デベロッパーのCrows Crows Crowsは4月12日、『The Stanley Parable』のSteamストアページに仕掛けたイタズラがバレたと報告した。なかなかシュールな事件となっている。
『The Stanley Parable』は、2013年にリリースされたアドベンチャーゲーム。プレイヤーは主人公Stanleyとなり、ナレーターの言葉に従ったり、あるいは逆らったりしながらオフィス脱出を目指す。ユーモア溢れる独特の世界観が魅力の作品だ。同作のリメイク版『The Stanley Parable: Ultra Deluxe』も発売を間近に控えており、コンテンツの追加やビジュアル面の向上なども盛り込んで今月4月27日に発売予定である(関連記事)。
今回、リメイク版の開発元であるCrows Crows Crowsが明かしたのは、オリジナル版『The Stanley Parable』Steamストアページへのイタズラとその発覚だ。同スタジオのTwitter投稿によれば、オリジナル版ストアページは同スタジオの手によって「メインイメージにお料理タレントの姿が徐々に浮かび上がる」というイタズラがなされていたという。イタズラのネタに使われたのは、Guy Fieri氏。同氏はレストラン経営者として成功を収めた後、料理関係テレビ番組のMCとしても活躍。トゲトゲ頭が特徴で、インターネットミームとしても親しまれる人物だ。そして、『The Stanley Parable』とはまったく関係ない。
ではなぜ、無関係のFieri氏がメインイメージに浮かび上がることとなったのか。Crows Crows Crowsによれば、事の発端は数か月前、同スタジオにオリジナル版『The Stanley Parable』Steamストアの管理者権限が付与されたことだという。Crows Crows Crowsはあくまでもリメイク版の開発元。オリジナル版ページの権限付与は手違いかと思われる。
管理者権限を得た同スタジオは、Fieri氏の画像をオリジナル版『The Stanley Parable』のメインイメージに追加することを決断。最初はFieri氏を限りなく透明にして仕込み、時間を経て徐々に不透明のFieri氏にしていったそうだ。なぜFieri氏が素材として選ばれたのか、Crows Crows Crowsからの公式発表はない。そして4月12日、この意味不明なイタズラが発覚。犯人ことCrows Crows Crowsは「彼らにバレて、元に戻させられた」と語っている。
また、犯人Crows Crows Crowsは『The Stanley Parable』に“ちょっとしたフレーバー”を追加し、被害を与えたことについて謝罪。一方で、「でも正直、管理者がこっちに権限与えたのが悪くない?」とふてぶてしく語っている。本来であればSteamページ改ざんは由々しき自体である。とはいえ、この珍事はジョーク的に捉えられている。というのも、Crows Crows Crowsはオリジナル版『The Stanley Parable』開発者のひとり、William Pugh氏が設立に携わったスタジオだからだ。
『The Stanley Parable』はもともと『Half-Life 2』の無料Modとして、開発者のDavey Wreden氏により2011年に公開された作品だ。その後に同作は、開発者Pugh氏の目に留まった。Wreden氏とPugh氏はスタジオGalactic Cafeを立ち上げ、Mod版『The Stanley Parable』に手を加えた単体版を開発し、2013年にリリースした。その後に、Pugh氏はCrows Crows Crowsをほかの開発者とともに立ち上げ。『Dr. Langeskov, The Tiger, and The Terribly Cursed Emerald: A Whirlwind Heist』などのアドベンチャーゲームを世に送り出している。つまり、Crows Crows Crowsは単なるリメイク担当ではなく、『The Stanley Parable』に深く携わった人物によるスタジオなのである。
一方のWreden氏については、Pugh氏とは別に『The Beginner’s Guide』を手がけ、新作を開発中。また、同氏は今回のリメイク版『The Stanley Parable: Ultra Deluxe』にも携わっており、SNS上でのやりとりなどからは、Pugh氏とのトラブルなどの気配もない。つまり、今回の意味不明なSteamページへの工作は、ある意味身内の間でのイタズラと考えられる。実際の実行犯はいったい誰なのか、オリジナル版『The Stanley Parable』のSteamストア管理者が誰なのかは不透明だ。
また、今回のイタズラ報告は、多くのユーザーの注目も集めた。上述の“犯行自供ツイート”は1万4000RT以上を集め、ユーザーからのコメントも多数寄せられている。「お料理タレントが徐々に浮かび上がる」という意味不明さがウケたのか、イタズラを面白がる声が大半のようだ。また、『The Stanley Parable』自体が、不条理なユーモアなどを多数盛り込んだ作品でもある。意味の分からないイタズラが発生しても、作品の世界観を壊すどころか沿っているとの見方もできるだろう。今回の一騒動は、一種いい宣伝になったかもしれない。なお、オリジナル版のSteamDBにおけるストア変更履歴は変更があったかどうかやや疑わしい記述となっている。つまり、すべてが“狂言”である可能性もあるわけだ。いずれにせよ、Crows Crows Crowsは油断ならぬトリックスターである。
『The Stanley Parable: Ultra Deluxe』は4月27日、PC(Steam)にて発売予定。また、発売後に日本語対応を進め、国内コンソール版も展開予定だ。海外版の対応コンソールはPS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X/Nintendo Switchとのこと。