『ポケモン』ダイパリメイクのパッチールに“出禁問題”が発生。ぶちパンダポケモン、ホームから入出園拒否される

株式会社ポケモンは5月23日、クラウドサービス「Pokémon HOME」において、ポケモンであるパッチールのタイトル間移動に制限があると明らかにした。ぶちパンダポケモンが“入園拒否”された背景とは。

株式会社ポケモンは5月23日、クラウドサービス「Pokémon HOME」において、ポケモンであるパッチールのタイトル間移動に制限があると明らかにした。ユーザー検証によれば、パッチールを封じ込めたのは、その特徴的なぶち模様にまつわる技術的障壁のようだ。


「Pokémon HOME」は、“すべてのポケモンが集まる場所”を謳い文句に、『ポケットモンスター』シリーズ作品や『ポケモンGO』と連携。各タイトルで仲間にしたポケモンを預けたり、引き出したりできるクラウドサービスだ。同サービスは5月19日にアップデートを配信。『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール(以下、ポケモンBDSP)』および『Pokémon LEGENDS アルセウス』との連携に新たに対応し、両作からポケモンを出入りさせられるようになった。

出禁扱いのぶちパンダ

しかし、そこには例外があったようだ。ぶちパンダポケモンの「パッチール」である。パッチールは『ポケットモンスター ルビー・サファイア』にて初登場したポケモンで、可愛らしいぶち模様とゆるいキャラクターが特徴だ。「Pokémon HOME」アップデート配信後には、コミュニティからパッチールの移動に関する問題の報告が多発。「『ポケモンBDSP』からパッチールを「Pokémon HOME」へ預けられない」との報告が投じられていた。

また、パッチール自体はアップデート以前にも、別サービス経由で「Pokémon HOME」への移動が可能だった。そちらについても、「過去作から「Pokémon HOME」へ預けたパッチールを『ポケモンBDSP』で受け取れない」との報告がなされている。5月23日には、公式Q&Aにて上述の現象を認める旨の回答がなされている。すなわち『ポケモンBDSP』と「Pokémon HOME」間のパッチール移動制限は、意図的な仕様ということだ。



なぜ出禁になったのか

なぜ、パッチールがこのような“出禁措置”を食らってしまったのだろうか。ユーザー検証によれば、その原因はパッチールの特徴であるぶち模様の仕様にありそうだ。パッチールの外見グラフィックのぶち模様は、個体ごとに変化する。この仕様はポケモンのなかでも特殊だ。そして、ぶち模様の配置を決定しているのは、「暗号化定数(性格値)」と俗に呼ばれる内部数値であるとされている。この暗号化定数および性格値は、ポケモンが生成される際に決定される、いわゆる隠しパラメータである。この数値は、ポケモン個体それぞれのデータにこっそりと格納されている。



この性格値は、16進法で表記するなら「12 34 AB CD」といった数列となる。間にスペースを入れて表記したのは、2桁ごとに「1バイト」と呼ばれる単位になっているからだ。性格値の定数全体では、1バイトの数値が4つ集まり、ひとつのグループになっている。ゲームや「Pokémon HOME」は内部でこの数列を解釈し、パッチールのぶち模様の配置に反映しているわけだ。一方で、このグループの並び順には、複数の種類がある。

そのひとつが、「ビッグエンディアン」と呼ばれる手法だ。グループ全体として、桁の大きい数字から並べていく手法であり、「12 34 AB CD」はこれにあたる。一方で、「リトルエンディアン」もあり、こちらでは桁の小さい数字から並べていく。この場合の記述は、「CD AB 34 12」となり、ビッグエンディアンとは逆順に数値を読み取っていくのだ。このルールはハードウェアやソフトウェアごとに違う。しかし、内部的に数値を扱う順番を変えることによって、数値の並び順があべこべにならないようにしているわけだ。

そして、有志による検証結果によれば、パッチールを含む第5世代以前のポケモンの内部データはリトルエンディアンの規則に則って記述されている。一方で、『ポケモンBDSP』はビッグエンディアンとして、ポケモンの性格値を読み取ってしまうとの報告がある。つまり、本当は逆順に解釈してほしい「CD AB 34 12」というデータを、『ポケモンBDSP』はそのまま受け入れてしまうと見られる。そうなると、パッチールのぶち模様は哀れにもあべこべと化してしまうわけだ。そうした不具合もあり、今回『ポケモンBDSP』と「Pokémon HOME」間でのパッチール移動に制限が課されたのだろう。その特徴的なぶち模様ゆえに、『ポケモンBDSP』のパッチールは同作に閉じ込められ、「Pokémon HOME」のパッチールもホームから出られなくなってしまったようだ。

SNS上では「『ポケモンGO』から「Pokémon HOME」へのパッチールの移動ができない」との報告も見られる。この現象について編集部が検証したところ、たしかに両プラットフォーム間での移動が不可能であることが確認できた。こちらも、ポケモンデータの数列解釈の違いによる影響かもしれない。

【UPDATE 2022/05/04 17:50】
『ポケモンGO』からの移動に関する記述を修正



ツチニンも出禁

そして、パッチールのほかにも、したづみポケモンであるツチニンの移動にも問題があるとの報告がある。こちらも公式見解が明らかにされており、『ポケモンBDSP』で捕まえたツチニンは、「Pokémon HOME」経由でのほかタイトルへの移動ができず、『ポケモンBDSP』にしか移動できないとのこと。また、『ポケットモンスター ソード・シールド』で捕まえたツチニンも同作にしか移動できない一方で、『ポケモンGO』や「ポケモンバンク」から「Pokémon HOME」に移動したツチニンは、『ポケットモンスター ソード・シールド』に移動可能とのこと。ツチニンは、進化すると2体のポケモンに分かれる。こちらも珍しい仕様であり、これが災いして移動制限が課された可能性は高いだろう。

「Pokémon HOME」への移動制限により、『ポケモンBDSP』でパッチールを手に入れるには、227番道路での大量発生を待つしかない状況だ。また、『ポケモンBDSP』への移住を「Pokémon HOME」で待ち構えていたパッチールたちやトレーナーの落胆は計り知れない。この“パッチール出禁問題”に、なんらかの解決策がもたらされることを祈りたい。



※ The English version of this article is available here

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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