぞれのファンにとって、何が真実か分からず困惑だけが残る状況となっている。