『GTA V』などに対応するVR Modが、販売元の申し立てを受けて取り下げ。月270万円稼ぐMod開発者、著作権侵害に困惑
Rockstar Gamesの『グランド・セフト・オート(GTA)』シリーズにおいては昨年、シリーズ作品に対応するModが相次いで公開停止され注目を集めた。親会社であるTake-Two Interactive(以下、Take-Two)が著作権侵害を申し立てたとみられている。そして最近になって、また新たな事案が発生したようだ。海外メディアKotakuが報じている。
Mod開発者のLuke Ross氏は7月7日、Take-TwoからDMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づく申し立てを受け取ったことを明らかにした。同氏は、『GTA V』や『レッド・デッド・リデンプション2』『マフィア II コンプリート・エディション』など向けの、VR Modを開発している人物。通常は三人称視点でプレイするところを、VRを通じた一人称視点でのプレイを可能にするModだ。それらの作品の販売元親会社であるTake-Twoから、著作権侵害行為であり削除するようにとの申し立てが、Modを配布していたPatreonの運営元に寄せられたのだという。
これを受けてRoss氏は海外メディアKotakuに対し、困惑している旨を語っている。同氏は、Take-Twoが権利を保有するオリジナルのソフトウェアやアセット、IPをModに使用しておらず、対応ゲームを自らの作品であるかのように改変することもしていないと述べる。また、同氏のModを楽しむには対応するゲームが必ず必要になるとし、開発・販売元にとっては、売り上げ面でプラスにしかならないはずだと主張している。
つまりRoss氏は、自身のVR Modは著作権侵害にはあたらないと考えているようだ。とはいえDMCA通知を受け取った場合、仮に異議申し立てをおこなう意思があっても、Patreonの運営元は48時間後にコンテンツを一旦削除する規定となっている。その後Ross氏は、Modを含めTake-Two作品に関連するすべてのコンテンツを自ら削除した。
Ross氏は、具体的にModのどの部分が著作権侵害行為にあたるのかTake-Twoに問い合わせそうだが、回答はないという。本稿冒頭で触れた昨年の出来事(関連記事)を含め、はっきりとした理由が示されないままModが取り下げられる事態が続いており、特に海外ではTake-Twoの対応に批判的な見方をするゲーマーが多くみられる。
Take-TwoがなぜこうしたModの取り下げを求めているのか、考えられる理由のひとつには、Rockstar Gamesが公開しているEULA(使用許諾契約書)が挙げられる。そこには、製品のリバース・エンジニアリングやデコンパイル、逆アセンブルをおこなったり、製品に基づいた派生物を作成したり、それ以外の方法で製品を改変したりしないこと、とある。VR Mod制作はこれに該当する可能性があるだろう。
またRockstar Gamesは、Take-Twoと協議して制定したという、シングルプレイ用Modのガイドラインを公開している。一定の条件をもとに、Mod制作・配布を認めるという内容だ。その条件のひとつには、非営利目的であること、と定められている。Ross氏は、Patreonのパトロンから月に2万ドル(約270万円)以上の収入を得ているという(The Verge)。これでは非営利とはいえないかもしれない。もっとも、これらをもって著作権侵害を主張し、DMCAの申し立てをおこなう根拠とできるのかどうかは何ともいえない。ちなみに、Ross氏がTake-TwoからDMCA通知を受け取ったのは、上述の収入についての記事が出た直後だった。同氏は2017年から活動しているそうだが、これまでこうしたトラブルはなかったのとのこと。
Ross氏は、Take-Twoの対応は嘘や抜け道を利用したものであると批判。同社のIPと相互に作用するものは、本格的な作品であれわずかなバグ修正であれすべて二次創作とみなされ、取り下げを求められる状況にあると述べる。そして、こうした権利の乱用を止めるべく行動する時が来たとして、オンライン署名サイトChange.orgでの署名活動に参加するなどして、声をあげてほしいとファンに呼びかけている。はたして、そうした活動に対しTake-Twoはどのような反応を示すのか注目が集まる。