『FF14』VTuberが「野良プレイヤーをのけ者にした」として批判殺到。本来は無関係な企業から異例の声明発表も


先日、『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FF14』)をプレイしていたとあるVTuberが配信内でおこなった行為について、プレイヤーから批判が殺到し、当事者が謝罪するという出来事があった。今回の騒動が起きたのは7月13日、VTuberのノーラ氏のおこなっていた『FF14』配信が原因だ。彼女は視聴者とパーティを組んでコンテンツに行く、いわゆる参加型と呼ばれる配信形態をとっていた。しかし当日の配信では、手違いから配信を見ていない一般プレイヤーがパーティに入ってしまった状態でコンテンツへ突入してしまった。その後、ノーラ氏は結果として一般プレイヤーの方を故意に戦闘不能状態にし、コンテンツから除名することを視聴者に指示してしまう。その身勝手なプレイを咎められ、事態を知ったほかのプレイヤーからネット上で批判が殺到することとなった。

『FF14』にはコンテンツファインダーという機能が存在。コンテンツの規定人数に満たない状態であっても、同じコンテンツを申請したプレイヤー同士でマッチングしてプレイすることができる。さらには各種コンテンツの人数不足を補うために、どのコンテンツに当たるかわからないコンテンツルーレットという申請方法も存在している。平たく言えば、知らない野良のプレイヤーと一緒にコンテンツにいくことは珍しいことではなく、多くのプレイヤーが日常的に知らない人と一時的にパーティを組んでいる。

今回のノーラ氏の配信では、コンテンツの規定人数を視聴者のみで揃え、野良プレイヤーの方を含めずにプレイすることを想定していた。しかし数え間違えからか、規定人数に満たない状態で申請してしまい、野良の方が参加した状態でコンテンツに突入してしまったのだ。しかし彼女はそのことに気づかないまま、自身の配信ルールを守らないプレイヤーと判断してしまい、結果的にMPKをしてしまう。MPKとは「モンスタープレイヤーキル」の略称であり、故意にモンスターを利用してほかのプレイヤーを妨害したり、戦闘不能にする行為を指し、オンラインゲームではバッドマナーとされている。さらに彼女は参加していた視聴者へ一般プレイヤーの除名を呼びかけてしまう。そして何も知らないままコンテンツに申請しただけの、一般プレイヤーの方は理由を知る由もなくコンテンツから除名されてしまったのだ。

彼女が野良プレイヤーとのコミュニケーションではなく除名を呼びかけたのは、その特殊な配信スタイルに起因している。彼女は初見で楽しむだけでなく、自身でギミックを考えて解き明かしていく方針をとっていた。そのため配信コメントではネタバレや解説を禁止にしており、参加者も彼女の指示に従ってプレイすることが義務づけられていた。さらに彼女は女王キャラとして活動するVTuberであり、指示なく攻撃を避けることやギミックを処理することに加え、ゲーム内チャットまで一律で禁止していた。そういった内容の配信において、彼女は普通にプレイをしていた一般プレイヤーのことを、配信ルールを守らない視聴者だと判断してしまい、除名という行為に及んでしまったといえる。

今回の件に注目が集まったのは、除名されてしまった一般プレイヤーの方がかわいそうというだけではないだろう。まずは以前にも似たような内容で、パーティに参加した一般プレイヤーが正当な理由なく除名されてしまい問題になった事案があるということだ。過去の騒動と似たような出来事であると同時に、その当事者が不特定多数の視聴者がいるゲーム配信上でおこなってしまったという点が問題視されたのだ。『FF14』にはトラブル防止の観点も兼ねてプレイヤー名を非表示にしたり、イニシャル表記にする機能も実装されており、常日頃から他プレイヤーへの配慮をおこなうことが推奨されている。しかしノーラ氏の配信は視聴者のみでパーティを組むことを想定していたためか、フルネーム表記で一般プレイヤーの名前がはっきりと映ってしまっているのが確認できる。

そして、たとえ配信ルールでの決まりごとあったとしても、配慮の欠ける遊び方をしていたのではないかということも問題提起された。実際に『FF14』内では、ロールプレイする楽しみ方も公式から容認されており、他者のプレイスタイルを否定したり、自身のプレイスタイルを強要しようとすることは規約違反に該当する。今回の件では参加者が容認していたからといって、指示なく攻撃を避けることまで禁止するのはどうなのか、といった声が上がっていた。また、参加者が故意にMPKをおこなっていたことが判明してからは、非常に悪質であるとの意見が多数寄せられた。

今回の配信で起きた出来事に批判が集まってから、当事者たちの事後対応についてもひと悶着あったといえる。ノーラ氏は当初、今回の騒動について黙秘をしたまま、自身の配信アーカイブについても該当箇所を削除する対応だけに留めていた。さらに彼女の配信に参加していた配信者の村崎カイン氏については、経験者でありながらMPKをおこない、野良のプレイヤーを除名することに加担したことも問題視された。彼はその後におこなわれた自身のゲーム配信上でMPKについて認めているものの、あまり問題視していないかのような態度についても批判が殺到していた。

その結果、Twitterのトレンドに「部外者」「VTuber」「FF14」といった単語が数日上がり続けてしまうほどの騒動となった。後日、ノーラ氏は自身のYouTube上で今回の件に関する配信をおこない、自らの非を認め謝罪している。また、除名してしまった一般プレイヤーの方へコンタクトをとって直接謝罪をしたこと、今回の件に関して運営へ自主的に報告したことも発表した。配信に参加していたほかの配信者も同時に謝罪の声明文を出している。

謝罪の最後には、事態の重さを受け止め活動休止すると書かれている。しかし彼女に対する批判の声は収まらず、その後もノーラ氏へ厳しい言葉が投げかけられた。その中には、たとえ迷惑行為をおこなったプレイヤーが相手であったとしても、いささか度を超したリプライも数多く見受けられ、その後もさまざまなコミュニティで話題に上がりつづけることとなった。また、今回の騒動を受けて、『FF14』を配信してきたVTuberをはじめとするほかの配信者についても、『FF14』の配信をしばらく取りやめるといった措置をとる姿勢をみせた人も見受けられた。

そんな状況を見かねたのか、配信上で同じパーティとなり除名されてしまった張本人であるEbi Tempura氏本人がTwitterで発言。「私は大丈夫です」という言葉から始まり、今回の騒動については残念であるとしながらも、「それ以上に悪意ある言葉を投げかけないで欲しい、どうか関係者に対して優しく接して欲しい」と訴えかけた。

また、7月19日には株式会社KADOKAWA Game Linkageから、今回の騒動に関する異例の声明が出されることとなった。その理由としては、故意にMPKをおこなっていた村崎カイン氏が過去にファミ通へ記事を寄稿していたことに起因している。事情を知らないプレイヤーの間で「ファミ通のライターが問題行為をしていた」という誤った形で情報が出回ってしまったがために、無関係な企業に批判の声が向けられていたためであろう。声明では謝罪とともに、今回の騒動に企業側は一切関与していない旨を告げた。

昨今ではインターネット上でゲーム実況の動画を投稿したり、ゲームプレイを配信するという文化も日常的なものとなってきている。企業側から配信に関する規約も明記されることも増えてきており、プレイする以外にも視聴する楽しみ方が増えたといえるだろう。特にオンラインゲームは、視聴者がプレイヤーとしてゲーム内で現地に集合し、一緒にコンテンツをプレイしたり雑談を楽しむといったことも可能。MMORPGである『FF14』も配信者と視聴者の距離が近く、配信と相性が良いゲームのひとつといえる。

しかしオンラインゲームの配信はプレイヤーとのトラブルがつきものであり、悪質なプレイヤーに遭遇することも珍しくはない。だが悪質な行為をしているのが配信者自身だった、という事案も近年では増えてきており、ゲーム配信をおこなうプレイヤーそのものに否定的な印象を抱く人も多い。今回の件ではゲーム配信における配信者のモラルを問いただす声と同時に、不特定多数のプレイヤーがいるオンラインゲーム上で配信をおこなうこと自体の是非を問う声も上がっている。

実際、同じくスクウェア・エニックスが運営する『ドラゴンクエストX オンライン』ではいわゆる配信サーバーという区分がされており、特定のサーバーではゲーム配信を明確に禁止している。こうした騒動が起こるたびに、『FF14』にも配信サーバー制度の導入を求める声も上がっている。しかし同時にゲーム配信がきっかけとなって新たな交流が生まれることもまた事実。配信者との折り合いの付け方については、まだプレイヤーの間でも答えを出しきれない状況のようだ。

オンラインゲームは遊ぶ人の数だけプレイスタイルがある。遊び方が多様化していく中で、プレイヤーが想定していないトラブルや、人間関係のいざこざに巻き込まれることもあるはずだ。プレイに熱中しすぎるがあまり、つい心無い言葉を向けたくなってしまうことがあるかもしれない。しかし画面の向こう側には、常に自分と同じ人間がいるということを忘れずに、何事も節度をわきまえて遊んでいきたいものだ。

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