ハクスラ・ダンジョンRPG『Nevergrind Online』、想定以上の人気でサーバー落ちる。開発者からの悲鳴が止まらない異例の日本人気
Neverworks Gamesによる『Nevergrind Online』が局地的な人気を見せ続けているようだ。ハクスラ・ダンジョンRPGの快進撃は、ゲームのサーバーを落とすほどの勢いである。
『Nevergrind Online』は、Steamにて早期アクセス配信されているダンジョンRPGだ。マルチプレイにも対応(セーブデータはソロ・マルチモードで別)。主人公は中世ファンタジー世界にて、冒険者としてダンジョンに潜っていく。ゲームの流れは非常にシンプル。クラスを選んだら酒場にいってクエストを受注し、モンスターを討伐。装備を持ち帰り鑑定したのち、装い新たにさらに強力なダンジョンに挑む。強い装備を得るために延々とダンジョン探索をする仕組みになっている。
ビジュアルはシンプルで、モンスターのアニメーションもリッチとはいえない。ダンジョン構造も単純で凝ったギミックもなし。UIも直感的とはいえない。しかしながらトレハンのループはしっかり構築されており、マルチプレイ時は緻密な連携が重要になるなど、ハクスラやマルチプレイRPGの醍醐味がぎゅっと詰め込まれており、芯の通ったゲームに仕上がっている。Steamでは310件以上のレビューが寄せられ、評価は「非常に好評」。本作を称える表現として『EverQuest』をはじめとした、往年のMMORPGをあげるプレイヤーも多い。
本作は6月10日に早期アクセス配信開始された。一部のプレイヤーが本作に注目したほか、Twitterユーザーのばんちゃん氏が日本語訳を提供したことにより、日本人ユーザーが拡大。開発者のJoe Leonard氏より、日本からの売上が大きいことが報告されてきた(関連記事)。その人気は加速の一途を辿っているようである。
というのも、7月17日には本作のマルチプレイ向けのサーバーがダウンしてしまった。同時接続プレイヤー数が想定以上に集まったことによるものだという。その後サーバーは復旧され、より多くの同時接続プレイヤー数に耐えうるスペックに変更された。なぜサーバーがダウンしたのだろうか。それほど本作の日本人気は強いのだろうか。開発者のLeonard氏に話を伺った。
そもそもとして同氏は、本作がこれほど売れるとは予想していなかったそうだ。たしかに、同時接続プレイヤー数の推移を見るとそのすごさが見て取れる。早期アクセス配信開始時は、同時接続プレイヤー数は200人前後を記録していたものの、配信2週間で3桁切り。しかしながら、7月13日頃から急速に人口が拡大。7月18日には同時接続プレイヤー数はピークで545人に達した。Leonard氏はベータ時ですら500人超えを見たことがなく、こうした状況になるとは思いもしなかったという。同時接続プレイヤー数としては1000人にも到達していないので、ほかのタイトルと比べると、人気としてはあくまで小規模。しかしながら、開発者としては想定外だったようだ。ちなみに現在のサーバーは同時接続プレイヤー数は1000人までは耐用できるとのこと。
なお、サーバーがダウンした時にはLeonard氏は眠っていたようだ。起きた時にどう感じたか聞いてみたものの、「不安な気持ちでベッドから起き上がると、サーバーが落ちていて、正直ひどい気分だった」とのこと。心配になり最近寝られているか聞いたところ、アドレナリンが出すぎて、コーヒーを飲んでいないにもかかわらず、毎日4時間程度しか眠れていないそうだ。ネットコードを最適化させ、サーバーが落ち着けば、日本人がドラゴンを討伐している時でもゆっくり眠れるだろうとジョークも飛ばしていた。
なお本作は同時接続プレイヤー数からもわかるように、売上も好調。最近の売上はローンチ時の数字を大きく上回っているそうだ。Leonard氏は毎日、その売れ行きに驚くばかりだという。売上本数としてはこれまでに6000本販売しているそうだ。売上の内訳について聞いたところ、先週の売上の87%が日本からだったという。日本だけでなくグローバルに売上が好調なようで、トータルの売上比率としては39%でアメリカが多いそうだ。しかし日本は35%と首位を脅かしており、近いうちにトップ国が入れ替わる可能性はあるだろう。
一方で、『Nevergrind Online』はビジネス的に成功なのか気になるところだろう。Leonard氏に商業面について聞いてみたところ、すでに開発費を回収しているとのコメントをもらった。開発においては1万5000ドル(約200万円)程度しかかかっておらず、そうしたコストは発売から数週間で回収しているそうだ。本作はLeonard氏の趣味の時間を使って開発されたようだが、現在ゲームがあまりに想定より売れ成功しているので、本業をやめなければならないかもしれない、と嬉しそうに話した。フルタイムでゲームを開発するのは夢だったそうだ。なお本作は欧米メディアに取り上げられていないにもかかわらず、ここまで数を伸ばしているという点で、非常に特異な成功であると、Leonard氏は自己分析している。
前述したように、本作の売上・ユーザー数は世界的に見るとさほど規模の大きなものではない。しかしながら、ビジュアルもシンプルで定価としては2050円する硬派なゲームが、早期アクセス配信から1か月経ってから、急激に日本ユーザーからの支持を得て数字を伸ばし、アメリカ在住の開発者を驚かせるという現象そのものが面白い。日本のSteamコミュニティ内においてもクチコミ効果が確実に存在すること、そして日本語でプレイできる重要性が感じられる事例だ。本日7月19日には人気YouTuberグループの兄者弟者が本作のプレイを配信。さらに注目が集まっていきそうだ。
ゲームの骨組み自体かなり硬派で、人を選ぶゲームなのは間違いない。それでも日本のSteamゲーマーたちを魅了し続ける『Nevergrind Online』。同作の人気は、どこまで伸びていくのだろうか。『Nevergrind Online』はSteamにて2050円で早期アクセス配信中。正式リリースまでは1年ほどが見込まれており、今後も早期アクセス配信タイトルとして、コンテンツ追加や調整が進められる予定だ。
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