米国の投資家ら3名は3月21日、ゲームにまつわる有毒(Toxic)な文化に対抗するプラットフォーム「GGWP」の立ち上げを発表した。AIを利用して、有害なチャットなどのモデレーションを提供する仕組みとなっている。海外メディアThe Hollywood Reporterが伝えている。
GGWPは、オンラインゲーム等に活用可能なモデレーションプラットフォームだ。プラットフォーム名は、対戦ゲームなどでしばしば用いられる「Good Game, Well Played(いい勝負だった、よくやった)」との言葉の頭文字から名付けられている。このプラットフォームの目的は、オンラインゲームなどの内部で発生する、ユーザーによる有害な言葉や行為によるトラブルに対処することだ。プレイヤー同士が接触する仕組み上、オンラインゲームにおける中傷・暴言や嫌がらせなどは後を絶たない。自動や手動によるモデレーション、あるいはその両方を併用している作品も多いものの、ゲーム開発・運営側にとってコミュニティの健全化は大きな悩みの種だ。
GGWPは、AIを利用したシステムにより、そうしたモデレーションの近代化を目指すという。同プラットフォームはゲームに統合可能となっており、トラブルの重大性を評価する通報マネージメントシステムも組み込まれている。同システムは、トラブルの背景や、過去のプレイヤーデータやプレイヤーの評判スコアおよび通報の信頼性などの情報も提供してくれるとのこと。ゲーム運営者は、こうした仕組みをカスタマイズ・利用し、より効率的にトラブルへの対応ができるようだ。つまり、通報の適切さやハラスメントのデータをAIがまとめ上げ、人間のモデレーターがより正確かつ素早く判断を下せるようにする仕組みだ。
なお、GGWPはすでに多額の資金も集めている。ゲーム関連のベンチャーキャピタル(新興企業向け投資会社)であるBitkraft Venturesを中心として、Sony Innovation Fundなどの投資ファンドからも資金を獲得。ゲーム企業では『League of Legends』などで知られるRiot Gamesが投資。ストリーマーのPokimane氏や、Twitch共同創業者のEmmett Shear氏とKevin Lin氏および、YouTube共同創業者のSteve Chen氏など錚々たる投資者が名を連ねている。調達した資金総額は、1200万米ドル(約14億円)にのぼるとのことだ。GGWPはオンラインゲームのみならず、Web上での有害な投稿に対抗する有力な手段ともなりうる。高い注目度が、資金調達にも反映されているようだ。
同プラットフォームは米国を拠点とする3名によって立ち上げられた。まず、CEO(最高経営責任者)を務めるのはDennis Fong氏だ。同氏はThreshとの名義で『Quake』および『DOOM』のプロプレイヤーとして活動もしていた人物。ゲーマー向けコミュニケーションツール「Xfire」などの起業にも携わっている。その経歴から、オンラインゲーム文化にも造詣が深いと見られる。
同社社長およびCOO(最高執行責任者)を務めるのはKun Gao氏で、日本アニメを中心としたメディア配信サービスCrunchyrollの共同設立者でもある。そして、CTO(最高技術責任者)を務めるのはGeorge Ng氏。AIを利用した、保険事業者向けリスク分析ソリューションを提供するCyence(現Guidewire Cyence)の共同創業者だ。また、元DARPA(アメリカ国防高等研究計画局)に所属していた技術者でもあり、データサイエンスのスペシャリストでもある。こうしたメンバーが、どのようにオンラインゲームにはびこる有毒性(Toxicity)と戦っていくのか、今後の活用例に注目したい。