プロゲーマーJustin Wong氏、また“ダイゴ”される。年始早々レッツゴージャスティン、背水の逆転劇ふたたび


プロゲーマーのJustin Wong氏は1月4日、自身のTwitterアカウントにて「逆転負け」を喫する動画を投稿した。Twitchでの配信の一幕を抜粋した同動画は、瞬く間にコミュニティの反響と笑いを誘っている。その背景には、2004年に遡る格闘ゲーム史に残る出来事があった。
 

Image Credit: Justin Wong on Twitch

 
Justin Wong氏は、アメリカを拠点とするプロの格闘ゲーム選手。同氏は『MARVEL VS. CAPCOM』および『ストリートファイター』シリーズなどの大会で卓越した成績を残し、最強プレイヤーの一角として知られている。20年以上の長きにわたり、米国格闘ゲーム界の最前線を走り続ける伝説的なプレイヤーのひとりだ。

同氏が今回投稿したのは、『ストリートファイターIII 3rd STRIKE -Fight for the Future-』をプレイ中の一幕。春麗を操作する同氏が、連続攻撃のスーパーアーツ(いわゆる必殺技)である鳳翼扇を放っている。対戦相手のケンは体力も残りわずかで、勝利まであと一歩。しかし華麗な足技は、虚しくも対戦相手のケンによってすべてブロックされてしまった。しかも、すかさず放たれたケンの反撃により、Wong氏は返り討ちに遭いラウンドを落とすこととなった。

【UPDATE 2021/01/04 19:20】
作品タイトルを『ストリートファイターIII 2nd IMPACT -GIANT ATTACK-』としていた箇所を、『ストリートファイターIII 3rd STRIKE -Fight for the Future-』に修正。

実をいえば、この光景はかつて起きたある事件の再現となっている。既視感を覚える方も少なくないのではないだろうか。他ならぬWong氏自身も、「こいつダイゴしてる!ダイゴしてる!!」と絶叫している。また、ツイートには「2022年も始まったばかりなのに、なんでだよ」とトラウマをえぐられたかのようなコメントが添えられている。同ツイートには多数の反響が寄せられ、記事執筆現在で8000リツイートを超えている。このツイートが反響を呼んだ理由、そしてWong氏が「ダイゴ」と叫んだ理由については、追って説明する。
 

 
まず、「ダイゴ」とは誰なのか。Wong氏と並び立つ、伝説的な日本のプロ格闘ゲーム選手である梅原大吾氏のことだ。Wong氏と梅原氏は、格闘ゲーム史に語り継がれる出来事、通称「背水の逆転劇」の当事者だ。背水の逆転劇は、2004年に開催された世界規模の格闘ゲーム大会「EVO 2004」で起きた。当時からトッププレイヤーであった両氏は、『ストリートファイターIII 3rd STRIKE』部門準決勝にて激突。Wong氏は春麗を、梅原氏はケンを選択していた。

奇跡の瞬間は、梅原氏のケンが体力ほぼゼロにまで追い込まれる難局で起きた。Wong氏は絶体絶命の梅原氏に対して、スーパーアーツ鳳翼扇を放つ。通常のガードでは、そのまま体力を削られ敗北してしまう。しかし梅原氏には、敵の攻撃をノーダメージでやり過ごせる「ブロッキング」が残されていた。ブロッキングはダメージを無効化できる反面、敵の攻撃に応じた極めて緻密なレバー入力が求められる。観客による「レッツゴージャスティーン!!」の声援とともに迫る春麗の無慈悲な脚。しかし、梅原氏は神がかりのように連撃をことごとくいなし、そのままWong氏を返り討ちにした。会場は熱狂の渦につつまれ、この出来事をおさめた動画はWeb上にも広まった。国内では「レッツゴージャスティン」や「背水の逆転劇」として、国外でも「Daigo Parry」などとしてミーム化し、普段格闘ゲームをしない層にも知れ渡るほどの話題となった。
 

 
Wong氏は今回の動画で、技を放つ直前に「おまえはダイゴじゃないだろ?」と不安そうに口にしている。背水の逆転劇と同じキャラかつ、ほぼ似通った状況に、同氏もなにか嫌な予感を覚えたのだろう。視聴者も気を利かせて「LET’S GO JUSTIN!」とのコメントを寄せている。そして、ある意味期待通りに、歴史的瞬間が再現されてしまったわけだ。Wong氏はブロッキングが重なるごとにヒステリックに笑い、やられた後には「ヤラセじゃないよ!こいつ俺をダイゴしやがった!(Daigo’d me)」と満更でもないように語っている。なおWong氏は2014年11月に、梅原氏本人と逆転劇の再現をおこなっている。Wong氏がほかに“ダイゴされた”ことがなければ、約7年ぶり3回目のダイゴされ体験となる。

年始早々、ダイゴされる災難に遭ったWong氏。しかし、同じキャラと同じ状況で、必要なプレイヤースキルを備えた相手と出会うのはかなり稀な出来事である。幸運の兆しと捉えて、本年も活躍してほしい。




※ The English version of this article is available here