最近の大作ゲームは「超初期段階」で発表されがち。ヤキモキさせる発表の背後には、変わりゆくマーケティングと大人の事情説

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デベロッパーのCrytekは1月26日、FPS『Crysis』シリーズの新作を開発中であると発表した。『Crysis 4』という仮題も明らかにされており、ファンからの大きな反響を呼んでいる。

一方で同スタジオは、まだ開発初期段階であることにも言及し、ゲームに関する具体的な情報は一切を伏せている。発売までにどれくらいの時間がかかるのかは不明だが、AAAクラスのシリーズであるため数年単位で待つことになる可能性はあるだろう。こうした“早すぎる発表”は、近年のある種のトレンドに沿ったものといえそうだ。海外メディアAxiosなどが報じている。

今回の『Crysis 4(仮題)』の発表と同じ日には、Blizzard Entertainmentが新規ユニバースを採用するサバイバルゲームの開発を発表。また前日には、EAが「スター・ウォーズ」の新作ゲームを3本開発中であると発表している。傘下のRespawn Entertainmentが中心となって開発し、ひとつは『Star Wars ジェダイ:フォールン・オーダー』の続編、残る2本はFPSとストラテジーゲームになるという。

「スター・ウォーズ」の新作ゲームというと、ユービーアイソフトやQuantic Dreamからも昨年発表されていた。またユービーアイソフトは、ステルスアクションゲーム『スプリンターセル』シリーズ1作目のリメイク版や、傘下スタジオのコラボレーションにより制作される『Assassin’s Creed Infinity(コードネーム)』も発表している。さらにEAからは、スケボーゲーム『Skate』シリーズの新作開発が2020年に発表された。

これらの発表に共通するのは、いずれも開発初期段階にあるとして、ゲーム情報や正式タイトル、発売時期などの詳細をほとんど明かしていないことだ。発表のなかでスタッフの募集をおこなっていることも挙げられる。また、大作になりそうなタイトルばかりということもいえるだろう。


こうしたかたちの新作発表の背景について米経済紙BloombergのJason Schreier氏は、人材を確保することが難しくなってきた状況や、マーケティングの在り方が変わってきた可能性があるのではと指摘している。

人材確保に関しては、各社は常日頃から求人をおこなっている。ただ、未発表の新作のための求人であった場合には、文字どおり「未発表の新作」に携わると記載するか、何も言及しないことが多い。それよりも、「スター・ウォーズ」や『Crysis』『スプリンターセル』といった著名シリーズの新作開発に参加できるとあらかじめ告知した方が、開発者の興味を引きやすいという面はありそうだ。また開発自体が大規模化しているため、昔より多くの人材が求められている側面はあるだろう。

そう考えると、上に掲載した『Crysis 4(仮題)』のトレイラーの最後に表示される「Join the journey. Become the hero.」というメッセージは、ファンだけでなく、一緒に新作を手がけようと開発者に向けて呼びかけているとも受け取れる。


マーケティングについては、主にゲーマー向けの対応だろう。従来のマーケティングで思い出されるのは、Bethesda Softworksの『Fallout 4』だ。同作は2015年6月に発表され、同年11月に発売された。こうした大作では異例のスピード感であり、当時ファンを驚かせたと同時に歓迎もされた。

クリエイティブディレクターのTodd Howard氏は同作の発売後、発表によるファンの興奮が冷める前にローンチさせたことは成功だったとコメント。また、逆に発表を急ぎすぎると、その作品の売りとなるポイントを把握できず上手くアピールできない可能性もあるとして、完成が近づいた段階で発表する手法は今後広まっていくだろうと述べていた(PlayStationLifeStyle)。

ただ、Howard氏の最新作である『Starfield』や『The Elder Scrolls VI』では、一転して早い段階で発表された。いずれも2018年のE3にて発表され、『Starfield』については今年11月についに発売を迎えるが、『The Elder Scrolls VI』の発売時期は未定だ。最近では、インディーゲームにおいては発表と発売の間隔が違うケースは見られるが、大型タイトルではそうした例はあまり見られない。


『Crysis 4(仮題)』の発表に際してCrytekは、コミュニティとともにゲームを作り上げていく考えを示している。コミュニティからの意見を聞きながら開発を進めるために、開発初期の段階で新作の存在を公表したという。特に大型タイトルの開発費が肥大化している現代においては、失敗すると会社が傾きかねない。まずはコンセプトを見せて、情報を小出ししベータなどを展開しつつ、その反応を確かめる。ファンが求める作品へと仕上げるという意味では、合理的な判断といえるかもしれない。

言い換えると、『Fallout 4』のような手法はいまやリスクが高すぎるようにも映る。たとえば、『Fallout 76』も同作にならってスピードリリースされたが、ユーザーから低評価を受け、改善までに時間を要することとなった。

先述した『Starfield』については、長年開発を続け今年発売するにもかかわらず、実はゲームの情報はまだほとんど出ていない。発売前のしかるべき時期に一気に情報を公開し、ファンの興奮が最高潮となった状態でローンチさせるものと思われる。そうした意味ではHoward氏の姿勢はぶれていないともいえ、情報の出し方を上手く工夫することで、発表時期は柔軟に設定できるという先例となるかもしれない。

開発者の耳目を集めるという側面でいうと、開発初期段階で発表するという手法は、それだけ注目されるコンテンツでないと効果的ではないだろう。そのため、そう広く利用される手法にはならないかもしれないが、ファンの忍耐が試される新作発表はこれからもみられそうだ。

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