Unreal Engine 5で描かれた日本の街並みがすごい。よく見るとクセもすごい
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ゲームエンジンUnreal Engine 5で、日本の街並みを描いたという映像が公開され、YouTubeを中心に注目を集めている。文化的な混在もされており、そこも味のひとつになっているようである。80 Levelが報じている。
さっそく映像を見てみよう。動画タイトルは「Japan – Unreal Engine 5 Cinematic Scene」。UE5でシネマティックに描いた日本、といったところだろうか。まずは道路から映し出されたのち、和風の建物や街並みが映し出される。建築デザインや道路の作り、電柱の立ち方などかなり日本的だ。郵便ポストや消火栓なども日本の街なかで見覚えのあるものばかり。都市というより、郊外であったり少し昔の日本という設定だろうか。いずれにせよ、日本の空気感を絶妙に再現している。注目したいのは、明らかにどこかの地域をモチーフにしていると思われる点。では実際にどの地域をモチーフにしているのだろうか。
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まずぱっと見では、京都を彷彿とさせる。大きな瓦屋根に虫籠窓、そして薄めの真壁などを見るにどの家も京町家スタイルとなっている。これで京都モチーフが濃厚かと思えるが、もう少しヒントを見てみよう。少しだけ映る、やたらと自己主張の強い自動販売機。黄色のマークが入った自販機は、コカ・コーラボトラーズジャパングループのFVジャパンが展開する、ツーダウン自動販売機である。この自動販売機は、大阪と神戸、そして東京の3エリアのみで展開されている。さらに一部のみ京都エリアで展開されているとのこと。
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自販機のラインナップを見てみると、WANDAや金の微糖といったコーヒーのほか、缶ジュースとしてみっくちゅじゅーちゅが並んでいる。このジュースはサンガリアが展開するジュースで主に関西で展開されている。やはりモデルは関西説が有力だろう。京都がモチーフで確定かと思いきや、もう少し見ると違和感も入ってくる。やたらと新潟要素も多いのだ。一瞬映る空き地の看板に記されている株式会社ウオロクという名前。ウオロクは新潟を拠点としスーパーマーケットを展開する企業だ。ウオロクの事業は、基本的に新潟県内で展開されている。さらに居酒屋らしきお店では「大洋盛」という文言が映る。大洋盛は新潟生まれの日本酒。居酒屋が売り商品として押し出す可能性はあるものの、京都らしい要素とはいえない。
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そしてよく見ると、野外食事場と思わしき場所に「食べ物餌を絶対に出さないでください。人にとびつくクセがつきます」という犬がいるらしき注意看板があったり、その下に中国語で「繁荣昌盛」と書かれていたり、細部を見てみると結構クセが強め。京都の街並みをベースに、作者の好きなものを付け足していったのだろう。そもそも矛盾やディテールの部分を指摘することは野暮かもしれない。
この映像を製作したのは、インドの3DアーティストRanjeet Singh氏。Mesh Monde Studioとして活動しており、さまざまなアセットを作っているという。さまざまなツールを使ってアセットを作っているようで、たとえばツーダウンの自販機については、MayaでモデリングしToolbag 4でレンダリング。Substance Painterでテクスチャを作成したそうだ。今回UE5で街並みを作ったことにより、リアルタイムライティングやマテリアル作成、フォトリアルなテクスチャの張り方など多くを学んだという。映像で登場するアセットはすべて自身で作り上げたというのだから驚き。それらをUE5に落とし込んだというわけだ。
かねてから昨今にかけて、リアルな日本の街並みを描く作品は増えつつある。セガの『龍が如く』や『ジャッジアイズ』シリーズに加えて、『Ghostwire: Tokyo』では都市圏が非常に緻密に描かれた。一方で京都や古い街並みを描く作品はそう多くない。今回の映像は、そうした少し昔の日本の街並みを描くゲームの可能性を示してくれたと、いえるかもしれない。
※ The English version of this article is available here