『Grand Theft Auto V(以下、GTAV)』および『GTA Online』次世代機版における、オリジナル版からの変更点に注目が集まっている。トランスジェンダー嫌悪的とされたNPCやゲーム内オブジェクトが削除されたと見られるのだ。海外メディアThe GamerやVGCが伝えている。
『GTAV』はRockstar Gamesが手がけ、2013年にリリースしたオープンワールドアクションゲーム。3人の男たちによる、山あり谷ありのクライムストーリーが描かれる作品だ。本作にはオンラインゲーム『GTA Online』も同梱されており、こちらではプレイヤーが、オンラインにてロスサントスの街で思い思いに時間を過ごせる。両作ともに長寿人気作品であり、今年2022年3月には、PS5/Xbox Series X|S向けの次世代機版がリリース。パフォーマンスやグラフィックの向上などを盛り込んでいる。
ところが現在、次世代機版におけるとある変更点をユーザーが発見・報告し、注目を集めている。具体的には、一部コミュニティから「トランスジェンダー嫌悪的(Transphobic)」とされたコンテンツが消えているというのだ。MtF(平易にいえば、肉体は男性性を割り当てられたものの、性自認が女性)のトランスジェンダーにまつわるコンテンツが対象となっている様子だ。まず、4月6日には海外掲示板Redditにて、ユーザーJay Prospero氏が、ゲーム内オブジェクトのフィギュアが消失していると報告。次世代機版においては、PS4版にあった「Interstellar Transgender(星間トランスジェンダー)」なるフィギュアがなくなっていると投稿した。また、同オブジェクトには、「性器は取り替え可能」なるジョークも記載されていたという。
【UPDATE 2022/04/18 14:12】
記事初版にて、MtFについての説明をFtMとしておりました。修正し、お詫び申し上げます。
続いて、4月8日にはユーザーKirsty Cloud氏がほかの変更点について伝えた。Cloud氏は、『GTA』シリーズ関連コミュニティの管理者だ。同氏のツイートによれば、ゲーム内のナイトクラブ「Cockatoos」で見られた女装したNPCについても、姿を消しているとのこと。ディレクターモードでは依然として女装したNPCを呼び出し可能ではあるものの、会話については削除されている様子だ。
こうした変更に影響を与えた可能性が濃厚なのが、Rockstar Gamesに寄せられた公開状である。英国のゲーム産業従事者によるLGBTQ+コミュニティOut Making Gamesは昨年9月、Rockstar Gamesに向けて公開状を送付。本作の次世代機版からトランスジェンダー嫌悪的な要素をなくすよう要望していた。同公開状では、『GTAV』作中では意図的にトランスジェンダーの有害なステレオタイプが提示され、プレイヤーが反感を抱くような描かれ方がされていると主張している。そのなかでは、上述のNPCと見られるキャラに対する言及もあった。こうした意見を受けて、Rockstar Gamesが次世代機版にて対処した可能性もあるだろう。
一連の変更については、上述のツイートへの反応などSNS上で賛否の声があがっている。まず否定的意見としては、「『GTA』シリーズはあらゆる存在をネタにするから面白いのだ」との声が多数ある。人種や性別関係なく、等しく暴力や無礼に晒すゲームの作風なのだから、トランスジェンダーだけを特別扱いするなとの意見だ。一方で、ゲーム内でのステレオタイプ的表現への配慮は仕方ないとの意見も寄せられている。こちらの声は、トランスジェンダーは実際の現実にて多くの差別に晒されていると言及。そうした現状において、差別を助長しかねないステレオタイプ的表現の削除は、致し方ないとの見解のようだ。
『GTAV』は2013年とやや古めの作品であり、シリーズを通じて内容の過激さでも知られている。今後も、こうした指摘などが寄せられる可能性はあるだろう。Rockstar Gamesは今後どのように現在の倫理観とバランスを取り、過激な体験を提示していくのだろうか。