実体験ベースのロシア侵攻戦争ノベル『Ukraine War Stories』発表、10月配信へ。ロシアがもたらした戦渦をウクライナ目線で描く


デベロッパーのStarni Gamesは7月25日、『Ukraine War Stories』を発表。2022年10月に無料配信すると告知した。対応プラットフォームはPC(Steam)。現在無料デモ版が配信されている。

『Ukraine War Stories』は、ロシアのウクライナ侵攻を題材にしたビジュアルノベルだ。兵士ではなく、占領地から逃れようとする民間人たちにスポットがあてられる。正式リリース版には、3つの物語が収録。それぞれHostomel、Bucha、Mariupolの、3つのウクライナの町を舞台に、愛する家族と共に戦地からの脱出を目指す人々の物語が描かれる。

Hostomelはロシア軍の最初の標的となった町のひとつ。ここでのエピソードでは引退した航空技師老人とその家族の物語が描かれる。そして、BuchaはKyiv(キーウ)の北西に位置する郊外の町。1か月近く占領されつづけたとされるこの町でのエピソードでは、YarikとVikaという兄妹の物語が描かれる。このエピソードでの主人公たちは、3つの物語のなかでもっとも非力な存在として描かれるそうだ。最後のエピソードについては記事執筆時点で、Mariupolを舞台にすることしか明かされていない。Mariupolは開戦当初から徹底的な爆撃にさらされた町である。民間人の死者は3000人以上にのぼるとみられている(BBC)。


本作で語られるすべての物語は、実際の出来事に基づいているという。目撃者の証言、およびその地での記録を、1つの物語にまとめあげているそうだ。デモ版でも、物語のもとになったとみられる出来事が、出典元リンクと併せてまとめられていた。さらに、ゲームにおけるイラストは、その地域で撮影された戦時下の写真に基づいて描かれているとのことだ。

デモ版でのゲームプレイでは、選択肢によって自身と仲間のMood(気分)が変化するシステムが確認できる。また、Fuel(燃料)やMedicine(薬品)、Alcoholといった物資も存在。いずれかの物資を使わなければ選べない行動もあり、上手くリソースを管理していかなければならない。一方で、仲間のMoodが底を尽きると、物資や自身のMoodを消費して、彼らを勇気づける必要が出てくる。そして自身のMoodがゼロになると、その時点でゲームオーバーとなる。


本作を手がけるのはウクライナのKyivに拠点を置くStarni Games。過去にはストラテジーゲームを開発してきたスタジオだ。『Ukraine War Stories』は、Kyivにロシア軍が間近に迫るなか、なおも開発が進められているという。また本作は正式リリース後も無料で配信され、ゲーム内購入要素も一切含まれないそうだ。本作から収益を得るつもりはなく、世界中のプレイヤーにウクライナの人々の体験を共有してもらうことを目的にしているという。

開発チームの一人は過去に、ロシア軍の侵攻するBuchaで、家族と一緒にガレージの地下室に1週間隠れて過ごしたそうだ。そのときの目撃証言も、ほかの公的な情報源とともに本作の物語に反映されているという。先述のとおり本作には、Buchaを舞台にしたエピソードも収録されている。またストアページの説明によると、本作には成人向けの描写が含まれるとのこと。実際の体験に基づく、戦争の実情を描く生々しい物語が展開されるのだろう。

『Ukraine War Stories』はPC(Steam)向けに、2022年10月に無料配信予定だ。現在無料デモ版が配信されている。製品版およびデモ版ともに、現時点では日本語には対応されていないため、今後の対応が待たれるところである。