Steamで早期アクセス配信中の戦争MMO『Foxhole』にて、物流を担う一部プレイヤーが“組合”を結成しストライキを実行しているようだ。本作で物流は重要要素であり、銃や物資の補給なしでは前線は成り立たない。そんな大役を担うプレイヤーたちの戦場放棄の背景には、本作の物流システムに対する不満があったようだ。
『Foxhole』は、大規模戦争オンラインゲームだ。本作はゲーム画面を一見すると、シンプルな見下ろし視点シューターに思える。しかし、本作はプレイヤーたちが織りなす、大規模かつ複雑な戦争システムを盛り込んでいるのだ。最大の特徴は、広大な戦場と決着まで長期にわたるマッチだろう。本作のメインモード「World Conquest」では、地域ごとに分割されたマップ上で多数プレイヤーが常に戦闘を繰り広げている。開戦してから終結までに1週間以上かかることはざらであり、約37日にわたり激しい戦いが繰り広げられた例もある。
また、戦闘のみならず補給や建設なども大切な要素だ。何しろ、本作では弾や武器がどこからか湧いて出たりはしない。では、物資はどこから来るのか。プレイヤーたちが資源を収集し、工場で装備を生産し、そしてトラックで前線まで運ぶのだ。そのため、物流（Logistics）を担うプレイヤーがいなければ、最前線は素手での殴り合いになってしまう。また、死亡した兵士が再出撃する際にもアイテムが必要になるなど、物流はゲームシステムの根幹にもかかわる。まるで戦場という体に流れる血液の如く、物流を担う補給兵たちは戦いに欠かせないのだ。そして現在、そうした重要な物流をメインにプレイする兵士たち多数が団結。補給を放棄しストライキに入っている。
なぜ補給兵たちは任務を放棄してしまったのか。その原因は、本作における物流システムに対する不満がだったようだ。不満をもつ補給兵たちが昨年11月前後にかけて結成したのが、「Logistics Organisation for General Improvement（L.O.G.I.）」なる組織だ。日本語に訳せば、「広範な改善を求める物流プレイヤー組織」となるだろうか。同組織の発表によれば、現在賛同するプレイヤー数は約1800名に及ぶという。
L.O.G.I.は、昨年の現地時間12月9日に本作開発元Siege Campに対して公開状を突きつけている。同組織は、ゲームの物流システムにまつわる11個の具体的な問題点を指摘した。内容としては、物資引き出しにかかる時間が長すぎるなど、ユーザー体験やバランス調整面でストレスを感じる部分が挙げられている。そしてL.O.G.Iは、物流システム関係の問題を改善する可能性があるかどうか、今年1月10日までに返答するよう開発元に求めた。また、同組織の目標はあくまでもゲームプレイ体験の改善、および開発元とコミュニティとの健全な対話の促進であると表明。ゲームの面白さを損ねたり、ゲームバランスを崩壊させるのは本位ではないとのこと。
L.O.G.Iが返答期限として定めた1月10日を過ぎても、Siege Campからの返答はなかったようだ。しかし一方で同開発元は、昨年12月8日公開の開発者ブログにて「2022年は物流システムの改善に高い優先度を置く」と発表している。つまり、L.O.G.Iの公開状送付とほぼ同時に、物流を改善する方針を表明していたのだ。こうした背景もあり、海外掲示板Redditの本作コミュニティ/r/foxholegameでは、L.O.G.I.の物流改善を求める活動に疑問を唱える声も散見される。
気になるのは、補給兵たちのストライキにより、『Foxhole』における戦場が影響を受けているのかどうかだ。L.O.G.I.の賛同者が1800人である一方で、本作のSteamにおける日間ピークプレイヤー数は2000～2500人ほど。事実、L.O.G.I.の活動が本格化した昨年12月初頭には、日間ピークプレイヤー数が1500人ほどまで落ち込むなどの傾向は見られた（SteamDB）。しかし、現在ではプレイヤー数も戻ってきており、ストライキの影響があるかないか判断しかねる状況だ。
筆者が本作のShard1（第1サーバー）に実際に入ってみたところ、物流を担当しているプレイヤーたちも見られた。また、最前線の物資も「極端に滞って阿鼻叫喚」とまではいえない状況に見受けられた。しかし、物流用のチャットチャンネルでは、新兵とみられるプレイヤーとベテラン補給兵の間で物流の質疑応答が多く交わされていた。ストライキの影響により、慣れない補給に回ったプレイヤーもいるのかもしれない。
L.O.G.I.は開発元から直接の返答を求め、開発元は沈黙を守っている状況だ。平行線をたどる両者が落とし所を見つけ、補給兵たちが戦場に戻ってくる時は来るだろうか。『Foxhole』では、現在もトラックが物資を運び、戦争が粛々と続いている。
