マイクロソフトやEAが、ロシア国内での製品販売を停止すると表明。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて
マイクロソフトは3月4日、ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻を受けて、ロシア国内での同社製品の新規販売を停止すると発表した。また、米国・英国政府およびEUによる対ロシア制裁措置に従うかたちで、ロシア国内でのあらゆるビジネスを停止することも明らかにした。
同社は2月28日、ロシアによるウクライナ侵攻は不法かつ不当であり悲劇的であるとし、関係各国へのサイバー攻撃対策や、(ロシア国営メディアによる)情報操作対策、そしてウクライナ国民への人道支援や技術サポートなどをおこなうと表明。今回、さらに一段階踏み込んだ対応をおこなうこととなった。
ロシア市場においては、さまざまな企業が製品の販売を相次いで停止。たとえばAppleやナイキ、IKEAなどが挙げられ、またウォルト・ディズニーやソニー・ピクチャーズなどは新作映画の公開を中止している。マイクロソフトも、そうした動きに呼応したかたちだ。
今回の発表に先立っては、ウクライナの副首相Mykhailo Fedorov氏が、マイクロソフトやソニーをはじめとするゲーム関連企業に対し、ロシア(およびロシアを支持するベラルーシ)での活動を停止するよう要望していた。マイクロソフトがおこなうロシアでの製品販売停止にはXbox関連も含まれると考えられ、Fedorov氏の呼びかけに対応した側面もあるのかもしれない。
さらにEAも3月5日、ロシアとベラルーシでの同社製品の販売を停止すると発表。この紛争が終わるまでのあいだ、EAのゲームや関連コンテンツ、および仮想通貨は、両国では購入できなくなるという。同社が運営するPCゲームプラットフォームOriginだけでなく、パートナーのプラットフォームホルダーにも、該当地域での同社タイトルの削除や販売停止を申し入れているとのこと。
同社は先日、サッカーゲーム『FIFA』やアイスホッケーゲーム『NHL』シリーズ作品から、ロシアのクラブと代表チームを削除すると発表していた(関連記事)。これは、FIFAなどの競技団体による制裁措置に同調するかたちでおこなわれた。
EAは、深刻な状況が続くなか、同社として取り得る対応を継続的に評価し続けているとし、その結果さらなる措置をおこなう決断をしたそうだ。また、ゲームやその運営のほかの領域に関しても、今後評価していくと述べている。
ゲーム業界におけるロシアおよびベラルーシでの製品の販売停止については、CD PROJEKTグループも3月3日に表明していた。傘下のCD PROJEKT REDが手がけた『サイバーパンク2077』などのゲームだけでなく、PCゲーム販売プラットフォームGOG.comの両国での運営も停止するという。
さらに、『Layers of Fear』シリーズなどのサイコロジカルホラーゲームで知られるデベロッパーBloober Teamも、同じ日に両国での同スタジオ製品の販売を停止すると表明している。
ゲーム業界ではこれまで、ウクライナに寄付金を送るなど同国への支援活動が幅広くおこなわれており、上述したCD PROJEKTグループを含めさまざまな企業が寄付を表明している。そうしたなかで、ロシア・ベラルーシでの製品の販売停止という制裁的な動きにまで発展することとなった。
『Sherlock Holmes Chapter One』や『The Sinking City』などで知られる、ウクライナに拠点を置くデベロッパーFrogwaresのCEO Wael Amr氏は3月4日、海外メディアWccftechのインタビューに答え、先述したウクライナの副首相Mykhailo Fedorov氏による販売停止要請についてコメントしている。
それによるとAmr氏は、ロシアでの製品の販売停止措置を支持するとのこと。理由としては、ロシア国民の多くはウクライナで何が起こっているのかを知らないからだと述べる。同氏は、ロシア国内での報道には偏りがあるとし、彼らが昨日手にしていたものが突然失われれば、伝えられている情報に疑いをもつことに繋がるだろうとしている。
なお、Frogwaresのスタッフはウクライナ各地にとどまっており、ロシア軍の占領下にある街や爆撃が続く街にいる者もいるという。スタジオの施設は現時点では無事だが、家を破壊されたスタッフもいるとのこと。また、スタジオの国外移転については、最後の手段であるとも述べている。仕事のためだけに、90人以上のスタッフに故郷での生活や家族を捨てるように説得することは難しいとのこと。何より彼らの多くが、どんな犠牲もいとわず故郷を守る姿勢でいるそうだ。
*Frogwaresは、ウクライナでの近況をSNS上で毎日報告。3月3日には、Xbox One版『シャーロック・ホームズ -悪魔の娘-』の再リリースが、爆弾と戦車の脅威のもとでおこなわれる結果となり、心を痛めている旨を述べている。
なお、現時点では公式には発表されていないものの、全世界で3月4日に発売されたばかりのレースゲーム『グランツーリスモ7』が、ロシアのPlayStation Storeでは販売されていないと報告されている(Eurogamer)。ロシア版PlayStation公式Twitterアカウントでも同作の発売は案内されておらず、SIEもロシアでの製品の新規販売停止という厳しい対応に乗り出した可能性がありそうだ。
また、任天堂はロシア向け公式サポートページにて、同国向けニンテンドーeショップを一時的に“メンテナンスモード”として停止させたと案内している。ニンテンドーeショップが利用している決済サービスが、ロシア通貨ルーブルでの取引を停止したためとのこと。ロシアにおいては、欧米による金融制裁の一環として、国際銀行間通信協会(SWIFT)の決済網からロシアの一部銀行が排除されている。ニンテンドーeショップの停止は、こうした制裁の影響を受けた結果かもしれない。
【UPDATE 2022/03/05 12:43】
Activision Blizzardは3月5日、社長兼COOのDaniel Alegre氏が従業員に宛てたメッセージを公開。今回の紛争が継続しているあいだは、ロシア国内での製品の新規販売を停止することを明らかにした。同社は、傘下のActivisionやBlizzard Entertainmentを通じて、『Call of Duty』シリーズや『クラッシュ・バンディクー』シリーズ、『Diablo』シリーズ、『オーバーウォッチ』などを手がけている。
また同社は、今回の軍事侵攻の影響を受けている従業員へのサポートの提供や、従業員がおこなっているウクライナへの支援活動に会社として参加し30万ドル以上の寄付金を集めたこと、またウクライナからの難民を受け入れているポーランドへの支援を模索していることなどについても報告している。
【UPDATE2 2022/3/7 11:20】
Epic Gamesは3月6日、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ロシア国内での商取引を停止すると発表した。一方で、アクセスのブロックはおこなわないとのこと。
おそらく、ロシア国内ではEpic Gamesのゲーム・コンテンツの購入や、UEマーケットプレイスでの購入はできなくなるが、『フォートナイト』などのゲームをプレイしたり、Epic Games Launcherを通じてフレンドとやり取りしたりなどはできるということだろう。同社は、ほかのコミュニケーションツールがロシアにて引き続き提供されている事実を引き合いに、自由な世界ではあらゆる対話の手段をオープンにしておくべきだとコメントしている。