デベロッパーのqureateは7月17日、Nintendo Switch向けリズムゲーム『マッサージフリークス』について声明を発表した。本作に関する意見は、同社に直接届くかたちで送るように呼びかけている。また、本作の表現や名称などの調整を検討することにも言及した。
『マッサージフリークス』は、Nintendo Switch向けに今年8月4日に配信予定のリズムゲームだ。主人公の指原圧志(ゆびはらあつし)は、亡くなった祖父から受け継いだマッサージ店を営み、さまざまな悩みを抱え訪れる女の子たちを施術。そして、祖父の借金を返済することを目指す。
圧志は、施術される人物が潜在的に求めている音楽を音波として手袋から伝えて、体の中と外の両方から癒すという秘術を駆使。楽曲に合わせて表示されるボタンを押して、リズムを刻むゲームプレイになるという。また、好感度を上げると女の子と恋愛に発展したり、“健全男子が総立ち”になってしまうハプニングが発生したりといったイベントもあるとのこと。
本作は先日7月14日に発表され、一部で大きな話題となった。まだゲームプレイ映像は公開されておらず情報は限定的ながら、スクリーンショットやゲーム概要の説明は、かなり刺激的。ゲーム内では、楽曲が進むにつれ女の子が着ている服がはだけていき、また一定スコア以上を獲得すると「なんだか とっても りらっくす もぉど(NTR)」に突入。NTR時は女の子は心が丸裸になり、その精神的な表現として裸に見えるという。こうした作品が、任天堂のNintendo Switchにてリリースされることとなり、驚きをもって迎えられたようだ。
一方で、SNS上には批判的な意見も投じられている。上述したようなゲーム内容から、女性蔑視的・性的搾取的な作品であるとか、マッサージ店での性犯罪を想起させるなどといった意見がみられる。また、本作はCERO:D(17才以上対象)にレーティングされており、事実上子供でも入手できる状況への危惧を語る人もいる。そうした批判の矛先の一部が、任天堂に向けられているようだ。本作のNintendo Switchでの販売を任天堂が許可したと考え、その判断について批判している様子である。
そして開発元qureateは7月17日に声明を発表。ゲームの内容に関して調整できるのは同社だけであり、同社に直接届くように意見や感想を送ってほしいと呼びかけた。任天堂に対して本作に関する意見が投稿されている状況を受けて、このような声明を発表したものと考えられる。
なお任天堂は、Nintendo Switchなど自社プラットフォーム向けのタイトルについて、同社として発売を認めたり認めなかったりといった判断はおこなっていない。任天堂の古川俊太郎社長は2019年6月開催の株主総会の質疑応答にて、以下のように述べている。
当社のゲーム機向けに発売されるソフトについては、第三者機関による年齢レーティングの取得を前提とすることで、お客様にソフトの内容や対象年齢を客観的な情報でご理解いただきたいと考えています。プラットフォームを運営している当社が、発売を認めるソフト、認めないソフトを恣意的に取捨選択すると、ゲームソフトの多様性や公平性を阻害することになってしまうと考えています。
また、当社のゲーム機には保護者による使用制限機能を設けており、保護者の方が暗証番号等を設定することで、「お子様に有害と考えられるようなコンテンツを表示しない」という対応等も可能になっています。
つまるところ、任天堂が独自で表現のアリナシのライン引きをするのではなく、レーティング機関に任せているということだ。『マッサージフリークス』はCERO(コンピュータエンターテインメントレーティング機構)による審査を受けて、17才以上対象とする年齢区分Dを付与されている。任天堂としては、これをもってNintendo Switchでのリリースに問題はないと判断したということだろう。また、対象年齢以下の子供がプレイする可能性については、ペアレンタルコントロール機能(みまもり設定)を活用するように案内されている(関連記事)。
ちなみに、本作は海外でもリリースされる。各地域でのレーティングを確認してみると、米国ではESRB:T(13才以上対象)、英国ではPEGI:12(12才以上対象)となっている。セクシャルな表現などについての注意表記はあるものの、対象年齢は意外と低めである。また、表現についての規制が比較的強いとされるドイツでは、USK:16(16才以上対象)にて審査を通過している。
もうひとつ興味深いのは、ニンテンドーeショップに掲載されている本作のスクリーンショットだ。実は日本と海外では、同じタイトルでも掲載スクリーンショットが異なる場合がある。主に、性的な表現を含むスクリーンショットが、海外では差し替えられることが多い。ある海外パブリッシャーに以前取材したところ、これは任天堂の判断ではなく、レーティング団体の規定によるものとのこと。そうした状況のなかでも『マッサージフリークス』は、海外でも日本と同じスクリーンショットが掲載されている。
近年特に海外では、ゲーム内での女性蔑視的・性差別的な表現について厳しい見方があり、結果的にレーティング審査を通過できず一部の国で発売中止となった作品もある。そうした状況のなかで、一見刺激的な本作のスクリーンショットが海外でも掲載され、また一部では日本と比べてかなり低い対象年齢にレーティングされている。本作の詳しいゲーム内容が気になるところだ。
開発元qureateは声明にて、本作の表現などの調整を検討するとしているが、現時点では特に方向性は示されていない。一方で、本日7月18日になって、本作のキャラクター名については変更することを発表した。あわせて、その名前に関して不快に思ったファンや関係者などに謝罪している。
本作の公式サイトでは、主人公のマッサージ店を訪れる女性キャラクター6人のプロフィールが公開されている。その各キャラクターの名前については、すべてアイドルの日向坂46のメンバーと同じではないかと指摘されていた(苗字は異なる)。珍しい読みの名前も含まれており、偶然ではないだろうとの見方があったようだ。
今回のqureateの発表から察するに、アイドルの名前を一部拝借していたのは事実なのだろう。芸能人の名前をもじって利用する手法は一般的ではあり、同社も過去に似た手法をとっている。ただし、一部性的な表現が含まれる作品の場合、単に名前を参考にする以上の意味にもなりえる。同社は、今後二度とこのようなことが起こらないように、お客に対してより真摯に向き合いゲーム制作をおこなうと約束した。
また今回の発表のなかでは、本作はすでに多くの予約購入者がいることも明かされた。同社は、本作を遊んだ際には、感想や要望を公式サイトから送ってほしいとしている。すべて目を通し、開発の参考にするとのことである。
『マッサージフリークス』は、Nintendo Switch向けに8月4日配信予定だ。
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