ゲームクリエイターの今村孝矢氏は8月17日、任天堂の作品が他社スマホアプリの広告に無断で使用されていることを指摘した。自身が任天堂在籍時に携わった『STEELDIVER SUBWARS(スティールダイバー サブウォーズ)』のゲーム画面が使用されているようだ。
『スティールダイバー サブウォーズ』は、任天堂が2014年にニンテンドー3DS向けに 発売した、『スティールダイバー』シリーズの2作目となる。実際の潜水艦さながらに海中の敵をソナーで索敵し、魚雷攻撃で撃沈させていく潜水艦アクションだ。水中戦ならではの緊張感と、撃沈させることによるゲームならではの爽快感が楽しめる。ゲーム内にはオンラインプレイでの対戦モードに加え、さまざまなミッションに挑戦するシングルプレイが用意されている。
今村氏は本作においてディレクターを務めた人物。任天堂に入社して32年間、ディレクターのほか、アートディレクター、プロデューサーなどさまざまな分野で幅広く活躍していた。2021年に任天堂を退職し(関連記事)、現在は大阪国際工科専門職大学の教員をしながらフリーランスで活動している。
今村氏が指摘した画像を見るに、これはスマホアプリゲーム内で展開される広告動画だろう。内容としては、スマートフォン向けに配信されているゲーム『戦艦ファイナル~ステート.io』の広告のようだ。
『戦艦ファイナル~ステート.io』は駆逐艦や空母などを指揮して海戦を繰り広げていく海戦ストラテジー。自分の基地を拡充しながら、艦隊を編成して海賊や敵艦隊を撃沈させていく。運営元はSpecial Gamez/Magic Prime Group Limited。『戦艦ファイナル~ステート.io』のほかにカジュアルなパズルゲーム『パズにゃん』も配信している。なお同社は中国を拠点としているようである。
今回問題となっている『戦艦ファイナル~ステート.io』には潜水艦も登場しており、今村氏が無断使用を指摘した該当のシーンは、その紹介に使用されたものと思われる。『スティールダイバー サブウォーズ』と『戦艦ファイナル~ステート.io』は、海戦という共通点はあるが、前述したとおり潜水艦で戦うアクションと艦隊を編成して戦う海戦ストラテジーと、それぞれのゲームプレイはまったく別物だ。今回はまったくジャンルの違うゲームの広告の素材として『スティールダイバー サブウォーズ』が無断使用された形だ。
スマホアプリの広告は基本無料のゲームアプリ内をはじめ、YouTubeやTwitterのPRなどでも目にすることが多い。その中には実際のゲームには出てこないようなシーンやモチーフを用いて、広告を見た人々の興味を誘うものもある。今回のような他社作品のゲーム画面を、宣伝素材のように使用しているケースもいくつか見られる。
実際のところ、『戦艦ファイナル~ステート.io』においては、『Battlefield 2042』からの無断使用と思われる広告動画の存在も指摘されている。同作の広告展開において被害を受けているゲームは『スティールダイバー サブウォーズ』だけではなさそうだ。
TwitterやYouTubeにはPR動画に対して報告する機能が用意されており、著作権などに問題がある広告は対応されている。海外産のスマホアプリの広告で、こういったケースがしばしば見られており実際に停止された広告もあるようだ。
本件についてはオリジナル作品に携わったディレクターが目撃し指摘し、証拠も出揃っているため、広告掲出側としては言い逃れできないだろう。もし既に広告の掲載元へ報告されているのであれば、何らかの対応がされるはずだ。
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