『Prey』(2017)開発者、「Prey」というタイトルをつけたくなかったと明かす。今もなお拭えない苦しみ
スリラーFPS『Prey』の2017年版は、開発陣が望まないタイトルを授けられ、世に出たようだ。開発元の創設者が明かしている。海外メディアKotakuなどがが伝えるところによると、同作に2006年発売の『Prey』の名が冠された背景には、Bethesda Softworks側の意向があったのだという。
『Prey』は、Bethesda Softworksが2017年にリリースしたSFスリラーFPSゲームだ。開発を担当したのは、同社と同じくZeniMax Media傘下のArkane Studios。『Dishonored』シリースなど、近接戦闘やRPG要素を盛り込んだFPSゲームで人気を博している開発元である。『Prey』についても、閉鎖された宇宙ステーションのなか、あらゆる手段を駆使して生き残っていくゲームプレイが描かれた。各所のユーザーレビュー評価なども高い、人気作品のひとつである。
しかし、『Prey』のタイトルについて、開発メンバーの多くが納得していなかったという。明かしたのは、同作クリエイティブ・ディレクターを務めたRaphaël Colantonio氏。同士はArkane Studiosの創設者でもあり、現在はスタジオを離脱・独立してWolfEye Studiosを率いている。同氏は8月29日、インテラクティブ芸術科学アカデミー(AIAS)のPodcastに出演。その中で、『Prey』とのタイトルがBethesda Softworksの要請によって、開発陣が望まないままにつけられた名前だったことを示唆している。
まず背景として、本作は2006年発売の同名FPSゲーム『Prey』のタイトルを受け継いでいるのである。そちらを開発したのは、Human Head Studios。現在解散済みで、Bethesda Softworks傘下にて実質的な後継スタジオRoundhouse Studiosとして活動中だ。同スタジオが開発した2006年版『Prey』も、SF要素を盛り込んだFPSゲームだった。ただ、一致しているのは「エイリアンの侵略」などの要素に限られる。
また、設定についても大きく違う上、2017年版との繋がりは希薄だ。2006年版『Prey』の設定としては、主人公となるネイティブ・アメリカンの青年トミーが、動物や先祖のスピリットパワーを借りてエイリアンの侵略を阻む物語となっている。ホラー描写や残酷要素も盛り込みしつつ、どちらかといえばハイテンションなゲームプレイが展開される作風だった。つまり、Arkane Studiosの2017年版『Prey』は、実質別タイトルであるにも関わらず、なぜか名前だけを2006年版『Prey』から借りてきているかたちなのである。
こうした状況の背景には、初代『Prey』本編が続編を示唆しつつ終わった点や、『Prey 2』の開発中止なども関係しているかもしれない。しかし、2017年版『Prey』を手がけたColantonio氏および一部開発スタッフにとって、名前を受け継ぐのは不本意だったようだ。Podcastにて同氏は、「自身を含め多くのスタジオスタッフたちが、『Prey』という名前をそのまま受け継ぐのは“気持ち悪い”と感じていた」と告白している。
というのも、Colantonio氏や当時の開発者らが感じていたのは罪悪感や違和感だったようだ。同氏は、タイトルをそのまま受け継ぐことについて、2006年版『Prey』の開発者を侮辱するような行為であるとさえ感じていたと伝えている。そのため、同氏は何度も2006年版の開発者に謝ろうとさえ思ったとのこと。しかし、接点がないため断念したそうだ。Colantonio氏や同スタジオ開発者らが初代『Prey』をリスペクトしていたがゆえに、別のコンセプトの開発作品に名前を流用することに拒絶感があったのだろう。
Colantonio氏は続けて、『Prey』とのタイトルが2006年版を知るユーザーにとってはミスリーディングであり、作品自体にも合っていなかったと分析している。同氏は『Prey』とのタイトルが、具体的にどのように2017年発売の作品に冠されることになったのか明白にはしていない。しかし、会話の文脈や状況からすれば、Bethesda SoftworksおよびZeniMax Mediaなどが主体となりその使用を決定したと解釈できるだろう。
一方で、Colantonio氏はBethesda Softworksとの協力について、ポジティブな影響も多分にあったとしている。『Prey』の開発にあたっても、Colantonio氏を信じて多大な開発資金を預けてくれたと振り返っている。『Prey』というタイトルが冠されてしまった件はともかく、Colantonio氏ならびにArkane Studiosが作りたい作品をしっかり作れる環境は、提供されていた様子だ。
そんなColantonio氏は現在独立してWolfEye Studiosを設立。同スタジオからはアクションRPG『Weird West』が今年3月31日にリリースされている。こちらはタイトル含め、Colantonio氏納得の上で開発されていると考えてよいだろう。