人気ゲームを通じてメキシコ麻薬カルテルが“求人活動”をしているとの報道。子供さえも誘われる

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メキシコの麻薬カルテルが、オンラインゲームを利用して“求人活動”をおこなっていると報道されている。各社報道によれば、カルテルは『Grand Theft Auto Online(GTA Online)』やモバイル向けバトロワシューター『Garena Free Fire』などの作品を通じて人々を犯罪行為に誘っている。そのなかには、10代前半の子供も含まれるようだ。

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メキシコにおいて、麻薬問題は深刻だ。同国では「メキシコ麻薬戦争」とも呼ばれる状況が長年にわたり続いている。メキシコ政府や隣国アメリカが麻薬カルテルの取締を試みる一方で、カルテルをはじめとする犯罪組織も依然として存在。今年に入ってからも、犯罪組織によると見られるジャーナリストの殺害や、犯罪組織リーダーの逮捕に伴う銃撃戦などが起きている(Reuters)。こうした状況の原因のひとつは、メキシコがアメリカの隣国である点だ。メキシコは、南米において製造された麻薬が、アメリカに供給されていく中継地点となっているわけだ。メキシコの麻薬カルテルは、麻薬密輸・密造などの犯罪行為を依然として活発におこなっているようだ。



『GTA Online』が悪用されたケース

そして、メキシコ麻薬カルテルでは、オンラインゲームを利用した犯罪協力者のリクルートも実施されているようだ。米ビジネス紙Forbesの報道によれば昨年11月、米国税関・国境警備局がメキシコと国境を接する米アリゾナ州にて、ある車両を調査。60キロ近くのメタンフェタミン(いわゆる覚醒剤)を発見したとのこと。

ドライバーである女性は尋問のなかで、きっかけは『GTA Online』を通じて「George」と名乗る男と知り合ったことだと語ったそうだ。Georgeと別のチャットツールで会話したり、実際に会ったりしているうちに「“電化製品”を運ばないか」と誘われたそうだ。提示された報酬は、輸送量に応じて多くて1回2000ドル(約27万円)。彼女が、自身がなにを運んでいたか把握していたかは不明だ。しかし、ゲームを通じて出会った男に貰った仕事は、犯罪行為そのものだったわけだ。

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『Garena Free Fire』が悪用されたケース

また、同じく昨年冬には、少年たちがオンラインゲームを通じてカルテルに引き込まれる事件があった。AP通信が、メキシコ公安省による発表として伝えている。同発表によれば、ひとりの少年がバトルロイヤルシューター『Garena Free Fire』を通じてカルテル構成員から接触を受け、組織のために働くことを依頼され受諾。この少年は、友人ふたりにも仕事をもちかけたとのこと。この11才から14才の少年らは、メキシコのオアハカ(Oaxaca)にて、カルテルが手配したバスに乗り込む寸前で保護されたという。

そして今年5月には、現地メディアTelemundoが、この当事者と見られる「Ernesto」と呼ばれる少年について、詳細を報道している。彼とその友人たちは「Moreno」と名乗る男にゲーム内で接触を受け、後にチャットアプリでやりとりしていたとのこと。Morenoは3人の少年たちに、毎月8000メキシコペソ(約5万4000円)の報酬を提示。オアハカから、車で約1350キロの距離にある都市モンテレイ(Monterrey)に来て働くように伝えたという。この移動手段が、カルテルが手配したバスだったと見られる。

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少年たちの仕事は「監視役」

3人の少年たちに与えられる予定だった仕事は、「Halcones(鷹)」と呼ばれる監視役だったという。国境などに目を見張り、警察など法執行組織の動きをカルテルに伝える役目だ。また、Morenoは少年たちに対して「仕事をしっかりこなせば、ドラッグも売らせてやるし、殺し屋としてもっと稼がせてやる」と伝えていたという。

少年たちを迎えに行ったのは、前述の男Morenoとは別の構成員と見られる女だった。この女は3人に対して、もう後戻りはできないとの旨の脅迫をし、郊外の隠れ家に軟禁していたという。Ernestoくんによれば、その時に「もう二度と家に帰って親の顔を見ることはできない」と思い、己の死を想像して震えたという。しかし、Ernestoくんの母親を中心とする保護者グループが、彼らの足取りを追っていた。そして、たまたまErnestoくんのもっていた携帯電話がONになり、軟禁場所の位置情報が判明。情報提供を受けた警察により、3人は保護されたという。そのままバスに乗っていたら、3人の少年にはどのような末路が待っていたのだろうか。

なお、構成員と見られる女は逮捕された一方で、男の構成員Morenoについては『Garena Free Fire』上のプロフィールも消えており、足取りが掴めない状態だそうだ。メキシコ政府機関によれば、カルテルはチャット上でこうした誘いをする時には、規制されそうな単語に数字を混ぜて会話するという。たとえば「n4rc0(narco/薬物)」「c4rt3l(cartel/カルテル)」「zic4ri0s(sicarios/殺し屋)」などだ。ゲームやチャットの仕組みに慣れた構成員の存在が感じられる。

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『GTA Online』や『Garena Free Fire』に限らず、コミュニケーション可能なオンラインゲームでは、悪意のある利用者による深刻なトラブルは発生しうる。ゲーム会社らも対策をとっているものの、そのすべてを防ぐのは現実的に不可能だろう。チャットアプリについても同様であり、プラットフォーム側に問える責任にも限界がある。ユーザー自身や、子供の場合はその保護者が自衛していくのが現実的な手段となる。

「麻薬カルテルによる誘い」がゲームを通じて届くのは、麻薬戦争という背景があるメキシコゆえだっただろう。しかし、日本国内においても、ゲーム上の出会いを通じてのトラブルはありうる。犯罪行為に巻き込まれる可能性も十分考えられるだろう。また、タイトルにもよるものの、ゲームという媒体は子供も触れやすい。ゲーム好きの子をもつ保護者は、チャットアプリのみならず、ゲーム内での交友関係についても、ある程度気を配っておく必要はありそうだ。