『Apex Legends』ヴァルキリー弱体化求める声が高まる。停滞するゲーム環境の一因にはプロシーンへの配慮も
『Apex Legends』において、ヴァルキリーの弱体化を望む声が高まりつつあるようだ。そうした意見は以前から存在したものの、実現を見なかった。開発者いわく、とある理由が関係しているのだという。
ヴァルキリーは、『Apex Legends』シーズン9より参戦したキャラだ。偵察クラスのレジェンドである彼女は、パッシブアビリティで調査ビーコンを読み取り可能。次のリング収縮後のエリアを事前に知ることができる。ほかにはジェットパックによる空中移動が可能。おまけに、ドロップシップ登場時および降下時や、ジャンプタワー使用時のような滑空状態では、空中で敵がハイライト表示される索敵能力も有している。
戦術アビリティは、敵に小ダメージとスタンを与えるミサイル。そして、アルティメットアビリティ(ULT)は大空へと飛び立つという能力で、部隊の全員を引き連れることも可能。最大まで上昇すると滑空状態に移行し、部隊全員が素早く大移動できる。なお、ULTの使用中には先述の敵のハイライト能力も発動する。
多彩な能力を持ち合わせているヴァルキリーだが、今シーズンではULTでの上昇時にマウス操作で回転できなくなるなど、多少の弱体化が実施。一方、プレイヤーコミュニティでは、さらなる弱体化を求める声がにわかに高まりつつある。海外掲示板Redditのヴァルキリーのピック(採用)率に関する投稿では、ユーザーたちが不満をあらわにしている。
投稿の主題は、現在開催中のALGS Championshipの各チームにおけるヴァルキリーのピック率についてだ。ALGS(Apex Legends Global Series)は、本作におけるプロリーグ。そして、毎年開催されるChampionshipは、年間成績の上位40チームが世界一の座を巡って争う決勝大会である。投稿者によれば、同大会では99%のチームがヴァルキリーを採用しているのだという。一方で、Apex Legendsにおけるeスポーツ向け公式アカウントも、本大会のレジェンドのピック率を公開。ALGSでは、98.02%のチームがヴァルキリーを採用しているとのことだ。
そうしたヴァルキリーがほぼ必須ともいえる競技シーンの現状を受けて、ユーザーたちは複雑な思いを吐露している。先述のRedditスレッドでは、彼女のアルティメットアビリティが、『Apex Legends』の戦略性に悪影響を与えている、という声もあるようだ。
競技シーンにおいては、先に場所を確保してコースティックなどで守りを固める戦法がしばしば好まれる。無駄な戦闘を避け、確実に順位を伸ばすためだ。ここで、ヴァルキリーのアビリティが非常に有利にはたらく。先述のとおりヴァルキリーは、次のリングの位置の先読みと、部隊全員を大きく移動させるアビリティを有しているからだ。そうした競技シーンにおける戦法は、今やランクマッチにおいても広まりつつある。戦わずに屋根や建物を陣取るプレイヤーだらけの現状に、苦言を呈するユーザーもいる。
また、実は本大会に大きな関わりをもつ人物も、過去にヴァルキリーの弱体化を求めていた。以前よりALGS大会において司会者を務めている、FallouttことJon Kefaloukos氏だ。同氏は、ピック率90%以上のキャラクターが競技シーンに存在するような環境は、ゲームにとって悪影響であるとの見解を投稿。ヴァルキリーとジブラルタルの弱体化を求めていた。
これに対して反応を示したのが、『Apex Legends』のゲームデザイナーを務めるJohn Larson氏だ。
同氏は、ヴァルキリーが少なくとも今回のALGS Championshipが終わるまで弱体化されないことを示唆。各チームが環境を研究したうえで練習に励んでいるため、本大会の前にあまり環境を変化させたくないという意見を表明したのである。ヴァルキリーがなかなか弱体化されない一因となっていたのは、競技シーンへの配慮だったわけだ。
一方で、ほかのレジェンド採用率の変化を好意的にとらえるユーザーも存在する。特に本大会では、以前まで非常に高かったジブラルタルのピック率がやや下がり、ワットソンやシアなどの採用率が増えている。ヴァルキリーはともかく、ほかの2体のレジェンドについては、チームごとにある程度バラつきがみられるようになったわけだ。本大会は、使用されるレジェンドがほとんど同じ顔ぶれであった以前の大会と比較して、見ごたえが増していると評価する声もある。あくまで観戦するコンテンツとしての目線であれば、調整は“成功”といえるのかもしれない。
競技シーンにおいて、ジブラルタル必須の環境を脱しつつある一方で、ヴァルキリーという必須級のレジェンドが生まれてしまった『Apex Legends』。ALGS Championship開催に伴う競技シーンへの配慮は、一般ランクマッチにおける環境の変化も押しとどめていた側面がある。大会終了後、ヴァルキリーに何らかの調整の手は入るのか。今後の動向を注視していきたい。