「配信者は人気ゲームに乗り換えた方が視聴者数は増えるのか?」統計から分析する論文が公開。ゲーム論文大賞2022、優秀賞に選ばれる 

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株式会社メディアクリエイトは4月18日、「ゲーム論文大賞 2022」の受賞者を発表した。優秀賞として、配信技術研究所株式会社(以下、配信技研)および中村鮎葉氏の共著「国内ゲーム実況ライブ配信におけるチャンネルのコミュニティ的性質の統計分析」が選ばれた。 

ゲーム論文大賞 2022は、2021年8月から今年1月にかけて募集された懸賞論文募集。ゲーム産業に携わる個人・グループを対象に、コンシューマー、PC、モバイル、経営論、e スポーツ、ゲーム実況、社会経済への影響などを広くテーマとして募集した。結果として、今回の募集で大賞は該当作なし。優秀賞として、配信技研および中村鮎葉氏の論文が選ばれた。 

配信技研は、インターネットライブ配信技術を開発する国内企業。国内ライブ配信に特化したデータアーカイブ「GikenAccess」を提供している。今回の論文における統計データもGikenAccessが用いられた。一方、中村鮎葉氏はTwitchの国内社員で、eスポーツ大会「ウメブラ」を主催する一般社団法人 令和トーナメント理事。もともと「アユハ」の名前で『大乱闘スマッシュブラザーズ』プレイヤーとして活動していたことでも知られる。 
 

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受賞した論文で展開されるのは、「ライブ配信はストリーマーを中心としたコミュニティ的性質に根ざしている」とする仮説の分析だ。つまり、チャンネルの盛り上がりは扱うコンテンツよりも、ストリーマーと視聴者との繋がりに依拠するところが大きいとの論旨である。この仮説は、「チャンネルの盛り上がりは視聴者との接点が要因で成長する」「人気タイトルをプレイしてもそのチャンネルの盛り上がりが成長する訳ではない」という2本の柱を軸に展開された。配信技研と中村氏は仮説について、統計を用いて分析を試みている。 

最初に論文では、タイトルごとの分析をおこなった。2021年9~11月の3か月分を集計し、5000タイトル以上が観測されている。まずタイトルが発信された時間(=コンテンツ供給量)と視聴者数の関係を分析したところ、グラフはばらけてしまい、相関は見られなかった。つまり、ライブ配信をする際にどのタイトルを選んでも、自分が得られる同時視聴者数が増えるとはいえないわけだ。一方で、配信時間と視聴時間にてタイトルを分析したところ、グラフに相関が見られた。つまり、あるタイトルのコンテンツ供給が増えると、チャンネルごとの平均同時接続者数が増えるわけではないが、タイトル全体の盛り上がり(視聴時間)は上がるものといえるわけだ。 
 

Image Credit : Sharad kachhi

 
とはいえ、これだけでは仮説を証明することはできない。人気タイトルをプレイすることで、そのタイトル全体が盛り上がるとはいえるものの、自身のチャンネルにタイトルが影響を及ぼすとはいえないためだ。そこで配信技研と中村氏は、次にチャンネルごとの分析をおこなっている。「配信時間の長いストリーマーの視聴時間が成長するかどうか」を調べるため、配信時間が月に30時間を超えるストリーマーの視聴時間の変化について調べたのだ。その結果、配信時間が月に30時間を超えるストリーマーは、超えないストリーマーよりも視聴時間・平均同時視聴者数が増え、チャンネルが成長していることが分かった。「チャンネルの盛り上がりは視聴者との接点が要因で成長する」という1つ目の仮説が裏付けられたわけだ。 

続いて検証されたのは、「人気タイトルをプレイしてもそのチャンネルの盛り上がりが成長する訳ではない」という2つ目の仮説だ。配信者であれば、一度は「自分が今プレイしているタイトルよりも、人気タイトルに乗り換えた方がチャンネルは成長するのでは?」と考えたことがあるだろう。この発想が真実かどうかを統計で確かめたのだ。 

配信技研と中村氏らは、ある人気タイトルAについて、「2021年7~9月、10~12月にかけてA以外をプレイし続けたチャンネル」と、「2021年7~9月はA以外をプレイし、10~12月にかけてはAをプレイしたチャンネル」について比較した。人気でないタイトルをプレイし続けたか、途中で人気タイトルに乗り換えたかで比べてみたわけだ。その結果、途中で人気タイトルに乗り換えたチャンネルよりも、最初からプレイしていたタイトルを続けていたチャンネルの方が、成長が大きいということが分かったという。つまり自分が今プレイしているタイトルを続けた方が、一番人気のタイトルへ乗り換えるよりもチャンネルは成長するという傾向が述べられる、と論文では結論付けられている。仮説の2つ目が検証されたわけだ。 
 

Image Credit : Caspar Camille Rubin

 
以上の検証を通じて、配信技研と中村氏らは、「チャンネルの盛り上がりは視聴者との接点が要因で成長する」、「人気タイトルをプレイしてもそのチャンネルの盛り上がりが成長する訳ではない」、よって「ライブ配信はコミュニティ的性質に根ざしている」という結論に着地している。 

統計を通じてさまざまな知見が得られた今回の論文。とはいえ、留意しておくべき点もありそうだ。「人気タイトルをプレイしてもそのチャンネルの盛り上がりが成長する訳ではない」という検証については、2021年7~9月、10~12月にかけての期間を対象としている。つまり、「タイトルを切り替えた直後」しか検証の対象になっていないわけだ。たしかに、人気でないタイトルから人気タイトルへ切り替えた直後は、以前のコンテンツを期待していたユーザーが一時的に離れることもあるだろう。一方、長く人気タイトルの配信を続けていれば、それを上回る新規視聴者がつく可能性も否定できない。今後の研究では、より長いスパンでの検証も必要とされてきそうだ。 

「国内ゲーム実況ライブ配信におけるチャンネルのコミュニティ的性質の統計分析」は、ゲーム論文大賞 2022のページより読むことができる。掲載期間は9月末までの予定だ。 



※ The English version of this article is available here

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