まったりアドベンチャー『Chicory』のスピードランに、公式がビビる。「ちょっとまって速い」と怯える子犬がごとく

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アドベンチャーゲーム『Chicory: A Colorful Tale』公式Twitterアカウントが1月11日、スピードラン(RTA)にリアクションしユーザーの笑いを誘っている。海外スピードランイベントにて同作が取り上げられ、公式によるリアルタイム実況が敢行されたのだ。その背景について、開発側スタッフたちが海外メディアGamesRadar+に語っている。


『Chicory: A Colorful Tale』は、塗り絵の世界を舞台とした見下ろし視点アドベンチャーゲーム。物語の発端は、スーパーアーティストであるChicory(チコリー)の失踪だ。彼女が行方不明になると共に、国中の色も失われてしまった。プレイヤーはチコリーの大ファンである子犬となり、絵筆の力をもって彼女の代わりを務めながら世界を探検していくのだ。マウスを利用して画面を実際に塗りつぶしていくゲームプレイが特徴。また、さまざまな動物キャラクターたちとの交流や物語も魅力だ。

本作は、公式にゲームクリアまで10時間以上のプレイタイムを掲げている。また、ゲームクリアタイム集計サイトHowLongToBeatでは、メインストーリーのみを楽しめば8時間半、サイドクエストなども含めれば12時間半でのクリアが目安とされている。普通に遊べば10時間前後はかかる作品ということだ。しかしながら、本作は先ごろわずか33分でクリアされてしまった。海外スピードランイベントAwesome Games Done Quick(AGDQ)での出来事だ。以下にその様子を収めた動画を紹介する。当然ながらネタバレが含まれるため留意されたい。

『Chicory: A Colorful Tale』を33分でクリアしたのは、海外スピードラン走者のPunchy氏。同氏は1月11日AGDQに出走し、今回の記録を見せた。同イベントのTwitchチャンネルには10万人以上の視聴者が集い、同氏の走りを見守っていたわけだ。そして、視聴者のなかには本作の生みの親たちもいたようだ。Punchy氏が走り出すや否や、『Chicory: A Colorful Tale』公式Twitterアカウントがコミカルな七転八倒のツイートを繰り広げ始めたのだ。


最初は「テレビにでるよ」と嬉しげなツイートが公式Twitterアカウントから投稿された。まるで主人公の子犬が発言しているような微笑ましいツイートだ。しかしわずか1分後には「ちょっとまって速い」と動揺をあらわにし、「このゲームには会話もあるんだよ」と漏らしている。その後もPunchy氏による破壊的な速度のプレイにつぶさに反応し、「ちゃんとストーリーがあるんだよ」「このボスもほんとは感動的なんだ」とフォローするように述べている。ゲームがある意味めちゃくちゃにされる光景がかなりショックだったのか、視聴者に心配された際には「くるまを止めて、おろして」と助けを求めている。また、Punchy氏に直接リプライを送り「あなた怖いところしか遊んでないけど、ゆっくり家具を置いたりできるのは知ってる?」と念押しの質問も投じていた。


困惑する子犬のような様子には、ユーザーから「笑ってしまった」などの声が寄せられている。また、今回の一連のツイートは、Punchy氏ならびにスピードラン文化を批判するものではない。むしろ、一緒にイベントを楽しむ意図があったようだ。後に「今回の記録とスピードラン文化全体についてどう思う?」と聞かれた本作公式Twitterアカウントは、一連のツイートはジョークだったと改めて明言。スピードラン走者や文化を愛していると伝え、AGDQがその収益から寄付金をあげている点を称賛している。


そして、公式Twitterアカウントの“中の人”からも今回のツイートの裏側が語られている。本作のパブリッシャーであるFinjiのコミュニティマネージャー、Harris Foster氏だ。同氏はGamesRadar+によるインタビューのなかで、「『Chicory: A Colorful Tale』のスピードランをちゃんと見るのが今回が初めてだった」と語っている。また、今回の一連のツイートについては誇張なしの本気のリアクションだったとのこと。Punchy氏が何かするたびにツッコミを入れたかったものの、フォロワーのタイムラインへの影響を考えてかなりツイートを控えたそうだ。またFoster氏は、「破壊的なプレイ方法を見た時の衝撃」から「スピードランはユーザーによる作品愛の賜物である」との視座までを考慮に入れてツイートしたと伝えている。

本作のディレクターであるGreg Lobanov氏も、同誌にコメントを寄せた。Lobanov氏は、「スピードラン走者がバグを探し出し利用する様子は、不安を誘う」と正直な気持ちを吐露。しかし一方で、ゲームがどんどん“解体”される様子を見ると、暖かく幸せな気持ちにもなると述べている。そして、スピードランにはゲームへの深い理解とプレイ時間が必要であるとコメント。それは作品に対する高い賛辞でもあるとの見解を述べて、おおむね好意的な姿勢を示している。


今回に限らず、開発者がスピードランに反応する例はしばしば散見される。昨年開催された国内スピードランイベント「RTA in Japan Summer 2021」では、『ポケットモンスター ソード・シールド』ディレクターの大森滋氏が同作のスピードランの様子を楽しんだとTwitter上でコメントした。また、『アトリエ』シリーズのディレクターなどを務める吉池真一氏も、『ソフィーのアトリエ 〜不思議な本の錬金術士〜』スピードランの様子を見て、驚きを口にしている。


開発者のスピードランへの反応がコンテンツ化される例もある。海外メディアIGNによる「Devs React to Speedruns」では、人気作品のスピードラン動画を開発陣自らが視聴。走者による仕様やバグを利用した技術への驚愕の様子や、バグが残っていたと苦笑いする一幕などが見られ、人気を集めている。タイトルとしては、『The Outer Worlds』や『Doom Eternal』などのほか、今回の『Chicory: A Colorful Tale』も取り上げられている。Lobanov氏はこちらで先にスピードランを目撃していたため、ショックにはやや免疫がついていたかもしれない。

Lobanov氏が語ったように、スピードランでゲームがめちゃくちゃになる様子は、開発側にとっては肝の冷えるような思いがする一面もあるだろう。開発者が必ずしもスピードランに好意的とは限らない。しかし、今回の『Chicory: A Colorful Tale』スピードラン実況の背景にあったのは、開発側のスピードランへの好意的な姿勢だった。また、スピードランというエクストリームな遊び方の背景には、各走者の作品への強い愛着もあるだろう。今回のように、開発者による反応が楽しまれるケースも増えた。スピードランやRTAは、コミュニティと開発者をつなげる新たなコミュニケーションツールにもなりつつある

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