『エルデンリング』を“重量過多”のままクリアした褪せ人が出現。マゾヒスティックな快感極まる
『エルデンリング』に、操作に大幅な制限が加わる“重量過多縛り”で挑みクリアしたプレイヤーが現れた。ただでさえ高難度な本作の縛りプレイでは、さまざまな苦難に直面したようだ。しかし、そうした苦難を工夫で乗り越えていく達成感も感じさせるチャレンジとなっている。本稿には、『エルデンリング』のネタバレになりえる記述が含まれるため、留意されたい。
『エルデンリング』は、フロム・ソフトウェアが手がけたアクションRPGだ。本作には装備重量システムがある。用意された多彩な武器・防具には、それぞれ重量が設定されている。プレイヤーキャラには装備重量の制限も設定されており、装備できる量が決まっているのだ。装備重量の制限は、能力値などに応じて変動する。また、重量制限に占める装備の重さで、プレイヤーキャラの運動性能が変化するのだ。
たとえば、装備の重さを制限重量の30%以下に抑えれば「軽量」となり、軽快なローリング回避などが可能。重量70%以下では「中量」となり、標準的な動きになる。そして、装備重量が70%を超えると「重量」となりローリングも重鈍に。さらに、装備重量が100%を超える重量過多となると、ペナルティ状態となってしまう。具体的には、ローリングをしようとするとよろけて無防備に。基本アクションであるジャンプやダッシュも不可能となるばかりか、普通の歩行でさえノロノロと緩慢な足運びになってしまう。しゃがみ移動や霊馬への騎乗などは可能なものの、戦闘では回避に困り、探索でも機動性が制限されるおそろしい状態なわけだ。
しかし、そんな重量過多状態にて本作をクリアしてしまったプレイヤーが現れた。YouTuberのIron Pineapple氏である。同氏はかねてより『ダークソウル』シリーズ関連のコンテンツで知られており、本作『エルデンリング』でも「霊体などに戦闘をすべて任せてクリアに挑戦」「レベル1でクリアに挑戦」などのプレイを実施してきた人物だ。
まず、Iron Pineapple氏は重量過多状態を作るため、ゲーム開始直後のセーブデータを編集し「重り」となる武器を追加している。こちらはあくまでも重量を稼ぐためであるため、攻略には利用していないようだ。同氏が最初に直面した困難は、移動速度の遅さだ。ほとんど忍び足レベルの速度であるため、序盤の篝火「関門前」に至るまでの道程さえ無限に感じる。同氏は「禅の心」でもって、この気が狂いそうな牛歩状態を受け入れたとのことだ。やっと「関門前」に到達し、メリナから霊馬トレントを譲り受けたIron Pineapple氏は驚愕の決断をする。乗れるのに乗らないというのだ。トレントは圧倒的な機動性をプレイヤーにもたらす。同氏はあえて苦しむため、そして今回の制限がどのようにゲームプレイに影響を与えるかを確かめるために、“どうしても絶対に必要となるまで”乗らないとの決意をしたようだ。
そして、困難がさっそく訪れた。通常であればトレントで敵を無視して進める場所を、のっそりと歩いて通るしかなくなるのである。関門を通ろうとしたIron Pineapple氏の行く手は、巨人に阻まれることとなった。同氏はこれを釣り出して地道に倒し、どうにか関門を突破している。戦闘については通常のローリングが不可能な関係上、盾をフル活用する戦術にて進めている。また、意外な発見として、重量過多状態でもダウン後からの復帰ローリングは可能なようだ。同氏はマルギット戦にてこの発見を活用し、あえて「寝て待つ」ことによって、復帰ローリングで大技を回避するテクニックを見せている。
ほかにも、重量過多による困難は枚挙にいとまがない。まず、ジャンプができない影響は予想外に大きかった。なにせ、ちょっとした段差を登れないために、目の前の段差の上のお宝に手が届かないこともある。また、ストームヴィル城についても、ジャンプ不可で迂回路が使えないため、矢が雨のごとく降り注ぐ猛反撃を受ける正門を、地道なプレイでどうにか押し通っている。しかし、そうした難所を重量過多で乗り越える喜びは、通常プレイとは違う喜びをもたらすと、Iron Pineapple氏は語っている。筋金入りである。一方で、本作は意外なほど徒歩でいろいろな場所が登れることも明らかに。樹木をヨロヨロと登ったり、ちょっとした段差を活用したりと涙ぐましい努力を見せている。
戦闘における難所としては、ラダーン戦がある。こちらでは、ラダーンが開幕から放ってくる矢がネックとなった。この矢は防御すると、プレイヤーが大きくノックバックしてしまうのである。つまり、回避もままならない重量過多プレイでは矢を受けるしかなく、あたかも「1歩進んで2歩下がる」のような無限地獄に陥ってしまうのだ。さすがのIron Pineapple氏も止むを得ず、戦技「クイックステップ」を投入。戦技による回避を利用してラダーンに迫るも苦戦を強いられた。最終的に同氏は、ラダーンの体力を半分まで減らして水中に誘う戦法を取った(関連記事)。ややズルい手法ではあるものの、同氏は満足したと語っている。
また、本作ではどうしてもジャンプ相当の方法を利用しないと進行できない箇所もあるようだ。そうした場所でIron Pineapple氏は1度だけトレントのジャンプを利用したものの、後に「ヒップドロップ」の存在に思い至る。同氏はヒップドロップのジャンプ様の挙動を、ジャンプによる進行が必須の場所や、「指紋石の盾」獲得への道のりで利用している。同氏はいろいろと戦術を変え、最終ボスのもたらしたあまりにも辛い状況では「クイックステップ」などに頼りつつも、最終的に『エルデンリング』を重量過多状態のままクリアしている。戦技などの利用はあったものの、重量過多状態には違いない。常人であれば移動時間のみで精神をやられる見事なチャレンジだったといえるだろう。
Iron Pineapple氏の動画では、ほかにもさまざまな工夫で重量過多のペナルティを掻い潜っている。そうした工夫が成功したり、失敗したりする様子も今回のチャレンジの見どころだ。『エルデンリング』発売から約2か月が経ち、本作のさまざまな楽しみ方が見出されている。今後も興味深い遊び方が、褪せ人たちの手によって提示されることだろう。
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