『Cuphead』がCMで米保険会社とコラボ。トカゲと組んでボスを撃破、マグマンはどこいった

 

米保険会社のGEICOは3月29日、2Dアクションゲーム『Cuphead』とのコラボコマーシャル映像を公開した。主人公であるCupheadと、GEICOのマスコットであるGEICO Gecko(トカゲ)が組んでボスを撃破。保険会社の乗り換えを促す内容となっている。

『Cuphead』は、横スクロールの2Dシューティングアクションゲームだ。1930年代のカートゥーンをモチーフにしたビジュアルスタイルと、歯ごたえある難易度を特徴としている。2017年にリリースされた本作は各所にて非常に高い評価を獲得し、2020年7月時点で600万本を売り上げている。また、今年2月には『Cuphead』を原作とするNetflixアニメ「ザ・カップヘッド・ショウ!(The Cuphead Show)」が配信されるなど、人気を誇っている。


そんな『Cuphead』が、なぜか米国の保険会社とコラボレーション。手のこんだコマーシャル映像で英語圏ユーザーを困惑させているようだ。実際に映像を見てみると、主人公であるカップヘッドが見慣れぬお喋りなトカゲとバディを組んでいる。本作は2人プレイに対応しており、本来であればCupheadの相棒は、青いズボンと鼻が特徴的なキャラであるマグマンのはずだ。彼は一体どこにいったというのだろう。視聴者の困惑をよそに、保険会社の刺客であるトカゲは軽妙なトークを繰り広げる。

トカゲは一見可愛いボス(Cagney Carnation)の豹変ぶりに怯えつつも、突如としてセールストークを開始。「GEICOに保険を切り替えれば、お得になる」との情報を伝えたくて仕方ないようだ。トーク内容の浮きっぷりはともかく、トカゲの姿は『Cuphead』のスタイルを見事に踏襲している。絵柄も動きも本作によく合うカートゥーン調で描き込まれており、原作に登場してもおかしくない程だ。まくしたてる口上も、内容はともかくテンポがよく聞き入ってしまう。さすが営業マン代表たるマスコットである。この動画を紹介したTwitterアカウントには、海外ユーザーから「そんな馬鹿な」といった驚きの声も寄せられている。海外の視聴者にとっても異色のコラボレーションだったようだ。

ただし、GEICOがゲーム作品との異色のコラボレーションで注目を集めたのは、今回が初めてではない。まず、2021年にはモバイルゲーム『Angry Birds』とのコラボを果たし、コマーシャル動画を公開。家に鳥がガンガン飛来して困っている夫婦を主人公に、「GEICOのおかげで住宅保険と自動車保険を一本化してお得に」と語らせている。そして今年2022年初めには、パズルゲーム『Portal』とコラボレーション。こちらではマスコットのトカゲが軽妙なトークを見せている。狭い空間に閉じ込められポータルが現れるという異常な状況にもかかわらず「GEICOに切り替えて節約するのは簡単」とのアピールをねじ込んでいる。営業マンの鏡である。

なお、GEICOは1936年創業で約86年にわたる歴史があり、米国有数の保険会社である。その一方で、こうした突飛なコマーシャル戦略でも知られているのだ。トカゲについてもGEICOの“顔”としてさまざまな姿を見せており、ゴルフをしている様子や、ラズベリージャムを作る様子などがGEICO公式YouTubeチャンネルで確認できる。こうして見ていると可愛らしく、親しみが湧いてくる。それこそGEICOのイメージ戦略なのだろう。

また、『Cuphead』がコラボ先となったのも、同作の人気ゆえに宣伝効果が見込まれたとも考えられる。30年代カートゥーン調のスタイルは、GEICO創業期のエンターテイメントの姿でもある。トップ営業マンたるトカゲも、ちょっとしたタイムスリップ気分だったかもしれない。彼が、趣の異なる人気ゲームにお邪魔する日も楽しみにしたい。