『クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズ エディション』が、発売から数日にして厳しい評価に直面しているようだ。PC版はSteamユーザーレビューなどで厳しい意見が寄せられたほか、コンソール版についても問題点が指摘される状態だ。その原因となったのは、ゲームのパフォーマンス問題のようだ。
『クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズ エディション』は、初代PlayStationで1999年に発売された『クロノ・クロス』のリマスター版だ。傑作と名高いRPG『クロノ・トリガー』に続く作品として、ふたつの世界をまたぐ壮大な冒険が描かれる。本作Steamページによれば、リマスター版の開発元としてはスクウェア・エニックスのほか、レトロゲームの復刻などで知られるD4エンタープライズの名前が記載されている。
今回のリマスター版では「3DモデルのHD化」「キャライラストリファイン」「BGMの音質向上」などが盛り込まれた。また、敵エンカウントON/OFF機能やバトルを楽にする機能など、遊びやすさを向上させる機能も追加。そのほか、本作シナリオの原型となったサウンドノベル『ラジカル・ドリーマーズ -盗めない宝石-』も収録されている。PS4/Xbox One/Nintendo Switch向けには今年4月7日に、PC(Steam)向けには4月8日に発売。公式Twitterアカウントでは、ユーザーからの質問にもマメに回答するなどニーズにしっかり応えた作品になるかと思われた。しかし、本作は早速ファンからの厳しい評価に直面しているようだ。
本作のSteamユーザーレビューは、記事執筆現在656件の投稿を集め、評価は好評が49%に留まる「賛否両論」ステータス。国内外のユーザーから否定的な意見が投じられる状況だ。そして、問題点としてとりわけ指摘が目立つのが、本リマスター版のパフォーマンスにまつわる問題だ。具体的には、戦闘時や一部シーンなどでフレームレートが急激に下がる現象が報告されている。また、この現象はPC版のみならず、コンソール版でも発生しているようだ。YouTubeなどでゲームソフト/ハードの技術的分析を提供しているDigital Foundryが、本作についての分析結果を公開している。
Digital Foundryは、今回のリマスター版は「初代PSよりもパフォーマンスが悪い」とまで言い切っている。実際に検証動画を確認してみると、PS4への後方互換性を用いたPS5における動作では、初代PSのオリジナル版よりもフレームレートがおおむね低下しがちとの結果が出ている。また、Nintendo Switch版においても同様の傾向が見られたようだ。オリジナルのPS版の方が描画解像度は低いものの、安定して動作するといえる結果のようだ。一方で、リマスター版では描画をオリジナル版に近くするクラシックモードに切り替えると、フレームレートが比較的改善するとも伝えられている。
なお、本作PC版においては、「アンチエイリアス設定を変更するとフレームレートが改善した」とのユーザー報告のほか、GPUコントロールパネルからの設定変更により改善したとの声もある。いずれにせよ、しばらくはユーザー側で対処するしかないようだ。こうしたパフォーマンス問題が発生した背景には、『クロノ・クロス』が移植難易度の高い作品だったという背景もあるだろう。本作公式TwitterアカウントによるQ&Aでは、「オリジナル版のプログラムやグラフィックデータが完全な状態でなかった」と開発の苦労を伝えている。リマスターにあたっては、かなりの部分を手探りで再構築したと思われ、そうした苦心がパフォーマンス問題として表出してしまった可能性はありそうだ。
なお、オリジナル版に携わった本根康之氏も、こうした問題についてTwitter上でコメントしている。本根氏は『クロノ・クロス』においてアートディレクターなどで携わり、現在モノリスソフト取締役を務めている人物だ。同氏によれば、オリジナル版の『クロノ・クロス』は可変フレームレート仕様により、フレームレートにまつわる問題でプレイに支障が出ないよう、プログラマーたちが頑張っていたと伝えている。当事者による貴重な証言だ。上述のQ&Aによる回答と合わせると、オリジナル版の素晴らしい職人芸が、ソースコードの散逸などによりかえって課題となった可能性もありそうだ。
パフォーマンス問題により、やや苦しい滑り出しとなった『クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズ エディション』。現状では、ユーザー側の設定にて緩和を図るしかないようだ。奇しくも、Steamで発売された『クロノ・トリガー』もまた、発売時にはグラフィックを含めた最適化不足に直面し、ユーザー評価を大きく下げた。その後同作向けにはアップデートが実施。改善が施され評価は持ち直している。同様の対応があることを期待したい。
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