海外NFT業者が「キャプテン翼」のNFTアートを発表。作者の高橋陽一氏らが、無断使用・違法であるとして注意喚起する事態に
サッカー漫画・アニメ「キャプテン翼」の公式Twitterアカウントは6月17日、「キャプテン翼」のNFTアートを違法に取り扱う業者がいるとして、ファンに注意喚起をした。
今回「キャプテン翼」公式アカウントが指摘したのは、Football MetaverseおよびMANGAVERSEというNFT関連業者が発行するとしている「キャプテン翼」のNFTアートについてだ。SNS上の活動を見る限り、同NFTアートについて両社は一体となって行動している模様。Football Metaverseは、「キャプテン翼」のNFTアートを発行するとして、公式サイトおよびTwitterにて大々的に宣伝を繰り返している。
しかし「キャプテン翼」公式アカウントによると、「キャプテン翼」に関するNFTの権利は、株式会社TSUBASAが独占的に管理しており、指摘された上述の両社は権利を有していないという。つまりFootball Metaverseらは、株式会社TSUBASAに無断で「キャプテン翼」のキャラクターの画像にNFTを発行しようとしていることになる。
株式会社TSUBASA代表取締役の岩本義弘氏によると、同社はFootball Metaverseと数か月前からやり取りをし、今回発行するとしている「キャプテン翼」のNFTについては違法・詐欺であると伝えていたそうだ。ただ、その忠告を無視された格好となっており、岩本氏は「強行突破しようとするなんて……凄すぎる」とコメントしている。
*「キャプテン翼」の作者である高橋陽一氏も、海外のファンに向けて注意喚起。
NFT(Non Fungible Token・非代替性トークン)とは、改竄や複製が不可能なデジタル証明書(トークン)の作成や取引を、ブロックチェーン技術を活用しておこなうもの。そして、NFTに画像データを紐づけたものがNFTアートと呼ばれている。近年はゲームにも取り入れる動きが出てきている。
今回の件では、「キャプテン翼」のキャラクターの画像がNFTアートとして販売されようとしている。購入者は、その画像に紐づけられたNFTを所有することができる(画像そのものの著作権などを保有できるわけではない)。とはいえ、そもそも「キャプテン翼」のコンテンツを無断で使用しているとなれば、“偽物のNFT”ということになる。
ただ、Football Metaverseは今年5月、新華投株式会社およびエノキフイルムと協力し、「キャプテン翼」のNFTへの利用についての権利を獲得したと発表していた。権利許諾者とされた新華投株式会社は、アニメ「ほしの島のにゃんこ」などの版権を保有しているようだが、「キャプテン翼」との関連は不明である。
それ以降、Football Metaverseは「キャプテン翼」のNFTアートの発行について宣伝を繰り返してきた。また、元イングランド代表サッカー選手のマイケル・オーウェン氏や、元オランダ代表のヴェスレイ・スナイデル氏がアンバサダーに就任したともアピールされている。「キャプテン翼」は世界的な人気があり、海外のスター選手がファンであるという話もよく耳にする。NFTアートについては、大きな注目を集めていたようだ。
そして今回、「キャプテン翼」関係者からの再三の指摘を受けて、Football Metaverseは6月17日に声明を発表。同社が発行する「キャプテン翼」のNFTアートの権利について、コミュニティの懸念は理解していると述べた。一方で、知的財産権は常に複雑なものであり、作者(高橋陽一氏のことか)とともに今回の問題を明確にするとして、即座に計画を取り下げる考えは示さなかった。同社は、続報を待つようにコミュニティに呼びかけている。
NFTアートにおいては、NFTそのものは複製できないものの、紐づけられたデジタル画像がオリジナルかどうかは証明できない。そのため、権利者に無断でコピーされた画像がNFTアート化され、販売されることが問題視されている。NFTマーケットプレイス大手のOpenSeaは以前、違反行為により削除したNFTの80%が、同社が提供するツールにて作成されたNFTアートであったと報告していたこともある。
【UPDATE 2022/06/20 15:52】上記段落の、OpenSeaによる報告内容を訂正。
今回の一件については、Football Metaverse側としては、正規に許諾を受けて発行する「キャプテン翼」のNFTアートであるという認識のようだ。ただ、権利者である株式会社TSUBASAが認めていない以上は、発行するNFTアートは偽物ということになる。なぜこのような事態となったのか、Football Metaverseからのさらなる説明が求められる。
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