『Stardew Valley』のスピードランが狂気。開幕から農場爆破、そして他人の店で自爆

海外スピードランイベント「Awesome Games Done Quick 2022(AGDQ)」にて、『Stardew Valley』の過激なスピードランの様子が放映された。『Stardew Valley』にあるまじき爆破事件が発生している。

海外スピードランイベント「Awesome Games Done Quick 2022(AGDQ)」にて、『Stardew Valley』の過激なスピードランの様子が放映された。爆破から始まるこのプレイは、通常プレイの範疇を破る見どころ多き内容となっている。
 

 
『Stardew Valley』は、牧場経営シミュレーションゲームだ。同作は2016年2月にPC版がリリースされ、後にPS4/Xbox One/Nintendo Switch/モバイル向けにも展開。昨年には売上1500万本を突破するなど、高い人気を誇っている(関連記事)。本作の大きな魅力が、田舎で送るスローライフだ。都会での会社員生活に疲れ果てた主人公は、亡き祖父から受け継いだ田舎の農場を再建することになる。田畑を耕し、動物を育て、地元の町ペリカンタウンの人々との温かい交流や冒険にも繰り出しつつ、充実した生活を送るのだ。ゆったりとスローライフするのも、厳密なスケジュールで牧場を急成長させるのもプレイヤーの好みに任されている。いずれにせよ、やりこみ要素も多くじっくり遊べる作品だ。

そんな本作のメイン目標のひとつが、「ペリカンタウン公民館の復旧」だ。公民館はかつて町の人々の憩いの場だったものの、本作開始時点では荒廃しきっている。プレイヤーは魚や作物など、復旧に必要なアイテムおよび資金を「ジュニモ」と呼ばれる精霊に捧げ、少しずつ街のシンボル公民館の本来の姿を取り戻していくのだ。本作はゲームクリア時間データベースHowLongToBeatにおいては、メインストーリー攻略に平均して52時間半かかるとされている。これが公民館の復旧を指すかどうかはユーザーによるものの、少なくとも通常プレイにおいて一朝一夕には終わらない目標なのだ。
 

 
しかし、スピードラン(RTA)走者の手にかかれば、公民館は20分足らずで復旧されてしまう。先ごろ開催された海外RTAイベント「AGDQ」にて、スローライフを吹き飛ばす爆速公民館復旧が披露された。走者はアメリカを拠点とするスピードランナーOlenoname氏で、カテゴリーはバグをフル活用する「Glitches」。実に17分13秒というタイムで公民館を復旧させており、プレイ内容についても初手から理解しがたい過激な内容となっている。
 

 
Olenoname氏のプレイの様子を見ると、まずゲーム開始前に設定するプレイヤー名などからしておかしい。「[288][0288][00288]」「}ccDoorUnlock}」など、数字や文字列がみっちり並んで名前の入力欄からはみ出しているのである。この不気味な名前が、今回のスピードランの鍵だ。こうした数字や文字列は、ゲーム内のアイテムIDおよびフラグ状態などを制御するコードなのである。NPCキャラなどが会話でこの“名前”を呼ぶごとに、IDに対応するアイテムが手に入り、コードに対応して内部の状態が変化する。たとえば、「[288]、こんにちは!」と呼ばれるごとに、対応するアイテムである大火力爆弾「メガボム」が手に入るのだ。同氏はさらに本作の言語設定を中国語にして入力可能文字数を増加。複数行にわたって異常命名することで本作スピードランのタネを仕込んでいる。
 

Image Credit: Olenoname/GDQ

 
そうした手口(?)により、ゲーム開始直後から大量のメガボムを手に入れた同氏。何をするかと思えば、祖父から譲り受けた大切な農場を躊躇なく大爆破。その片手間に、本来であれば持ち物に入らないはずのアイテム「スタードロップ」を納品して莫大な売上を一瞬で手にしている。必要なスペースと資金を同時に確保する荒業である。ペリカンタウンに警察署があったなら、即座に通報されたことだろう。また、移動速度をアップさせるためひっきりなしに「コーヒー」と「揚げトウガラシ」を食べており、胃に悪そうだ。

ひとしきり爆破を済ませた同氏は、爆弾で自爆しつつ手早く肥料と農作物を植えていく。クリアには上質なクオリティの作物が必要となり、それらは前述のバグでは手に入らないためだ。爆弾でボロボロになった同氏は、建築などを手がけてくれる大工のロビンのもとへ向かう。そして、金に物を言わせて小屋の建築を依頼した直後、いきなり爆弾で自爆。体力をゼロにして「デスワープ」を実行するためである。スピードランとしては理にかなっているものの、相当クレイジーな行動だ。ペリカンタウンの治安は大丈夫だろうか。
 

Image Credit: Olenoname/GDQ

 
そして、スピードランは早速佳境を迎える。主人公がベッドで眠ると翌日には、村人のマーニーがペットとなる猫を連れてきてくれた。しかしOlenoname氏は無情にも、複数行にもわたる、ある種冒涜的な名前を即座に入力。スピードランのためには猫の名前さえ犠牲にするのである。めでたくクリアに必要なアイテムを手に入れた同氏は、公民館に向かいジュニモに供物を捧げていく。ここからも、カットシーン中に移動できるバグなどを駆使し、画面外で移動するなどのテクニックを見せた。また、同氏は途中で数羽のニワトリも購入して、アイテムID満載の命名をしている。そして、うっかりニワトリに猫用の名前を入力してしまう一幕もあった。何らかのバチが当たったのかもしれない。

そして、あらゆる手段を駆使し公民館が復旧したのはスピードラン開始から17分13秒のこと。トラブルもありつつ、強引ながら見ごたえのあるプレイであった。ちなみにOlenoname氏の記録としては、スピードラン記録集計サイトSpeedrun.comにて同カテゴリ15分41秒を刻んでいる。なお、1位は日本のスピードラン走者Su(cstrakm)氏で、13分44秒となっている。また同氏は、AGDQ 2022の日本語ミラー配信チャンネル「JapaneseRestream」にて、Olenoname氏のプレイの解説も担当していた。Su氏は今回のAGDQ 2022での本作プレイにまつわる解説資料も公開している。興味がある方は是非参照されたい。
 

 
今回のAGDQ 2022では、『Stardew Valley』の常識を覆すプレイが見られた。スローライフや効率プレイとはまた違った楽しみ方といえるだろう。なお、今回のストリームではOlenoname氏がチャリティーを促す一幕もあった。同イベントは1月16日、がん対策基金「Prevent Cancer」に向け、約341万ドル(約3億9200万円)の寄付がイベントを通じてなされたと発表している。今後もこうしたチャリティーを交えつつ、エンターテイメントとしてのスピードランは盛り上がっていきそうだ。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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