ウクライナ拠点スタジオが「実物榴弾にメッセージ」キャンペーン実施し物議醸す。砲弾ごと“招かれざる客に届ける”と兵士が語る
デベロッパーのFrogwaresは9月1日、現在実施中の新作『Sherlock Holmes The Awakened』のKickstarterキャンペーンが、あと数日で終了するとTwitterにて報告した。同キャンペーンは、現時点で初期目標金額の約34倍の出資金を集めており、すでに大きな成功を得ている。
そして当該ツイートにおいて同スタジオは、「友人たちがKickstarterキャンペーンを支援してくれる」として、Twitter上である企画を開始。その内容が物議を醸している。
Frogwaresはツイートに、「第24独立突撃大隊」に所属しているという兵士たちのメッセージ映像を添付している。映像では、榴弾砲らしき兵器に腰掛けた兵士が、榴弾にメッセージを書き込んで同スタジオをサポートできると案内した。
そして同スタジオは、当該ツイートをリツイートおよびいいねすると、抽選で3名が、152mm榴弾にメッセージを書き込めるキャンペーンを開始。どのようなメッセージを書き込むも自由ではあるが、事前に同スタジオの審査を経ることとなる。また当選者には、実際に兵士たちがメッセージを書き込んだ榴弾の写真が送られるとのこと。
この映像で特に注目すべきは、メッセージが書き込まれた“特別便(榴弾)を、招かれざる客に届ける”と、兵士が述べている点だろう。Frogwaresはウクライナに拠点を置くスタジオであることから、この兵士たちはウクライナ軍に所属しているものとみられる。すなわち、現在同国に侵攻しているロシア軍に向けて、メッセージ入り榴弾を撃ち込むつもりであると示唆しているのだ。
Frogwaresのこのツイートに対しては、榴弾に書き込みたいメッセージが返信されるなど、同スタジオへの支持を表明する投稿がいくつかみられる。その一方で、批判的な意見も少なくない。メッセージが書き込まれた榴弾によって誰かが死ぬ可能性があり、そうした行為にファンを巻き込むような企画をおこなうことへの批判だ。
また「(企画の実施について)冗談だろ?人を殺したりするかもしれない兵器だぞ?」と困惑を伝える人や、暴力を助長するツイートであるとしてTwitter社に報告したというユーザーもいる。
今回の企画は確かに物騒な内容であり、「シャーロック・ホームズ」のゲームシリーズを手がけ多くのファンをもつゲームスタジオの企画として考えるとショッキングである。批判あるいは困惑の声が上がるのは、ある意味当然かもしれない。
Frogwaresは、ロシアがウクライナに侵攻して以降、国内の被害の様子や、反撃するウクライナ軍の動向などについて連日ツイートし、自国へのサポートを呼びかけてきた。そうした発信のなかでは、ロシアに対する敵意を表すことも珍しくない。また、スタッフのなかには従軍したり、支援活動に従事したりするために、一時的に仕事を離れている者もいるとのこと。
一連のツイートには、実際に戦火のなかでの生活を強いられている、同スタジオスタッフの本音が綴られている。そうした背景を知ると、今回の企画は単なる“悪趣味なジョーク”ではないことがうかがえる。そのため批判一辺倒ではなく、支持する人や困惑する人も相次いでいるのだろう。
なお、現在同スタジオが開発中の『Sherlock Holmes The Awakened』は、2007年発売の同名タイトルのリメイク版だ。Frogwaresが手がけてきた「シャーロック・ホームズ」のゲームシリーズの最新作であり、「クトゥルフ神話」の世界観を組み合わせたホラー探偵アドベンチャーゲームとなる(関連記事)。
本作のKickstarterキャンペーンは、日本時間の9月3日に終了予定だ。初期目標金額7万ユーロのところ、現時点でその約34倍となる23万7000ユーロ(約3300万円)の出資金を集めており、設定されたストレッチゴールはすべて達成。それを超えた分の出資金については、同スタジオおよびスタッフの安全の確保と強化のために使うと説明されている。