中国で『ディアブロ イモータル』が最適化を理由にリリース延期。一方、「くま」が原因と推測するメディアも

Blizzard Entertainment/NetEase Gamesは6月19日、『ディアブロ イモータル(Diablo Immortal)』の中国向けリリース延期を発表した。公式サイトではゲームの最適化などを理由に挙げているものの、一部メディアは別の原因があるとみているようだ。

Blizzard Entertainment/NetEase Gamesは6月19日、『ディアブロ イモータル(Diablo Immortal)』の中国向けリリース延期を発表した。公式サイトではゲームの最適化などを理由に挙げているものの、一部メディアは別の原因があるとみているようだ。

『ディアブロ イモータル』は、『ディアブロII』と『ディアブロIII』の間の物語が描かれるMMOアクションRPGだ。日本などの地域ではiOS/Android向けに配信中。PC向けにも、オープンベータが実施されている。本作では、シリーズ初となるソーシャルな体験を実装。プレイヤーは、ほかのプレイヤーと共有される広大な世界やサンクチュアリを探索する。最大8人のチームを結成してレイドボスなどに挑戦したり、最大150名が参加可能なクランを結成したりすることが可能。また、陣営ベースのPvPシステムも用意されている。そして、中国において本作は6月23日に配信予定であった。しかしリリースを目前にした6月19日、突如延期が発表されることとなったのだ。


中国向け公式サイトでは、延期の理由としてグラフィックやネットワークなどの最適化を挙げている。また、延期を待つユーザーへの感謝として、リリース後にはすべてのプレイヤーに対し、装備や素材などを含むアイテムパッケージを用意するとのこと。なお、延期後のリリース日程については発表されていない。

一方、公式発表があったにもかかわらず、一部メディアは延期の理由が別にあると推測している。『ディアブロ イモータル』の公式アカウントによる、中国のSNSであるWeibo上のある投稿が関係していると考えているようだ。

Finacial Timesによると『ディアブロ イモータル』のWeibo公式アカウントは5月22日、「熊怎么还不下台」との投稿をしたと伝えている。同紙はこの投稿を「Why hasn’t the bear stepped down(なぜくまは辞任しないのか)」と英訳した。現在この投稿は削除済みで、同アカウントは新たな投稿を禁止されている。Radio Free Asiaでは、そのスクリーンショットを確認できる。

この投稿が問題となった背景に、「くま」が中国でタブー視されているという実態がある。それは2013年に端を発する。同年、中国の習近平国家主席が、当時のオバマ大統領とともに歩いていた画像が、「くまのプーさんとティガーが歩いているようだ」と比喩された。そして、このことはちょっとしたネットミームとなり、「くまのプーさん」は隠れた呼び名として定着してしまうことに。

Image credit:BBC


その後、中国ではプーさんそのものがご法度となってしまった。というのも、中国における国家主席は、ばかげた真似はせず、妙な癖もなく、間違いは犯さない存在とされている(BBC)。そして、そうした存在をくまのようだと表現されることは、中国政府としては好ましくないのだろう。中国内の各SNS上にもそういった方針は反映。プーさんに関連する、少しでも怪しい文面を投稿するだけで、アカウント停止となる恐れがあるようだ。『キングダムハーツ III』のトレイラー発表時には、Weiboにおける有力メディアたちが自主的にプーさんを“検閲”していたことが話題となった(関連記事)。


こうした背景によって、今回の「なぜくまは辞任しないのか」という投稿は、国家主席に対する批判と捉えられてもおかしくないわけだ。Weiboが投稿を削除した理由は明かされていないものの、政治的なメッセージであることに起因すると考えていいだろう。Weibo上で「熊怎么还不下台」と検索した場合にも「関連する法律およびポリシー」に従って、「表示されません」という結果になる。

そしてこの投稿の約1か月後、リリースの3日前になって『ディアブロ イモータル』の中国向けリリースは延期されることになる。延期発表の翌日朝には、NetEase株価が約10%下落。延期の理由が何であれ、同社にとって今回の延期は大きな痛手となった。


一方で『ディアブロ イモータル』の国外の評判が芳しくない関係で、本当に調整のための延期した可能性もあるだろう。同作はモバイル向けに野心的に開発されているものの、既存のハクスラ要素に多くの課金要素を織り交ぜていることで、ユーザーからの批判も多い。Metacriticでは5600以上のレビューが寄せられ、本稿執筆時点でのユーザースコアは0.3。それらの批判のほとんどが課金要素にまつわるものである。そうした前評判から改善を施すために手を打った可能性もあるかもしれない。なお、調査会社のAppMagicは、同作の配信2週間での収益は2430万ドル(約33億円)にのぼると指摘している。

配信を目前に延期となった中国版『ディアブロ イモータル』。本作の、新たなリリース時期は未定。日本を含むそのほかの地域では、現在配信中である。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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