デベロッパーのGSC Game Worldは12月17日、開発中のサバイバル・ホラーFPS『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chernobyl』にまつわるNFT関連サービス提供を中止すると発表した。NFTアイテムの提供予定は今月15日に発表されたばかりであり、わずか1日で中止が決断されたかたちだ。
『S.T.A.L.K.E.R. 2』は、サバイバル・ホラーFPS『S.T.A.L.K.E.R.』シリーズの最新作。舞台となるのは、超常現象や怪物はびこる危険区域と化したチェルノブイリおよび周辺地帯だ。プレイヤーは、謎やアーティファクト追い求めて複数勢力の争いの渦中に身を投じていく。本作はロシアのストルガツキー兄弟によるSF小説「路傍のピクニック」をオマージュしており、現実的な荒廃とSF的な設定が混じる世界観も魅力のひとつ。また、NPCとの会話や取引など、危険区域で生きる人々との関わり合いも本作の特徴だ。
GSC Game Worldは15日、そうしたNPCになれる権利をNFTとして販売すると発表。「S.T.A.L.K.E.R. Metaverse」の名のもとに、NFTプラットフォームDMarketと提携して提供予定だった。しかし、公式Twitterアカウントによる発表ツイートには、コミュニティによる批判が殺到。同スタジオは事情説明に追われることとなった(関連記事)。
「S.T.A.L.K.E.R. Metaverse」が批判を招いた理由には、NFTに対するゲーマーコミュニティの懸念がある。NFT(Non-Fungible Token・非代替性トークン)とは、ブロックチェーン技術を用いてデジタルデータに所有権の証明を発行する技術のこと。可能性ある技術ではあるものの、懸念点も取り沙汰されている。まず、ブロックチェーンの維持・管理にかかる電力消費が、高い環境負荷に繋がっているとの指摘がある。またその投機的側面から、NFTを利用した詐欺的行為が発生するケースも見られる。NFTゲームにおける他ゲームからのアセット盗用などの例もあり、NFTに悪印象を持つユーザーも少なくないのだ。そうした背景もあり、期待の新作にNFTが関わるとの発表に、多くのファンが難色を示したのだろう。
そして、本作公式Twitterアカウントは本日17日、NFTに関連するすべての計画を中止すると発表した。コミュニティからのフィードバックに基づいての決断とのことだ。また、本作開発チームは、どんなコストを払おうともプレイヤーが楽しめるゲームを作ると強調。「ファンやプレイヤーの関心が最も大切」であるとの姿勢をコミュニティに伝えた。
なお、同公式Twitterアカウントは上述の声明の直前、実は別の声明を投稿していた。そちらのツイートでは、NFT販売はゲームにほぼ影響しないと強調しつつ、DMarket上でのNFTコレクションカード販売などの展開にも触れていた。詳細にNFT導入の経緯を説明し、ファンに理解を求めていたのである。しかし、同ツイートには投稿直後から多数の批判の声が寄せられ、間もなく削除。一転して今回の中止発表となったわけだ。
NFT自体は、ビジネス面で可能性のある技術だ。しかしながら、環境負荷への懸念や悪質な利用者の存在から、そして企業側のビジネス面のメリットにより導入されると考えられている影響で、NFTへのイメージは悪化傾向にある。NFTが数ある課題を克服し、ゲームコミュニティに受け入れられる日は来るのだろうか。
『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chernobyl』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)/Xbox Series X|S向けに、2022年4月28日発売予定だ。Xbox Game Pass向けにも提供される。