極貧生活苦シム『大多数』デモ版がSteamで大人気。悲惨な労働苦を一時は3万人が体験
デベロッパーのU.Ground Game Studioが手がける人生シム『大多数(Nobody – The Turnaround)』が、現在Steamにて多くのユーザーの注目を集めているようだ。ゲーム体験版の祭典Steam Nextフェスにあわせ公開された本作デモ版は、ピーク時で数万人がプレイする人気ぶりを見せている。
『大多数』は、現実世界のパラレルワールドを舞台とした人生シミュレーションゲームだ。本作においてプレイヤーは、社会の目立たぬ「多数派」のひとりとなり、苦境に立ち向かうことになる。主人公は出身も、学歴も、運も、なにひとつ恵まれたものをもたない、誰でもない人間。しかし、そんな主人公にも災いはやってくる。突然押し付けられた借金を一刻も早く完済するため、努力と信念だけを胸に、主人公は都会へと出稼ぎに出るのだ。
『大多数』が特色としているのが、社会の「リアルさ」だ。本作は、肉体労働や生産業などに従事する、いわゆるブルーカラー労働者の仕事や生活を、できるだけ忠実に再現しようと試みているとのこと。主人公には健康や感情などのステータスが設定されており、労働中のケガのほか「他人の給料を見て落ち込む」「野宿して風邪を引く」などのイベントで上下するのだ。ランダムに起きる予期せぬイベントを乗り越え、最善を尽くして厳しい社会を生き延びよう。
本作は日本時間2月22日のSteamにおけるデモ版配信から間もなく、多くのプレイヤーに遊ばれているようだ。SteamDBによれば、同デモ版は配信直後に8000人を超えるSteamピーク同時接続者数を獲得。その後更にプレイヤー数を伸ばし、記事執筆現在の最大ピーク同時接続者数は3万7248人を記録している。この人気の背景には、本作のややユニークなゲーム性があるのかもしれない。
筆者もデモ版に触れてみたところ、本作ならでは魅力が感じられた。同デモ版では、最初のシナリオとして「Debt Trap(借金地獄)」が開放されている。こちらのシナリオでは、父親がギャンブルで借金を作り蒸発。母は病に倒れ、可愛い妹は看病に集中せざるを得ない状態に。主人公である長男は、「1か月以内に全額返済し、毎日の金利も払わねば妹に危害を加える」と脅迫する借金取りから家族を守るため、ひとり都会へと出稼ぎに出るのだ。設定の時点から、かなりの重量がプレイヤーの双肩にのしかかる。
ゲームプレイは見下ろし視点となっており、キーボードではWASDで上下左右に移動、気になるポイントや会話の選択肢はクリックで選ぶ形式だ。筆者がまず主人公を移動させてみると、いきなり車に轢かれて死亡。否応なしに本作のリアルさの洗礼を受けてしまった。また、警告に気づかずうっかり女子トイレに入ると即逮捕され勾留。5日後に釈放された時には、妹が消息を経っておりまたリスタートとなった。やっと職にありついたものの、給料支払の際には、さらなる社会の理不尽が暴力となって主人公を襲う。ここまで畳み掛けられると、逆に元気が出てくるから不思議だ。
本作では、ほかにも「いっそ笑うしかない」ような真に迫った苦難が主人公に降りかかる。一方で、シミュレーションとしても丁寧に作られている印象だ。そうしたユニークさやゲームバランスが、多くのユーザーの興味を引いているのかもしれない。また、イベントの面白さは実況プレイなどにも向いていそうで、YouTubeやTwitchなどでは、デモ版の配信が視聴者を集めている様子も散見される。そちらもプレイヤー数の増加に寄与した可能性はあるだろう。
『大多数』は今年2022年内に、PC(Steam)向けにリリース予定。なお、現在公開中のデモ版は日本語表示およびゲームパッドでのプレイには対応していない。しかしSteamストアページによれば、製品版では日本語表示とゲームパッド操作いずれにも対応予定だ。
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