プロゲーマーの梅原大吾(以下、ウメハラ)氏は8月3日、Hit Boxとのパートナーシップを結んだことを発表した。日本のプロゲームシーンにおける立役者と、近年使用者が増えているレバーレスコントローラーの一大メーカーが手を組んだ形だ。
ウメハラ氏は日本人としては初めてのプロデビューを果たしたプロゲーマーともいわれる人物。かつて格闘ゲームの世界大会「EVO 2004」で見せた「背水の逆転劇」として知られる『ストリートファイターIII 3rd STRIKE』の1戦など、数々の伝説を残すプレイヤーだ。現在は『ストリートファイターV』のプロシーンで活躍を続けており、今回発表のあったHit Boxのほか、Red Bull、HyperX、Mildomとスポンサー契約を結んでいる。
そんなウメハラ氏がパートナーシップを結んだHit Boxは、レバーレスコントローラーを取り扱うアメリカのゲーム周辺機器メーカーだ。レバーレスコントローラーは、その名のとおり、アーケードコントローラーの左部分にあるレバー(スティック)がボタンに置き換わっている。このボタンが上下左右のレバー入力に対応している。特に1フレームが勝負を分ける格闘ゲームの入力に有効とされ、ウメハラ氏以外にも同じHit Boxでブランドアンバサダーを務めるカワノ氏、東大卒プロゲーマーのときど氏らもレバーレスコントローラーを使用している。
ちなみにHit Boxとはこのメーカーが手がけたレバーレスコントローラーのことを指すが、すべてのレバーレスコントローラーを引っくるめてHit Boxと呼ぶ者も多い。それはレバーレスコントローラー界隈で有名な企業である証だろう。
ウメハラ氏とHit Boxの出会いは2019年にさかのぼる。元々はアーケードで腕を磨き、アメリカのゲーム周辺機器メーカー・MAD CATZとスポンサー契約を結んだこともあるウメハラ氏は、ほかのプレイヤー同様にアーケードスティックを使用していた。そんな中、2019年にはレバーレスコントローラーに興味を抱いて使い始めた様子が見られる。『ストリートファイターV』でメインキャラクターとしているガイルとレバーレスコントローラーの相性の良さも、その決断の一因となったようだ。ただし、この時に使い始めた物はHit Box製ではなく、格闘ゲーマー・ガフロ氏が自作していたレバーレスコントローラー、通称・ガフロボックスだった。
長い間触れていたレバーから離れ、レバーレスコントローラーの扱い方を習得するため練習を重ねたウメハラ氏は、アメリカでおこなわれた大会「Combo Breaker 2019」にガフロボックスで参加を試みる。しかし、大会前に使用可能であることを確認したにも関わらず、大会直前にガフロボックスの使用禁止が発表された。ウメハラ氏は通常のアーケードスティックでの参加を余儀なくされる。ガフロボックスは、アーケードスティックやほかのレバーレスコントローラーではできない特殊な入力が可能で、それが問題となったようだ(関連記事)。この騒動を聞きつけたHit Boxから自社製品を贈られ、それからウメハラ氏は同機の使用を続けている。
そんな両者の出会いが、3年の時を経てパートナーシップという形で実を結ぶことになった。Hit Boxのブランドアンバサダーとして活動していくことになったウメハラ氏は、8月6日午前2時から開始となる格闘ゲームの世界大会「EVO 2022」の『ストリートファイターV』部門に参加する。3年ぶりのオフライン開催となる今大会でのウメハラ氏の活躍に期待したい。
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