小島秀夫監督、『メタルギアソリッドV』のネットミームに苦笑する。突如大喜利ネタへと変貌を遂げた「9年間昏睡のお知らせ」

『メタルギアソリッドV ファントムペイン』の「9年間昏睡」ネットミームが、近頃国内Twitterにてにわかに流行を見せた。多くのユーザーによるリツイートや投稿がなされた結果、ついにミームはシリーズを手がけた小島秀夫監督のもとに届いたようだ。

メタルギアソリッドV ファントムペイン(以下、MGSV:TPP)』の「9年間昏睡」ネットミームが、近頃国内Twitterにてにわかに流行を見せた。多くのユーザーによるリツイートや投稿がなされた結果、ついにミームはシリーズを手がけた小島秀夫監督のもとに届いたようだ。

『MGSV:TPP』は、2015年に発売されたアクションゲームだ。ジャンルとしては、「タクティカル・エスピオナージ・オペレーション」と銘打たれている。本作にてプレイヤーは、主人公「ヴェノム・スネーク」となり、自由度の高い広いフィールドでさまざまなミッションを遂行していく。また、『メタルギアソリッド』シリーズはストーリー面での評価も高く、本作でも驚きに満ちた重厚な物語が展開される。

多くの見どころある本作のなかでも、とりわけ印象的なシーンのひとつが、キプロスの病院での「9年間にわたる昏睡」からの覚醒シーンだ。本編序章を開始するとまず、主人公は病床に寝そべった状態で身動きが取れない。一人称視点でぼんやりと虚空を眺めていると、そこに主治医がやってくるわけだ。主治医は穏やかに「どうか落ち着いて」と語りかけながら、状況を説明する。主人公が昏睡状態にあったこと、そして、序章となる作品『メタルギアソリッドV グラウンド・ゼロズ』から実に9年の月日が経っていることを。当然落ち着けるわけはなく、主人公はうめき声をあげ狂わんばかりに取り乱し、注射で鎮静させられてしまう。このシーンは本作が正式発表された際のトレイラーでも使われており、ファンたちも驚愕し記憶に残ったことだろう。


そんな覚醒シーンが、今年2月中旬より突如として国内Twitter上でミームとして目立ち始めたのだ。今回の流行の発端と見られるのは、白神天稀氏による2月16日のTwitter投稿だと見られる。同氏は、覚醒シーンの画像とともに、人気漫画「HUNTER × HUNTER」の連載が4年間再開していないとの悲報を伝えるミームを投稿した。同ツイートはまたたく間に反響を集め、記事執筆時点で4万件以上リツイートされている。


そして18日には、声真似を得意とする動画投稿者であるエニグマ伯爵氏が、ミームに声をつけた動画を投稿。主治医を演じる声優である大塚芳忠氏の声を見事に真似てみせ、さらなる話題を呼んだ。さらには、声優の中田譲治氏も自身のTwitterアカウント上でこの声真似を取り上げ、「大塚芳忠さんの特徴をよく捉えている」として賞賛した。


そうした経緯があり、現在多くのユーザーがTwitter上を中心に「9年間昏睡」ミームを投稿しているのだ。ユーザー間では主に「期待し待ち続けているものの、まだ起こっていない出来事」がネタにされているようだ。例としては、「ゲームや映像作品の新作が数年間出ていない」などのパターンが見られる。驚愕に身を捩るヴェノム・スネークの視点を借りて、見果てぬ夢を見る悲しみを笑いに昇華できる、使い勝手のよいミームなのだ。

大量の主治医による投稿は、『メタルギア』シリーズの立役者である小島秀夫氏の目にも入ったようだ。同氏は3月1日、最近よく覚醒シーンの映像が送られてくるとコメント。「何で?と思ったら、9年間昏睡がネットミームに」と言及している。『MGSV:TPP』は2015年発売、実に約7年前の作品である。突如として目覚めた昏睡ミームに、小島監督も驚いたことだろう。
【UPDATE 2022/3/1 15:30】
『MGSV:TPP』 発売年について修正

今になって昏睡ミームが流行を見せた理由のひとつには、長い時間を経てもファンの心に残る、シーンそのもののインパクトもあるだろう。『メタルギア』シリーズは、小島氏の独立などの経緯もあり、メインシリーズ続編の実現は難しい状態にある。再来年には『MGSV:TPP』が発売9周年を迎えるため、また主治医たちが9年昏睡のお知らせでファンの心を揺さぶるかもしれない。





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Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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