“PCゲーム低画質化”YouTuberが、方針転換を発表。低スペックゲーマーに冬の時代到来

 
LowSpecGamer on YouTube

YouTubeチャンネルLowSpecGamerは昨年12月28日、コンテンツの方針転換を表明する動画を投稿した。同チャンネルは、ゲームを低画質化する動画で人気を博している。しかし、今後は同種のコンテンツの投稿は控えるとのこと。その背景には、ゲームおよびハードの環境変化があった。

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LowSpecGamerは、ゲームの設定を切り詰めて、ロースペックPCで動作させる動画で人気を博すYouTubeチャンネルだ。同チャンネルを運営するのは、スペインのバルセロナを拠点とするAlex氏。同氏は、2015年から現在に至るまで『Half-Life 2』『グランド・セフト・オートV』『サイバーパンク2077』など多数の作品を、極限まで画質を落としてロースペック環境で動作させている。大作ゲームが衝撃的なほどの低画質で動くのは面白く、また低スペック環境を利用せざるを得ないユーザーにとっては実用的な最適化方法を提供していた。

実をいえば、弊誌はかつてAlex氏にインタビューを実施している。同氏は、高スペックPCを手に入れるのが困難な環境の出身。自身のようなロースペックPCユーザーを助けたいとの思いもこめて、向上するゲーム画質に抗うように活動を続けていた(関連記事)。そんなAlex氏が今回公開したのは、「今後はロースペック動画ではなく、ハードウェアの裏側などについての動画を中心にする」との声明動画だった。


Alex氏が方針転換を決定した背景には、近年のゲーム作品およびハードウェア環境の変化と、新しい情熱の発見があったようだ。まず同氏は、LowSpecGamerの運営哲学として、ロースペックな機器の可能性を示し、またゲームがどれだけ低画質で動くかの柔軟性を示す目的があったとしている。しかし、ゲームの低画質化のハードルは近年高まる一方だったそうだ。同氏によれば、「最近のゲームは設定ファイルから変更できるような項目が減っており、低画質化にも多大な手間がかかる」とのこと。

また、同氏は近年のハードウェア部品不足と価格高騰についても触れている。同氏いわく、近頃では多くのメーカーが、低価格層のハードウェアをリリースしなくなっているとのこと。そのため、同氏が興味をもてるような低スペック端末も登場しなくなってしまったようだ。興味をもって取り組んでいた携帯型PC分野についても、Steam Deckの登場によって状況が変わった。同氏はSteam Deckと価格・性能的に張り合えるゲーム向け携帯型PCが存在しないと指摘している。つまり、十分なスペックをもつSteam Deckが低価格で手に入る状況では、「ロースペック携帯型PC最適化」というコンテンツ自体が成り立たないとの見解だろう。同氏は、「どんどん急になる上り坂で岩を押し上げるようだ」と、現在の方針の辛さを表現している。

しかし、幸いにもAlex氏は新しい楽しみを発見したようだ。というのも、同氏はここ最近にかけて、任天堂の歴史やゲームボーイの背景を追う動画などを投稿しているのだ。また、親指サイズのゲームボーイ型ゲーム機「Thumby」向けにゲームを制作するなど、開発側にも取り組んでいる。同氏はこうした動画を通じて「ハードウェア構造の背景への理解に魅力を見出した」と述べている。また、アーティストを雇ったり、深いリサーチを経ての動画作成が非常に楽しかったとのこと。Alex氏は「失ったと思っていた情熱に、再び火を点けてくれた」と述べ、今後は同種のコンテンツ制作に邁進していくと伝えた。


前述のAlex氏の一連の動画を確認したところ、綿密なリサーチがなされた上でよくまとまっているとの印象を受けた。同氏は、ファンがロースペック動画を求めているのは知りつつも、再出発してでも新しい情熱を追い求めたいそうだ。また、新しい方針の動画を見てつまらないと思ったなら、是非正直に教えてほしいとも述べている。同氏は視聴者がいるからこそ活動できると感謝の気持ちを述べ、新しい動画に取り掛かると伝えて発表を締めくくった。

Alex氏のロースペック動画が見られなくなるのは残念なものの、環境の変化によってもたらされた困難は致し方ない。方針は変われど、今後も同氏の動画に期待したい。


貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。