『エルデンリング』の“ゴロゴロ前転”戦技で犠牲者続出。相手を圧倒する、ひつじ直伝ローリングサンダー
『エルデンリング』にて、とある技が国内外プレイヤーたちの注目を集めている。一見コミカルにでんぐり返しをするだけの攻撃が、流行とミーム化の気配を見せているのだ。その背景には、ユーザー制作のコミカルな動画と意外な性能があったようだ。本稿には、『エルデンリング』中盤以降のエリア画像や戦技名が含まれるため留意されたい。
『エルデンリング』は、フロム・ソフトウェアが手がけたアクションRPGだ。本作には、武器に必殺技的なスキル「戦技」を付与できる戦灰システムがある。戦技は基本的にFPを消費して発動し、多彩な攻撃を繰り出したり、あるいは攻撃力上昇などの恩恵を受けたりできるのだ。スタイルに合った性能の戦技を選ぶも、単に見た目のかっこよさや面白さで選ぶもプレイヤーの自由。話題になった戦技としては、威力と燃費ゆえに下方修正を受けてしまった「霜踏み」などがあった。
そして最近、突如として脚光を浴びだした戦技が「雷の羊」だ。この戦技の挙動は極めてシンプルで、「雷を纏って転がる」だけである。本作の羊には、攻撃や闘争の際に転がる習性がある。また、特定地域の羊は黄色い見た目をしており、転がる際には雷ダメージを発生させる。雷の羊は、そうした羊の姿に倣った戦技であり、作中でも「前転する羊を師とする」と明記されているのだ。発動の際には、プレイヤーキャラが人間から出ているとは思えない声で「メェー」と鳴き、羊になりきってごろごろと前転する。また、追加入力でどこまでも転がり続けることが可能だ。ただ、どこか牧歌的で頼りない見た目ではある。
しかし、そんな雷の羊は以前からしばしば一部ユーザーの話題にのぼっていた。というのも、この戦技は見た目と裏腹に、一部敵との戦闘や対人戦において、かなりの強さを誇るのである。そのため、かねてから国内SNS上などでも言及される存在ではあった。そして3月19日に、さらに雷の羊への注目度を高める動画がアップロードされた。YouTuberであるMarco Yolo氏の『エルデンリング』コスプレプレイ動画である。
Marco氏が公開したのは、セガの『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の主人公であるソニックに扮しての対人戦プレイの様子だ。同氏はキャラクターを真っ青に染め、体毛でソニックの毛並みを表現。トレードマークの手袋や顔周りの配色も再現するなど、かなりこだわってソニックになりきっている。ただ、なりきっているだけで、実際はおかしな色をしたほぼ全裸の男性である。ソニックが仮装の対象として選ばれたのは、同キャラの得意技であるスピンアタックやスピンダッシュと、雷の羊の類似性からだろう。ニセソニックは打撃武器セスタスに雷の羊をセットし、意気揚々と『エルデンリングの』対人戦に挑んでいる。
同動画のなかでニセソニックは、スピンアタックこと雷の羊や打撃を駆使して、数々の勝利をもぎ取っている。やられた敵プレイヤーたちを見てみると、みんな逃げるに逃げ切れず、かといって反撃しようとしてもひるんでしまっている様子だ。たしかに、ひたすら前転を繰り返す攻撃は隙を突きづらそうだ。また、本来不利となる2対1の対決も、雷の羊でまとめて倒して勝利している。効果音や編集も凝っており、ニセソニックがこころなしか本物に見えてくるから不思議だ。しかし、敵プレイヤーたちの心に残ったのは、青くて毛深い男に轢き殺されたトラウマだろう。この動画は記事執筆時点で8万再生以上を集めているほか、SNS上でも広く拡散され、雷の羊を世に知らしめた。
こうした映像からは、雷の羊の強さの理由も見えてくる。攻撃の絶え間なさのほか、発生時間の長さも優秀。盾でガードしようにも、雷ダメージはカットしきれず貫通しやすい。しかしとりわけ厄介なのが、敵をひるませる性能だろう。本作には「強靭度」なる概念がある。これは攻撃を受けた際の怯みモーションの発生に関わるステータスだ。基本的には重厚な防具を装備するほど強靭度は高まり、敵の攻撃を受けた際に怯みづらくなる。また、重い武器での攻撃中などにはこの強靭度が一時的に高まるなどの仕組みもあり、戦闘の駆け引きに関わるファクターのひとつだ。強靭度が低すぎる場合、軽めの武器の発生の早い攻撃などでもひるみが発生し、反撃に苦慮するケースもある。
そして、雷の羊は敵を怯ませる性能にもなかなか優れている。また、前述の動画における犠牲者たちは、強靭度が低めの装備をしている様子が見受けられる。つまり、犠牲者たちは雷の羊の性能により、怯み状態でほぼ固められたまま倒されてしまったと考えられるのだ。本作では特に序盤において、強靭度の高い装備はなかなか手に入りづらい。また、見慣れぬ前転攻撃の乱打にパニックになった可能性もあるだろう。ニセソニックの青さや毛深さもパニックを誘発したかもしれない。なお、雷の羊は敵NPC戦でも有効で、雑魚敵のほか、強靭度の低いボスにも有効な戦術になりうる。雷の羊は怯みやすいプレイヤーや敵にとって、かなり有効な戦技なのだ。
ニセソニック動画のほかにも、雷の羊で侵入者を撃退する動画などがSNS上で注目を集めており、一定の人気がうかがえる。また対人戦において雷の羊は、ニセソニックが注目を集める前から流行の気配があった。海外掲示板Redditでは、雷の羊利用者をよく見かけるとして「雷の羊にはどう対処したらいいんだ」と問うユーザー投稿も。こちらには「ジャンプで対処できる」とのアドバイスが投じられている。雷の羊は攻防一体の攻撃に見えるものの、実をいえば通常のローリングと違い無敵時間は発生していない。前述の強靭度を高めるか、ジャンプ攻撃や遠距離攻撃で仕留めるなどの対策が考えられるだろう。
なお、そもそも現実の羊は意図的に前転するのか調査したところ、そのような習性についての記述は筆者の観測範囲内では見つけられなかった。とはいえ、狭間の地の羊は前転をするのである。また、雷の羊はFPが切れてもずっと前転をし続けられる上、威力は大幅に低下するものの攻撃判定が発生する。対人戦用戦技としてだけでなく、無限でんぐり返しを楽しめるほんわか戦技としても、雷の羊を愛してあげてほしい。雷の羊は、アルター高原の祝福「城壁沿いの小道」南西のスカラベから入手可能だ。
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